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不思議な縁

一年と数ヶ月ぶりにひょっこりとトラックに乗って現れた彼は変わりのない様子で、話し方やその笑顔は素朴で、私の暮らしのなかの、ある特定の隙間にぴったりと収まるような絶妙なタイミングで現れた。

太い腕と大きな手、丸々とした指先でスマートフォンの画面の小さな文字を上手にクリックする。

力作業はもってこいだが、細かい作業も上手にこなす。流暢ではない日本語と本人曰く、母国では、もう普通に暮らせなくなってしまった、というほど長い?日本での生活。

お互いに気付くことのできない事細かなところまで十分に条件が揃ってしまい、私のところに遊びに来ることになった彼。二人で黙々と何も語らず、何かを作る時間がわたしと彼にとって思いの外、貴重な機会になることは間違いなさそうだ。

この歳になって、こども同士が仲良くなるような気楽さで、こんな山の中の作業場で異国の人と知り合い、時間を共にすることになるとは思わなかった。

彼は私の手作業、手道具の使い方をじっと見つめる。そこにこどものような好奇心の眼差しがある。日本語での難しい表現はできないし、できてもしないだろう、一言、真似のできないアクセントでの「すごいな~」に喜びがつまっている。

「また来るね。」という彼。日本人同士の関係からは決して見えてこない素朴な元々あった何かを、もう一度、自分の中に見つけるいい機会をいただいた。この出会いの始まりから終わりまでを全く個人的な出来事としてではなく、水槽の魚をを観察するような感覚で眺めていきたい。

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