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強いチームを創るためのシードスタートアップの組織論

変化に強い企業、優れた戦略は、強いチームから生まれる。

ビジョンの実現に向かう上で、また事業を継続的に成長させていく上で、「強いチーム創り」は最重要ファクターであり、経営者が最も力を入れるべきテーマだと思います。

私たち(ジェネシア・ベンチャーズ)自身も、日本人・インドネシア人・ベトナム人が在籍している多国籍な総勢10名のスタートアップですが、約4年前の創業当時から、強いチーム創りについて仲間と頻繁にディスカッションしながら試行錯誤してきています。

また、支援先の起業家から受ける相談としても、

・メンバーの当事者意識を高めたい
・言われたことをやるだけではなく、自分の頭で考えて、自発的・能動的に動けるメンバーを増やしたい
・部署間を跨いだコミュニケーションを増やすことで、部分最適ではなく全体最適を実現したい

などのチームについての内容が多いのが現状です。

では、強いチームとはそもそもどんなチームでしょうか?

強いチームについての議論を辿ってみると、D・マクレガーによるX-Y理論や、ハーズバークによる二要因理論など、その在り方についてさまざまな角度から研究がされてきていますが、強いチームを「時代の変化に柔軟に対応しながら、自律的・能動的に、最速で成果の最大化に向かえるチーム」と定義してみると、スタートアップの場合は特に、ヒエラルキー型チーム(経営者と従業員を分け、適切に報酬やルールを付与することによって効率性や合理性を高め、成果の最大化に繋げようとするチーム)よりも、ビジョン型チーム(ビジョンや価値観をチーム全員で共有し、個人が持つ個性や興味・関心を十分に活かしながら、全員が主役となって成果の最大化に繋げようとするチーム)の方がフィットしやすいと感じています(もちろん、どちらが良いかは経営者のチーム創りの考え方によって異なりますし、事業内容によっては、ヒエラルキー型チームの方がフィットすることもあるので、必ずしもこの限りではありません)。

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ビジョン型チームの方がスタートアップにフィットしやすいと考える理由は、一般的にビジョン型組織の方が、個人として得られる(責任とセットでの)裁量が大きく、やりがいや自己成長などの非金銭的報酬が得やすいことから、優秀な人材が集まりやすいと考えていることが一つ目の理由です。

もう一つの理由は、新たな価値の創造にチャレンジしているスタートアップにとっては、既存の秩序を発展的に壊すことを通じて、世の中の本質的なニーズを洗い出し、スピード感を落とすことなくサービスやソリューションを磨き続けること(時には事業そのものを変化させること)が必要であり、ビジョンや価値観をチーム全員で共有し、個人が持つ個性や興味・関心を十分に活かしながら、全員が主役となって成果の最大化に繋げようとするビジョン型チームの方が、こうした変化に対する受容性や感応度が高いと考えているからです。

このnoteでは、創業初期のシードスタートアップの起業家向けに、強いチーム創りに向けて私たち自身が日々トライ&エラーを繰り返す中で、また支援先の強いチーム創りに伴走する中で、少しずつ見えてきているポイントを3つに絞って言語化してみたいと思います。

1.世界観としてのビジョンをチーム全体で共有することを通じて、向かうべき方向性を明確にすること

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一つ目のポイントは、言語としてのビジョンだけではなく、世界観としてのビジョンをチーム全体で共有することを通じて、向かうべき方向性を明確にすることです。

具体的には、

・私たちが実現しようとしている世界観は具体的にどのような世界なのか?
・どのような登場人物(ステイクホルダー)が存在し、それぞれがどのような状態になっているのか?
・上記の状態を実現するために、私たちはそれぞれのステイクホルダーに対してどのような付加価値を提供し、何を伝えていくべきなのか?

これらの問いに対して、一人一人が持っているイメージをチームで共有し、みんなが見えている世界観を合わせていくことで、「言語としてのビジョン」から、奥行きを持った「世界観としてのビジョン」に止揚させることができるだけでなく、チームとしての向かうべき方向性が明確になります。

また、目指すべき方向性が明確になることによって、日々取り組むさまざまな仕事にそれをやる目的(ミッション)が組み込まれるため、やりがいに繋がりやすくなるのも大きな効用です。

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よく見かけるのは、言語としてのビジョンは存在しているが、世界観としてのビジョンがチーム内で共有されていないことによって、ビジョンと日々の仕事の距離が遠く離れてしまっており、ビジョンが形骸化してしまっているケースです。こうなってしまうと、ビジョンがチームの羅針盤としての役割を果たさないのはもちろんのこと、みんなが見ている世界観もバラバラになってしまうため、ミスコミュニケーションを生むだけではなく、日々の仕事が目的(ミッション)や方向感を失ってしまい、作業になってしまいがちです。

