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第9回「そいつ」12月❶

週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。

ルール

  1. 毎週1回「遊星からの物体X」をみる

  2. 毎週1回みて、気づいたことを書く

  3. 木曜または金曜の通勤時間で見る

  4. ネタバレとかは気にせず書く


基本は通勤中。ほぼほぼ電車内での視聴となる。デバイスはiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
画面は小さく、音質も良好とは言えない。
製作陣が期待する映画館という環境からも程遠い。この点については留意。
あくまで「通勤中のiPhoneでの体験」という狭苦しい体験ということは気をつけないといけないかもしれない。

第9回目 12/1自宅

前回からの道のり

(前回の記録からわたし自身の変化)

11/27〜28
勉強のリズムを取り戻しつつある。この調子で行きたい

11/29
たけしの「首」を観る。最新作のネタバレはしたくないので感想は書かない。

11/30
焦って勉強

12/1
勉強。フィルムの保管方法についてで、デジタル化する課題「デジタルジレンマ」など面白い話。
デジタル変換して保管した時のほうが、アナログ保管に比べて、費用が嵩張るという問題。フィルムなら温湿度の管理だけで済むが、デジタルデータはHDDを買い温湿度を管理し、定期的に通電しないといけない(通電しないとデータが消える)。設置したサーバにしてもクラウドにしても値段は嵩張りどんどん膨れ上がっていく。
またデジタルデータは、規格がコロコロと変わるので、そのたび変換しないといけない。(フィルムは基本的にフォーマットが不変)
昨今は万物DXの潮流だけど、果たしてそのデジタルデータをいつまでどう保管するかなんて、ほとんど知らん顔して過ごしてた。

もう一つの話は、やはりデジタルはアナログ程の情報を持ちきれないという話。
特に面白かったのは、ノイズの自動除去というデジタルでの恩恵が、落とし穴になったという話。
戦前のフィルムを見ていたら、一コマだけ検閲済みという文字が入っており、このフィルムが検閲されていたことが分かった。
もしもノイズ除去したデジタルなら、フィルムの検閲済みという文字は除去され映らなかったはずだ。
解像度などの至らない点だけでなく、デジタルの強みである自動補正がむしろ複雑な情報を損失させているというのは、難しい課題、そして面白い。

勉強も満足したとこで、自宅で遊星からの物体Xを見ることに。

自宅での視聴環境

今回は自宅のブルーレイで。
ブルーレイは2種類所有していて、
2018年発売のブルーレイ
2021年に出た4KUHD。(ただし、同封ブルーレイで視聴)
①②それぞれに良い点がある。

①のブルーレイは画質・音は劣るか、世界共通版なので、各国の吹替、字幕が収録。
なので前回のドイツ語鑑賞は①

画質は圧倒的に②の新ブルーレイが良い。4KUHDで見れたらどうなっちゃうんだろか。
日本語字幕、日本語吹替、そしてオーディオコメンタリー付。
今回は②で英語音声/日本語字幕で。

もっと光を

今回のテーマは光源に絞ってみた。
僕は素人なので、画面外からの光の当て方とか、照明の技術はよくわからない。照明の解説インスタとか見ると面白いけど、理解、分析はできない。
これまで明るさ、影について何度か考えてきたし、せっかくなら取り上げたいけど。
せめて、どんな光源があるのかメモるだけでも面白そうだと思いスタート。
まずは光源をざっくり洗い出す。

