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イベントサマリー「IPOを目指す上で絶対に押さえておくべき"ガバナンス"」

こんにちは!SOICO note編集部です。今回は9/29に開催された「IPOを目指す上で絶対に押さえておくべき"ガバナンス"」のイベントサマリーを公開します。実際にIPO経験のある登壇者が経験したガバナンス体制を構築する上で重要なこととは?

荒堀 敬子(あらほり けいこ)
同志社大学卒業後、有限責任監査法人トーマツに入所。監査業務に従事した後、明豊ファシリティワークスにてPM業務に従事。RSM監査法人・SCSコンサルティング会社を経て、2015年に株式会社ユーザベースの常勤監査役に就任。2019年に自ら内部統制を構築するため同社に入社し、Assurance and Consulting(内部監査と統制構築業務部門)を立ち上げ。

「上場後の成長に大きな影響あり。最悪上場廃止の可能性も」 ガバナンスは今なぜ必要なのか?

土岐:まず、ガバナンスの基礎というところでガバナンスはなぜ必要なのですか?

荒堀:
上場前と上場後にそれぞれにガバナンスの必要性があると思います。上場前にガバナンス体制が不十分ですと、証券会社の審査が遅れたり、会計法人難民になるなどの問題が生じます。その問題が解消できないと上場の時期がずれ込んだり、最終的にIPOができなくなる可能性も出てきます。

また、上場後に関しては仮にガバナンス体制が不十分なまま、IPOをクリアできたとしても事業拡大につれて耐えれなくなってきたり、管理コストの増大により、収益性が出てこない。

また、大企業からきた優秀な人材もルールも曖昧な会社に不安を覚えて早急に辞めてしまう。最悪の場合、ガバナンスの不備により、不正などが発覚し上場が廃止になってしまう場合もあります。

土岐:ありがとうございます。コーポーレートガバナンスコードの発表によって、管理体制の構築が求められている部分もガバナンス体制の重要性を高めていそうですね。

「規則と実態が乖離している」「責任の所在が不明確」ガバナンス構築における失敗例とは?

土岐:上場を目指す企業はガバナンス体制の構築の必要性は理解していると思いますが、なかなか上手くいかないのが実態だと思います。荒堀さんがよく見かける失敗例などはどのようなものがありますか?

荒堀:そうですね。よくある失敗例として「稟議制度導入」「購買管理」の二つがあると思います。まず「稟議書導入」における失敗ですね。職務権限一覧の雛形をもらって、稟議書制度を導入した企業の中には何かが違う…と感じる企業が多くあるようです。
まず組織図が実質的な指揮命令系統を反映していないことが多々あります。
加えて、雛形をカスタマイズしていないことで会社にとって不要な稟議項目があることもあります。例えば、IT会社なのに棚卸資産の項目が存在するなどですね。さらには、意思決定の際に申請者が承認者を都度選んでいるなどの問題があります。

次に「購買管理」における失敗例です。購買管理の責任者がいないことで、購買全体を管理する機能がなく、全社的にみると無駄なモノを買っていても気づけないという問題があります。
次に、組織拡大とともに購買のお作法を周知するハードルが高くなるという問題があります。加えて、購買責任者がいないことから先方からの請求書が来るまで支払いの必要性に気づけない、費用の予算管理が雑になるという問題もあります。


「組織、ルール、システム」の観点からガバナンス体制を構築する ガバナンス体制構築に必要なこととは?

土岐:上記のような失敗例を回避して、ガバナンス体制を構築するためにはどの行ったポイントがあるのでしょうか?
荒堀:
はい、こうしたガバナンス体制構築の失敗には多くの問題点がありますが、こうした問題は「組織づくり」「ルール整備」「システム構築」の3点で問題を振り分けることができます。例えば、前述の「稟議書制度導入」での失敗例はそれぞれで以下のように課題を振り分けることができます。

稟議制度導入における課題点

こうして整理するとなぜガバナンス体制の構築がうまくいかないかが見えやすくなったのではないでしょうか。
「組織、ルール、システム」の三つの観点でそれぞれ気を付けていくことで堅牢なガバナンス体制を構築できると思います。

「チームの必要性、リーダーの要件定義、採用の優先順位の決定」 「組織づくり」の観点からガバナンス体制構築のための重要ポイントとは?

