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第8回「そいつ」11月❹

週一で、同じ映画を見る。ただそれだけ。
観る映画は「遊星からの物体X」、つまり「THE THING」です。

ルール

  1. 毎週1回「遊星からの物体X」をみる

  2. 毎週1回みて、気づいたことを書く

  3. 木曜または金曜の通勤時間で見る

  4. ネタバレとかは気にせず書く


基本は通勤中。ほぼほぼ電車内での視聴となる。デバイスはiPhone se(3G)。
イヤホンはAppleの有線イヤホン。
画面は小さく、音質も良好とは言えない。
製作陣が期待する映画館という環境からも程遠い。この点については留意。
あくまで「通勤中のiPhoneでの体験」という狭苦しい体験ということは気をつけないといけないかもしれない。

第8回目 11/26自宅

前回からの道のり

(前回の記録からわたし自身の変化)

11/19
シンプルにダラダラしてしまう。
トビーフーパーの「スペースバンパイア」を観る。何起きてるの?の嵐で気づけば終わっている。同監督でいうと悪魔のいけにえ2で味わったような感覚。
トビーフーパーは、ジョンカペと「ボディバッグス」というテレビシリーズみたいなものをやっていた記憶がある。
さらにスペースバンパイアの脚本はダン・オバノンとドン・ジャコビー。
オバノンといえば、ジョンカペ処女作の「ダークスター」の脚本。ジャコビーの方は、ジョンカペ「ヴァンパイア/最後の聖戦」の脚本。なんかこのメチャクチャさに納得してしまった。

11/20
「ティファニーで朝食を」を観る。ちょっと全然ハマらなさすぎて驚いた。オードリーが可愛いことと、ムーンリバーが名曲だったことだけ実感。これだけ名作と言われているとのに何も感じないと自分の未熟さみたいなものを感じてくる。
「本物のニセモノ」というセリフが重要な気もするが、そこまでの面白さに行きつけない。
ニセモノが跋扈する摩天楼、60sアメリカの街中のマンションを支配するハゲ出っ歯眼鏡の日本人(徹底的にバカと扱われる)、衰退が見え始めるアメリカの中でもまだホンモノ(ティファニー)が魅せる粋な計らい、古臭いヨーロッパ式を悪趣味に並べる成金。本物とニセモノがいやらしく、というかずる賢く並べられてるような気がしてしまい疲れた。

11/21
仕事、勉強

11/22
妻誕日で美味い昼飯、動物園に行く。
最近の動物園について思うことを2000文字くらい書いていたのだが、本ブログと関係なかったので削除した。
(だれか東山動植物園のヤブイヌの現状を教えて欲しい。)
帰宅後、ポール・ヴァーホーヴェンの「インビジブル」を観る。面白い。
透明人間という古典的なテーマだったけど、初めての犯行がケータイ漫画並みのスケベ心から…というのが何とも味わい深かった(サドルマン!あたりを思い出した)。
見えない敵との闘いを映像化するときに、どうやって存在を伝えるか…がキモなわけだけど、モニター、煙や水でぼんやりと見えてくるのが良い。だんだんと仲間たちが戦うためのルールみたいなのを理解していく感じでハラハラする。インビジブルではなく、ホロウにした原題に拍手。

11/23
勉強遅れてきてる、ギターの練習

11/24
勉強すこし取り戻す、物体Xを観ないと

11/25
toomuchIndiaでテイクアウト、友達と会議、その後、ジョンのサンのライブ。
名古屋、東京どちらも面白いし凄かった。
感想は色々あるが寄り道になるので削除。

ライブ後、友達のてんしんくんに遊星からの物体Xについて話しかけられる。このブログを始めてから、みんな思い思いの、THING話をしてくれるので面白いし嬉しい。
彼は数年前に見た時、年間ベストに入れたいほど面白かったのに、他人に本作を教えてみたら「安っぽくて笑えた」的な感想を言われて、ちょっとモヤモヤしたという話をした。
結構この感想はよく聞くかも。確かに昔のSFX見慣れてないと微妙なのかな、とか思う。でも、特殊効果のロブボッティンが寝ないで作り続け病院に搬送されたことを考えると泣ける。
笑ってしまうシーンは人それぞれだから否定もできないけど、アタックオブキラートマトをダラダラみたときくらいの感想だとやっぱ悲しいな

11/26
練習、みっちり勉強。気づけば20時。
木金の通勤で見れてないし、今日、家で観ることに。

Das Ding

仕事後の妻の提案で、ドイツ語吹替で見ることにした。ときどきドイツ語の仕事を引き受ける妻、そして半年くらいduolingoでドイツ語の勉強してる僕には勉強としても都合いい。前回の記録でも他の言語での翻訳がどうなってるか観てみたかったこともある。
さっそく、ドイツ語吹替✖️ドイツ語字幕で視聴。僕は正直、読んでも聞いても全然わからないが、セリフをほぼ理解してるし、吹替の抑揚とかそういうのを楽しもうと思う。