(A)屋外:日光、基地の出入り口の白熱灯、青い常夜灯、雪上車のライト、窓から出てくる室内の光

(B)室内:天井照明、娯楽室などのスタンドライト、医務室のオペ用ライト、窓から入る日光/夜の青い光、チェスゲームのモニタ画面、医務室のモニタ

(C)携帯:懐中電灯、ランタン、トーチ(発炎筒)、火炎放射器

この3つのなかでも(A)(B)設置されていて、基本的には動かない。
(C)は、俳優が光の向きを操作できる。
そのため「その人物が何を見ようとしているか」というメッセージが加わる。
何を映し、何を見ようとして、何を見せないでいるか…という作り手の意図が照明によって表れてくる。そういう意味では、Cは最もその意図がストーリーを語る上でわかりやすい。(一方で監督、撮影側が操作しきれないということも言える。)
特に印象的なのは、犬小屋での犬THINGにみんなで光を当てるシーン。メンバーが驚いて手元が揺れる、かつTHINGが少しずつそのフォルムを明かし始める。 
手元のライトを何かに当てるというのは、見えないものが在るからで、これはキャラクターと観客にとってお互い持ち合わせてる「不安」の表れだ。
何に当てたらいいかも分からないほど真っ暗な時も、ランタンをつけて少しでも
そういう意味でもホラー映画、サスペンス映画には手元のライトの重要性がわかる。

夜は青く光る

洗い出してるうちに再確認できたのは、基本的にこの基地内は暗いので照明をつけてること。南極基地だから窓が小さくて、少ないためだろう。だから外光が入らず、日中も電気をつけないといけない。
実はこの窓からさす外光が昼/夜とで大きく変化する。昼間の外光は白だが、夜になると青に変わる。
これは基地の周りに張り巡らした青色の常夜灯のためだ。常に照明をつけなければいけない基地では時間がわからなくなるがらこの青色の光をみると、いままさに夜だということを気付かされる。青い光を「夜の訪れ」として、基地が昼…夕方…夜と、だんだんと青に変わるシーンを挟み、観客に時間経過を理解させる。夜のシーンはいつもどこかに青が差し込む。
これは、真っ黒な闇を撮ってきたフォッグ、ニューヨーク1997との大きな違いだろう。
この世界の夜は黒ではなく、ただただ青いのだから。そう、青は南極基地の夜なんだ。

実はこの夜は青い、というルールで見ていくと一つだけ妙なことが見つかる。
犬THINGの解剖シーンについてだ。
まず①ブレアが犬THINGをメスで切り開き解剖して驚いた後、一旦フェードしてから、②皆に解剖結果を解説してる。①のシーンでは昼間だったはずなのに、②のシーンだけ青い外光差し込んでいる。つまり夜になっている。
ところが彼らは②の後、ノルウェー隊が見つけたUFOを確かめるシーンと続く。つまり2日目の昼間なわけだ、
これは脚本の段階では時系列が異なってたのかも知れない。

影を作る光

薄暗い基地でも、わずかな光を当てれば陰影は生まれる。顔全てに影がかからないように反対側からライトを当てたりするらしい。ここら辺は自分でやったことがないので、めちゃくちゃ曖昧なことしか分からない。

影が印象的なシーンはいくつかある。例えば、ギャリーの血液テスト。最後に残されたギャリーに向かって火炎放射器をかまえたチャイルズ、ノールズ、マクレディの後ろには大きな影がある。
低位置から見上げるようなアングルと、3人の大きな影が相まって、ギャリーが3人には逆らえない雰囲気を醸し出す。その存在感、主導権を増幅させる。
もう一つは、1日目の最初の犬THINGが誰かの部屋に侵入するシーン。そこには影を作る本人は映されず、彼の影だけが壁に大きく映される。この影がやたらに大きい。室内の天井照明とスタンドライトだけでこれほどの影ができるのか…と疑問に思ってしまう節はあるが、正体は分からないが行為のみが見え、今後の展開を想像させるには容易い演出。というかジョンカペがサスペンス古典をやっているのがよく分かる。
このいずれも光を当てることで生まれる影。一方で、実際に光をあててできた影、ではないものも一つある。フュークスが暗闇の中で見た影。

