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読書記録10月分           ~特殊設定ミステリのことについて~

お久しぶりです。久しぶりに書いています。思い切って始めたはいいものの書くことが浮かばずに放置しておりました。中々思っていることを文章にするのは難しいです。

読書記録です。主に備忘録として書く、これならば出来るのではないかと。しかしながら読んだ本を片っ端から書いていくのは精神的に絶対無理なので、月に1回か2回。多くても半月に一度、その月で読んで面白かったり、考察したい本の備忘録を付けていこうと決意(そこまでのものではないが)しました。続くのやら。

10月の1冊目は方丈貴恵さんの「時空旅行者の砂時計」です。       以下、あらすじ

瀕死の妻のために謎の声に従い、2018年から1960年にタイムトラベルした主人公・加茂。妻の祖先・竜泉家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族のほとんどが亡くなった「死野の惨劇」の真相を解明することが、彼女の命を救うことに繋がるという。タイムリミットは、土砂崩れがすべてを呑み込むまでの四日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は2018年に戻ることができるのか!? 
“令和のアルフレッド・ベスター”による、SF設定を本格ミステリに盛り込んだ、第29回鮎川哲也賞受賞作。

はい、素晴らしい設定です。今流行の特殊設定ミステリというやつです。本格ミステリにSF設定(タイムトラベル)を盛り込んだら・・・という設定です。主人公は妻を救うために過去へタイムトラベルし、事件の解決に奔走するのが物語の本筋です。                          ネタバレになりますので、細かい内容は置いておきます。是非、読んでお確かめください。個人的には1作目としては面白かったと思います。ただSF設定に付いていけなくなる人が出てくると感じました。SFものも読む自分としては「あの設定はああいうもの」と割り切るのがコツです。SFは難しいですから。

ここからはミステリの感想です。ブームの特殊設定ミステリですが私は2つのポイントをクリアしているかどうかが重要だと常々思っています。それは①特殊設定はあくまでディテール。本格を謳うのであれば論理的に謎を解くのが筋。                              ②特殊設定の世界観が破綻しないような構成、物語でないといけない。       この2点です。                                   ①は今作でいうならSFの要素をどこまで活用するかどうかです。あくまでフェアであるべきかと。例えるなら魔法が使える世界のミステリで、トリックに魔法を用いるということ。                         ※ここで重要なのは「魔法が使える世界」の説明がきっちりとされていれば良し。急に解決場面で聞いたこともない設定を盛り込むのはNG。          本格ミステリを全て分かっているわけではないですが、俄かファンでもここは譲れない所。                                ②は書いてある通り。タイムトラベルが活用できる世界ならば、相応の物語にならなければいけないということ。本作でいうとつまり・・・                本編を読んで下さい。

本作はこの2点。賛否あるかと思いますが、個人的にはクリアしているのではないかと思います。解決編はあくまで、あくまで、ですがロジカルに解かれたと感じました。正直、犯人は想像が付きましたし、動機もまあ、なんとなく分かる。勘の良いミステリ好きならばトリックも分かるのでは・・・?と読みながら思いましたが、ミステリは謎が難しけりゃいいもんでもないですから。そこを導き出す過程が面白かったりしますから。後はタイムトラベルもの特有のちょっとノスタルジックなオチになっているのが良かった。ミステリーでそういう感じにさせてくれる物語って少ないから。

ここからは駄文です。備忘録とは関係ありません。本作は第29回鮎川哲也賞受賞作品です。私、この賞との相性が非常によくて毎年(全て読んでいるわけではございません)チェックしています。私の好きな作家で上位に入ってくる、今邑彩さんや加納朋子さん、最近でいうと今村昌弘さんもここ出身。何気に昔からある賞で(これより古いのは江戸川乱歩賞など数えるほど)長く続いてほしいなぁ、と改めて実感。是非是非、創元推理の方々、宜しくお願い致します。

今回はこのくらいで、ではまた。


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