まず最初に気づくのは吹替・字幕のセリフは一致しない。ここは日本と同様で、翻訳はバラバラで割り当てられてる。
吹替には吹替の翻訳。
字幕には字幕の翻訳。
これは日本と同様、読める文字数を意識していると思う。字幕の方が文字数制限がされるので、結構省略されている。

驚いたのはナレーションの追加。といっても一箇所だけなんだけど、アメリカ南極基地の英語の看板が映った瞬間。
まだ誰もキャラクターが紹介されないまま、謎のドイツ語ナレーション。
どうやらドイツ語吹替用に、ドイツ語でアメリカ南極基地と読んでくれてるらしいけど…誰…?という感じ。場面説明だけの声役なんて…ペンギン村のブタ、バカボンのウナギ犬あたりを思い出す…。
日本だったら字幕を出しそうなもんだけど。その後一回も声は出なかった。

日本語吹替と違って好感を持てたのは、ドイツ語版ではノルウェー人のセリフにはアテレコしてないこと。そのままの(偽)ノルウェー語をはなしている。
日本語吹替だと、ここに日本語で「その犬は危険だぞ!」みたいなことをスラスラ喋る。
ここは言葉が通じないコミュニケーション失敗によって、犬を連れ込んでしまうシーンなので、これは蛇足も蛇足。しかしまあ、テレビ放送用に大人の事情で入れたと思う。

過去形と過去完了形

ドイツ語で見ていて感じた特徴は過去形かも。
本来ドイツ語には、過去形と過去完了系と二つあるけれど、実際に口語のほとんどは「過去完了」にしてしまうことが多い。
英語同様、過去形と過去完了はもともとニュアンスが異なる…はずなんだけど。
ドイツ人の多くは、口語では過去形を言いたくても、過去完了(habe+過去分詞)で喋ってることが多く、
一方で、書籍、書類では過去形・過去完了をしっかり使い分けているらしい。

よって、この映画でも、
字幕は過去形、吹替は過去完了系となっていることが多かった。
実際、過去形の方が(動詞habe)を記述しなくて済むので、文字数が減る気もするし、合理的なのかも。
こういう点を見ても、字幕、吹替それぞれの普遍的特徴と地域的特徴が出てくると感じる。

仲良し言葉のきみ、ぼくで

もう一点、ドイツ語の特徴というと二人称に使う「Du(きみ)」と「Sie(あなた)」。
よく英語と日本語の違いの話をすると、敬語の問題が出るけど、ドイツ語にも少なからず「丁寧語」みたいなものが存在する。
そのニュアンスは初心者の僕には分からないけど、結構しっかり使い分けてるっぽい。「duzen」という「duで呼び合う」という動詞すらあったり、昔見た映画では「Sieで呼んでもらってもいいかな?」と距離を置くシーンなんかがあったり。

で、duを使うか、sieを使うかという問題が、吹替と字幕で全然違う。
例をメモし忘れてしまった…
まあ、何が言いたいか…というと、日本語吹替、字幕もそうだよね、ということ。
日本語吹替は、マクレディがドックなどに丁寧語を使っている。ちゃんと敬意を払っている。
一方、日本語字幕では誰が誰に対しても「〜だ」となって、ですます調ですらない。
これも文字数の制限からきているのかなと思う。実際、英語から日本語の敬語という価値観に落とし込むこと自体、翻訳者の意図が強まるというのに、文字数制限まであったら難しさが増すばかりだと思う。
僕は字幕のマクレディに慣れていたので、ドックに対してもタメ口で喋るアウトローなイメージがついていた。
こないだ久しぶりに吹替で見た時、あ…敬語使える良識ある人なのか…という印象を受けた。
これだけでも同じ人物に抱く印象が大きく変わる
ドイツ語話者にも同じことが起きてるのかな。

リップとシンク

というか驚くほど、唇とドイツ語の発音が合わない。発話が始まるまえから喋り出すし、発話が終わっててもまだ喋ってる。
日本語と英語、ドイツ語と英語で考えてみれば、明らかにドイツ語の方が英語と近いので、唇の動きに合わせられそうなもんだけど…。
逆に、日本語だとあまり違和感を感じないのは、音響編集(吹替用)の人がある程度調整して、むりなら撮り直したりしてるからかもしれない。ドイツ語ではこの工程をちゃんとやってるのかな。

じゃあ、海外では吹替でなく字幕が主流だからかな〜、と思ったけど全くそんなことない。むしろ吹替が主流の国がヨーロッパには多そう。

ドイツ在住の方のブログにて。どうやらドイツは映画館でも吹替が主流。
昔の日本なんかは、映画館は字幕、テレビは吹替が主流だった。
いまDVD化するときに撮り直したり、テレビ放送時の吹き替えを再利用したりしてる。