光のない青/光のない影

フュークスが部屋で1人研究をしているうちに停電で真っ暗になるシーン。このシーンは他のシーンに比べて、浮いている不思議なシーンだと思う。
フュークスの研究室はマクレディが訪れた際に、光源は机上ライトと廊下の部屋のみで真っ黒い。夜だというのに不思議なことに青い光がまったく入り込んでこない。
その後、停電が起こるとゆっくりと画面は青黒くなる。けっして真っ暗闇にならないので、視聴者には机上、手元などがうっすらと見える
詳細はわからないが、ある程度明るい室内で撮影したものを、編集で暗くしたのだろう。そのためこのシーンは、ニューヨーク1997などの黒い闇でもなければ、常夜灯の青でもない。編集で作られた闇のシーンとなる。
この作られた闇のシーンで、フュークスは大きな影が横切るのを見る。
光源はフュークスの手元にあるライターの炎のみ。カメラとライターの間を遮る真っ黒な影を作るには、真っ暗闇では目に入らず、常夜灯の青い光を浴びれば正体が映ってしまうのかもしれない。
それゆえにこのシーンだけは、他とは異なる青黒い闇を作ってると思う。

些細な発見(部屋、窓を塞ぐ板、"トーチ")

今回、光源をメモしてるうちに気づいた些細な3点。

①マクレディが1人になる部屋
本当にどうでもいいんだけど…
マクレディが室内で一人で過ごすシーンは3つ。自分の部屋でチェスゲーム時、UFOを信じてもらえず酒を飲むシーン、テープレコーダーへの独白。
酒飲みシーン、テープレコーダーのシーンはいずれも破れた衣服を触るので同じ部屋かと思っていたが、机のスタンドライトの形が違う。よくよく見ると部屋が異なる。こういう思い込みがまだまだあると分かる。

②ブレアが監禁される道具倉庫
本当にどうでもいいんだけど…
道具倉庫は閉じ込める際に、窓に板を当てて釘で留めている。外から見ると板を横向きに留めているのに、部屋の中きら見ると縦向きに留めてある。
本当にどうでもいい…

③トーチという言葉
これは翻訳の関係。
実は、発炎筒という言葉をここ数回にわたって使ってきたのだけど、作品内では「トーチ」という言葉が使われてることに気づいた。たしかに松明、篝火とかいう意味をもつし、日本でもハイトーチみたいな商品もあるから正しいと思う。
実は2回この言葉を使う時がある。
1回目は、マクレディが倉庫に立てこもりダイナマイトとトーチを持って隊員に立ち向かうシーン。2回目は基地が停電となったシーン。

まず2回目停電シーンの原文と翻訳をみたい。これはギャリーがマクレディに向かっていうシーンだ。

(原文)
Got a flare?

(翻訳)
トーチは?

これは停電のなかで、まず誰か光を持っていないか確認しようとした質問。
過去数回で見たように、flare=発炎筒=トーチということで間違いない。
そこで今度は1回目の倉庫のシーンを見たい。
これはダイナマイトとトーチを持って立て篭もるマクレディ側が、火炎放射器をかまえるチャイルズたちに言ったセリフだ。

(原文)
Put those torches on the floor and back off.

(翻訳)
トーチを置いて下がれ

あんまり粗探ししたくないんだけど、これではチャイルズがマクレディにいうセリフになってしまわないか?
英文のtorchesとあるので、混同してしまいがちだが、これは火炎放射器を指しているように見える。
thoseと複数形であること、日本語のトーチは英語ではflareであること、その後チャイルズたちが火炎放射器を置くこと…を考慮すれば、明らかにこのtorchesは火炎放射器ではないだろうか?
このシーンはマクレディの背中ばかり映るので、口元が見えず誰が喋ってるか分かりにくい。声も荒げて割れているので、難しいところだが…
なので、個人的には「武器を置いて下がれ」「火器を置いて下がれ」とかになるのかなと思った。

来週に向けて

  • 0.5倍

  • 音無し鑑賞。

  • 光のことをもっと考える

  • 顔、そして視線

  • マップ使いながら視聴

  • カメラの位置

  • BGMの特定

  • それぞれのヤられ方

  • 別の言語の字幕/吹替

  • そろそろ「遊星よりの物体X」を観る

    無理だったら普通に楽しむ。好きな映画のいいところは、普通に楽しめること。

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