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『ショウコの微笑』を読んで 韓国文学も面白いかも!

こんにちは。いよいよ読書の秋ですね📚🍂🌕

先日『ショウコの微笑』という、韓国の短編集を読みました。新しい韓国の文学シリーズの一冊として刊行されています。

装丁がおしゃれ


今年読んだ現代小説の中でいちばん刺さったかもしれない。

韓国文学はあまり読んでこなかったのですが、この本をきっかけに興味が出てきました。

実はこの本、ブックカルテという選書サービスで、ある書店員さんに選んでいただいたものです。

自分では手に取ることがなかったであろう素敵な本に、出会わせていただけてとても感謝しています📚

文体について


『ショウコの微笑』はデビュー作のようです。この作品で新人賞を受賞し、作家の道に入ったそう。

作者の紹介はこのように記されています。

静かで端正な文体でつづられた作品は、
長く濃い余韻をもって読者の心を動かすと
支持されており、今後の作品に期待が高まる
注目の若手作家の一人である。

チェ・ウニョン作、吉川凪訳『ショウコの微笑』2018,クオン 扉からの引用


たしかにとても静かな文体でしたが、個人的には「端正」だとは全く感じませんでした。

むしろ荒削りで、絶えず前へ前へと急ぐような、独特なパワーがある文体に感じます。テクニックがなく素直な印象です。

この「静けさに秘めた力強さ」に私はやられたんだと思います。一気に読んでしまいました。

訳注がやや過保護気味な感じはしましたが、総じて誰にでも読みやすい文章じゃないかなと思います。

感想


この本には7つの短編が収録されています。

弱いけれど誇り高く懸命に生きているような登場人物たちが目立ちます。

全編を通して、この登場人物たちの間には「近づくと離れる、離れると近づく」とでも言うような、不思議な力学が作用しているようです。

ソユがショウコと腕を組もうとすると、ショウコがそれを拒絶するシーンがあります。のちにショウコがソユの腕を取ろうとすると、今度はソユが振り解くのです。

大切にしたい人を、大切にしそこねる。愛が嫌悪に変わってしまう。そんな人間関係のすれ違いや回避がたくさん描かれています。

そうした不器用なやり取りを読んでいる中で、傍目には愛に見えないようなものもまた愛なのかもなと思わされました。

『ショウコの微笑』はソユという韓国の女の子の家に、ショウコという日本人の女の子がホームステイすることから物語が始まります。

「ショウコ」自体のエピソードよりも、ショウコという異物がソユの家族の中に入ってくることで、家族の関係性が変化していくところが面白かったです。ソユの祖父がすごくいいなと思いました。

韓国文学にはまりそう


エリアスタディーズの『韓国の暮らしと文化を知るための70章』という本では、この「新しい韓国の文学シリーズ」の誕生について触れられていました。

そこにはこんな記述も。

韓国は軍事政権時代が長かったため作家は個人の問題よりは、社会や国民の代弁者として民主主義、イデオロギー、国家、民族などをテーマに作品を書かざるを得なかった。そうした社会的な背景のもとで、韓国の小説は暗い重いという印象が強い。だからこれまで日本ではあまりヒットした作品がなかったのだ。

舘野皙編著『韓国の暮らしと文化を知るための70章』2012,明石書店 p233


なるほど……そう考えると、『ショウコの微笑』にはその「暗くて重い」韓国文学の系譜もしっかり感じられます。その部分は背景に回しつつ。


他にも韓国文学を読んでみようかな。韓国語の勉強のモチベーションにもなりました。

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