前回の吹替検証の回でみたとおり、DVDに収録されてる吹替はテレビ放送用にかなり削除されてしまってる。
最近はメジャーな作品に関しても、劇場公開する吹替も増えたけど、マイナーな作品に関しては字幕がほとんどだと思う。

録音とミックス

別段、自国を褒め称えたいわけではないし、ドイツが苦手なわけではないけど、ドイツ版の吹替の音はあまり絶賛はできない。
声優が合ってる合ってないとかは、趣味の問題だと思う。
それよりか、録音とミックスがちょっと雑に思える。
まず第一に「音声」の距離感が感じられない。どの声も、マイク至近距離で話しかけているよう。
どうしてこんな風に感じるか考えたけど、日本語の吹替だったら、立ち位置、声の張り方によって、ボリューム、パン、残響の残り方を感じることができる。ドイツ版はちょっとそれが弱い。そのため、画面に映っているどこの誰が喋っているか…というのが、理解しづらい。
録音時のセッティングが、雑なのか。それとも、僕にはわからないドイツ独特の約束事があるのか。
声優も抑揚が少ないので余計声に立体感がなかった。

もう一つは、音響のミックスが雑では…?という印象。
(日本語吹替も同様に) 吹替ではBGM、効果音、音声と複数の音源データをもう一度ミックスし直さないといけない。
前回、フュークス変身時のサイレンがないことを指摘したとおり、吹替を作るということは音情報をその都度で作り直してることになる。

なぜドイツ語吹替のミックスが雑だと思うか、という理由は以下4点。

①会話のシーンで劇伴音楽が小さい
 これは全体を通して感じる。なんか曲を聴いた印象がない。

②物音がなど効果音が全然しない
 妙に静かだなと思ったら、走ってる時の音とかも小さい。

③声を入れてないシーンがある
 これは通信中に寝ていたウインドウスをみて、怒ったギャリーがボリュームを上げるシーン。
ハウリングでびっくりしたウインドウスが、「ah!!」と叫ぶはずが…全くの無音。ハウる音のみ。口だけ叫んでるウインドウス。

④ドックの叫び声が2重問題
 これが1番驚き。ノリスモンスターの腹に腕を食いちぎられ叫ぶドックのシーン。
原語(英語)の「ah!!」って声と、ドイツ語の「ah!!」って声と、どちらも同じくらい聞こえる。叫んでるのは1人なのに、声は2人分。
これはちょっと消し損ねたのか、消すのが難しかったのか…?

あだ名と役職

医師として隊に在籍してるコッパーは、みんなから「ドック」と呼ばれてる。日本語では「先生」と翻訳されていた。
もちろん彼を「コッパー」と呼ぶ瞬間が何回かある。一つはギャリーが彼を呼ぶ時。理由は年齢か役職かどちらかだと思う。
もう一つは、マクレディがノルウェー基地で物体Xの氷を見つけて隣室から呼びかける時。驚いて感情的になって、名前で呼んだんだと思う。
それ以外は基本的にドック、とあだ名のように呼びかけてる。

でも、ドイツ語の字幕では「Doc」と「Kopper」と、さらに「Arzt(男性医師)」を使い分けてる。
医師が必要な状況なんかは、arztを使っている。不特定の医者というか、その資格があるのであれば…という感じ。日本語にすると「早く医者に見せないと」みたいなこと言っていて、コッパーが医師であることを忘れられてるような印象がする。
個人的にはDocと統一した方がいいと思った。でもこの日本語の「先生」が万能すぎるというのもある。バッグスバニーの「どったの?先生」なんて、まさにそれ。

フレアvsブレア問題

前々回から取り上げてきてる、字幕での誤訳問題。発炎筒を指しているであろう"flare"を、人名Blairと間違えてるという内容。

ドイツ語でも検証。
結論、字幕と音声それぞれで異なる。
字幕はLeuchtrakete=発炎筒、音声は音が割れて分かりにくいが、ブレアと叫んでると思う。
こういう誤訳はどこにでもあるということかもしれない。まだ2カ国の事例だけだけど、原語が聞き取りづらいのか、当時世界的に流れてるスクリプトが間違っていたのか。

この問題べつに決着とかないけど、結構面白がってしまう自分がいます。

来週に向けて

  • 0.5倍

  • 音無し鑑賞。

  • 光の赤、光の青、昼の白を考える

  • 顔、そして視線

  • マップ使いながら視聴

  • カメラの位置

  • BGMの特定

  • それぞれのヤられ方

  • 別の言語の字幕/吹替

    無理だったら普通に楽しむ。好きな映画のいいところは、普通に楽しめること。

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