組織づくりの面でいうと①チームの必要性を考える、②リーダーの要件を定義する、③採用の優先順位をトップダウンで決定するの三つの観点を意識して頂きたいです。

①チームの必要性
部門を作りたいので、無限級数的に部門の数が増えてしまいます。なぜその階層を設けるのか、なぜその部署が必要なのかということを全社的に検討し、共通認識を作ることが重要です。

②リーダーの要件定義
よくあるのが、ある社員はマネジメント能力がないにも関わらず、新組織設立にあたって人がいないからその社員をリーダーにしてしまうことですね。きちんとリーダーの要件定義を行い、人数が足りない場合は管理部門の責任者が兼任するなど、あくまでマネジメント能力が優れている人をきちんと選任するべきです。

③採用の優先順位の決定
現在いるメンバーの業務範囲、専門性を整理して、どの専門分野を兼ね備えた人が必要なのかを精査することが重要です。
「人が足りません!」という現場の声だけで人を採用してしまうことでどんどん固定費だけが膨らむことが多々あります。ボトムアップで採用するべき人を決めるのではなく、ある程度トップダウンで必要な人材を見極めるべきです。

「ガイドラインの作成、文書化は組織文化、業務範囲と評価基準の決定」 「ルール整備」の観点からガバナンス体制構築のための重要ポイントとは?

ルール整備の面で言うと①規定を反映したガイドラインを作る②文書化は組織文化という意識を徹底する③業務範囲を決めてから評価基準を決定するという3点が重要です。

①ガイドラインの作成
インシデントが発生にしないように規定から具体的なガイドラインに落とし込む作業を行うべきです。インシデントが起こったときに、規定をきちんと周知しないと会社の責任になってしまうので、その人を罰したり、過ちを指摘することが難しくなってしまいます。
従って、ルールの周知は面倒くさいなというふうに思いがちなんですけども、そこはルールをきちんと整備し、周知するっていう流れを作るべきだと思います。

②文書化は組織文化
トップが文章化を軽視してしまうと、規模拡大したときに属人化から抜け出せなくなってしまいます。

従って、規定において「〇〇するよう努める、務める」というふうに書いて終わるんじゃなくて、ちゃんと実質的なもの、その会社の現状に合ったものを設定することが大事かなと思ってます。
私が関与しているW社では文書化が非常に進んでいます。そのおかげでフルリモートワークが実現できています。これも文書化によって簡単にガイドラインが共有できているおかげと言えます。

③業務範囲と評価基準の決定
誰が何の役割を果たしてどこまでが業務範囲かを決めてから評価基準というのを決めていただくことをおすすめします。
これ皆さん評価基準になるとスッゴイ一生懸命作られる会社さん多いです。しかし、社員の業務範囲、責任範囲が不明確にも関わらず、「何かこうバリューを理解してる」や「何でもやる」とかそういった曖昧な部分だけが独り歩きします。

そうした評価基準を適用してしまうと、上に取り入れるのが上手な人だけが上がっていて、会社の成長っていう最終目的には繋がらなくなってしまうことが多々あります。誰が何の役割を果たしているのかっていう業務の業務分掌と言われる規定っていうのも見直しっていうのをおすすめします。

「整備したシステムを使い倒す、マスターオブマスターを根幹に据える、上流から下流まで意識した制度設計」 「システム構築」の観点からガバナンス体制構築のための重要ポイントとは?

システム構築の面で言うと①整備したシステムを使い倒す②マスターレポートを根幹に据える③上流から下流まで意識した制度設計思想にするの3点が重要だと思います。

①整備したシステムを使い倒す
せっかくコストをかけてデータを整理して一括管理しているのに活用しないのはデータが陳腐化します。data(会社の全情報を網羅)→insight(蓄積されたデータから何をするべきか考える)→action(データに基づいて実際に行動を起こす)、という一連の流れができて初めてシステム構築の意義があると言えます。

②マスターオブマスターを根幹に据える
ガバナンスに不備がある企業であるあるなのが、ローンや経理予算管理などの管理表が部署ごとに制作されてしまうという問題があります。部署ごとにフォーマットも異なることで管理表自体が属人化してしまい、結局コストがかかってしまいます。部署横断的にマスターオブマスターを指定して、都度必要なものはマスターオブマスターから拝借するという形にするべきです。

③上流から下流まで意識した制度設計思想
上流の意思決定と下流の意思決定がずれないようにすることも重要です。事業提携の際にざっくりと「サウンディング→NDA締結→契約と承認」といった流れがあると思います。その際に、NDA管理、契約管理など別のシステムです。ということがよくあります。
結局、一つの事業提携に5つ程のシステムを横断しなければいけないということになり、非常に内部統制の脆弱性につながってしまいます。こうした脆弱性を生まないためにも一気通貫の制度設計をする必要があります。

土岐:三つの観点からガバナンス体制の構築を意識すれば、非常に意義のあるガバナンス体制が構築できそうですね。ガバナンス体制の構築方法についてさまざまな説明をして頂きありがとうございました!!

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