なので、言語としてのビジョンだけではなく、世界観としてのビジョンをチーム全体として共有すること、もっと言えば、言語としてのビジョンを定める前に、チーム内でしっかりと目指すべき世界観をディスカッションしてから、言語としてのビジョンに落とし込むことが大切だと感じています。

2.個人が持っている能力や個性を最大限掛け算しあえるチームワークを育むこと

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世界観としてのビジョンの共有を通じて、チームとして向うべき方向性が明確になったら、次は時代の変化に柔軟に適応しながら、スピード感を持ってそこに向かっていけるチームをいかに実現するかを考えていきます。

その上で、私たちがとても大切だと感じているのが、個人が持てる能力や個性を最大限掛け算しあえるチームワーク、具体的には、お互いのことをよく理解し、常に本音で話せる関係性を育むことです。

そのために必要な要素はたくさんありますが(このあたりは、Google re:Work「効果的なチームとは何か」に詳しく記載されています)、その中でも、

・仲間の人間性や価値観、強み/弱みを理解していること
・仲間のミッションや目標を理解していること
・異なる意見を楽しみ、コラボレーションし合えること

創業初期のシードスタートアップの場合は、上記の3つを意識し、実践することがとても大切だと感じています。

・仲間の人間性や価値観、強み/弱みを理解すること
・仲間のミッションや目標を理解していること

上記の2つについては、自己紹介よりもっと深い、自分という人間についてのプレゼンテーションの場を創ったり、ミッションや(OKRなどの)目標を可視化することによって一定レベルの実現が可能ですが、

・異なる意見を楽しみ、コラボレーションし合えること

については、本質的な傾聴の意味とその重要性を全員が理解していることが大切になります。ジェネシアでは、チーム全員がコーチングを学ぶことを通じて、共通認識を持てるようにしていますが、このあたりについては、ジェネシアにてPRやブランド責任者を務める吉田(愛)のnoteが参考になると思います。

3.チームワークに関するフィードバックサイクルを廻すことを通じて、進化し続けること

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・世界観としてのビジョンの共有を通じて、向うべき方向性を明確にすること
・時代の変化に柔軟に適応しながら、スピード感を持ってそこに向かっていけるチームワークを醸成すること

これまで上記2点について書きましたが、最後のポイントは、フィードバックサイクルについてです。チームとして動かしていく様々なプロジェクトについて、評価することを目的とするのではなく、そのプロジェクトをより良くするための、プロジェクトリーダーに対するチームメンバーからのフィードバックサイクルをしっかり回していくことが重要だと感じています。

この際に留意すべきことは、プロジェクト単体についてのフィードバックだけではなく、常にビジョンの実現からのバックキャストで捉えなおすこと。具体的には、プロジェクトの方法論についてのフィードバックだけではなく、プロジェクトを継続する・継続しないを含めて、サンクコストを抱えずに、ゼロベースで見直せる強さを持つことが時代の変化に対応し続ける上でとても重要だと感じています。

加えて、変化に強いチームを創るためには、仮にそのプロジェクトが結果としてうまくいかなかったとしても、その失敗は成功へ近づく前進だと捉え、未来への学びとすること。そして、新しいチャレンジを過度に恐れることなく、チャレンジを楽しみながら一歩を踏み出す勇気を持ち続けられる環境、またそういったチャレンジャーをチーム全体で尊敬の念をもって支えられる環境を創ることが大切だと思います。

4.最後に

強いチーム創りは、会社の数だけ答えがあると言っても過言ではないくらいとても深いテーマであり、常に悩み、試行錯誤していくものですし、強いチーム創りには完成という概念がなく、新たな秩序を創っては、既存の秩序を壊し続けることで進化していくものだと感じています。

ただ間違いなく言えることは、チームとは、個人では成し遂げられない大きなことを成し遂げるための共創としての一つの形態であり、この世に生を受けた以上、人間は誰しもその人らしく生きる価値を持っているということ。

個人的には、人間の個性や興味・関心という最も人間的な部分を最大限に活かせる生き方こそ、その人の幸福度の最大化に繋がり、そのことがチームとしての大きな成果や世の中へのインパクトの最大化に繋がると信じているので、チームとしての目指すべき方向性と個人の自己実現の方向性が合っていること、成果の最大化に繋がることを前提として、ジェネシアの大切な仲間はもちろん、関わるすべてのステイクホルダーにとっての幸福度の最大化と、成果の最大化を共存させるチームの在り方をこれからも追及し続けたいと思っています。

この記事を読んでくださった人の周りに、もしスタートアップの組織創りに関わっている方、悩んでいる方がおられれば、是非シェアいただければ嬉しく思います。

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