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守りたいのか、解決したいのか

「うちの子、感覚過敏で食べれないものが多いんです。白米と特定のふりかけで終わる日もあります。」

「他の子と遊ぶ事はしません。自分の世界が一番の子です。」

「騒がしい所や大きい音に敏感で、そういう場所に行くとパニックになる子です。」

「繊細でとても傷つきやすく、感情が不安定な子です。」

このように施設に見学に来られる保護者の方は我が子の特性についてとても詳しく伝えてくださる。
自閉症についてもとても勉強しており、我が子の事を理解しようと相当努力したのだろうと伝わってくる。

だから特性に関する内容からの私の第一声はいつもこうだ。

「とても詳しくお子様を観察していらっしゃいますね。」

そして、保護者の方から特性に関係する日々の様子を詳しく聞いた後、私は少々嫌な質問をする。

「お母様、お話してくださったお子様の行動(様子)は、お母様にとって守ってあげたい部分ですか?それとも、解決したい部分ですか?」

これはとても難しい質問だという事はわかっている。
だが、私の経験上、この質問以上に保護者への理解を深めれる質問はなかったのだ。

この、【守る】と【解決】は相容れない言葉なのだが、ここに【自閉症の我が子】が入ると、途端にたくさんの問題が浮き彫りになる。

質問された保護者は

「今まで色々試してみたけど全くダメだったので食べれるとは思えない。」

「皆んなとコミュニケーションがとれたらいいなとは思うけど、一人が好きな子もいる。」

「無理させて鬱や最悪の結果になってしまったらと思うと怖い。」

など、様々な反応がかえってくる。

話を進め、保護者がこう考えるに至った背景や環境を詳しく探り、簡単なジェノグラムとエコマップを作っていく。

余程の機能不全家族ではない限り、私が最後にする質問はいつもこうだ。

「でも、お母様は困っているんじゃないですか?」

困ってないと言う保護者はほとんどいなかった。

どの保護者もみな、子どもの困り事を何とか解決しようと必死に模索してきたが、どう解決したらいいのか分からず、守ってあげる事しかできなくなったのだ。

困っていると言う保護者の言葉を聞いて、私は心底安堵する。

これが、療育のスタートラインだ。


「では、解決していきましょう!」


続く


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