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馬に関する注意、馬の乗り方など

サンフランシスコで、乗馬の普及を目指して未経験の方々などを対象とした外乗会を企画していたときに、参加者の方に読んでいただいていた注意事項などです。何かの参考になれば。

写真はアメリカ サンフランシスコ近くの Mar Vista Stable での外乗です。一度に10人以上参加したりします。1時間60ドルくらい(2017年当時)。

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 馬は臆病な生き物です。
 子供や犬が近くを走ったり、遠くで何かが動いたり、大きな音がしたりするだけで、驚いて跳ねたり、急に走り出したりすることがあります。

 経験者でも思わぬ怪我をしたり、最悪な場合、死に至ることもあります。

 外乗などで初心者が乗る馬は慣れていて、驚いて跳ねたり、走り出したりということはあまり起きませんが、意思を持った生き物ですので何が起きるか分かりません。馬に乗っているとき・近くにいる時には油断しないようにしましょう。

 と言っても、緊張してガチガチになって乗るのも良くないです。緊張が馬に伝わって、馬も不安になってしまいます。
 リラックスしつつ、周りに気を付けつつ乗りましょう。

■ 馬のウェルフェア
 乗馬・馬術・競馬など、馬に関わるスポーツでは、馬のウェルフェアが最優先されます。この馬のウェルフェアでは、いかなる状況においても、虐待やドーピング等を禁止し、馬の健康や環境を良い状態に保つことが求められています。
FEI Equine Welfare Code of Conduct
FEI馬スポーツ憲章 (日本馬術連盟による翻訳)
 乗馬クラブに行っても、馬の体調を考慮して乗れない場合があるかもしれません。
 人間の都合より"馬のため"が優先ですので、理解してあげてください。

■ 馬の近くに行くとき
 馬に近づくときは、馬の斜め前から近づくのが無難です。正面に立つと嫌がる馬もいます。
 決して、後ろから近づいてはいけません。馬の視界は広いですが、真後ろは見えません。真後ろで何かを感じると、蹴ってくる場合があります。
 馬の尻尾の付け根にリボンなどが付いている場合があります。これは特に蹴る癖がある馬ですので、自分が乗っていても乗っていなくても、そういう馬の後ろには近づかないようにしましょう。

 馬によっては、噛む癖があったりします。そうでなくても、何か餌がもらえると思って噛んでくる場合があります。馬を撫でる時など、手を近づける時は気を付けてください。手以外も噛まれる可能性はあるので気を付けてください。

 このほか、馬の近くに行ったときには、馬に足を踏まれないように、馬の頭や体で押されて倒れないように、など気を付けましょう。

■ 馬の耳
 馬の耳が前を向いているときは興味を示しているときです。
 逆に耳を後ろに向けていたり、伏せていたりするときは、機嫌が悪かったり、何かに警戒しているときですので、注意しましょう。

※ 以下では、ウェスタンスタイルでの外乗を想定しています。ブリティッシュスタイルでもほぼ同じですが、若干違う部分もありますので、ブリティッシュスタイルの騎乗をする場合は注意してください。

■ 馬に乗るとき
 馬には、常に馬の左から乗ります。
 通常、台があるので、台に乗って、手綱を持ちます。
 馬の左側の鐙に左足をかけて、自転車に跨って乗るように右足を馬のお尻の上を回して乗ります。このとき、馬のお尻などを蹴らないように気を付けましょう。
 鐙の長さが長い時は調整します。つま先立ちになってしまうようなときは、長いので短くしましょう。外乗のときなどは、スタッフに言えば短くしてくれます。左右で鐙の長さが違うときも直してもらいましょう。
 止まった状態で鐙を踏んで立ったり座ったりしてみるのもいいです。

■ 馬に乗っているとき
 猫背や前かがみなどにならないように、胸を張って、背筋を伸ばして姿勢よく乗ります。背筋は常に重力と反対方向に伸ばしている感じです。
 例えば、坂道を降りる時は身体をちょっと後ろに倒し(Lean back)、坂道を上るときはちょっと前に体を倒します(Lean forward)。つまり、地面に対して垂直ではありません。

 手綱は引っ張らず、かといって緩めすぎず、張った状態を保って持ちます。ウェスタンスタイルの外乗の場合は張った状態から軽く緩めるくらいがいいです。止まった状態で肘が体の横にあるのが通常の位置です。
 これらに合わせて、手綱を持つ位置を調整しましょう。
 歩いていると馬の頭が動きますので、それに合わせて肘を前後に動かして状態を保ちます。
 乗っているときは常に手綱を持っているようにしましょう。
 馬が後ろに下がってしまうときは手綱を引っ張りすぎですので、緩めてあげましょう。

 外乗では、ふつう他の馬に勝手についていくのであまりコントロールは気にする必要はありませんが、以下の点は注意しましょう
・ 前の馬に近づきすぎない、離れすぎない
・ 前の馬が通ったルートから外れすぎない

 前の馬から離れると、早いペースで歩き出(速歩)したり、走り出(駈歩)して前の馬に近づこうとする場合があります。前の馬に追いつけば止まりますので、焦らず、身体を起こしておきましょう。

 草や木などの障害物があった場合、馬は自分の分しか避けません。
 人間の体(足、上半身、頭)は馬体よりはみ出しているので、ぶつかりそうな場合は気を付けましょう。膝辺りや頭は要注意です。特に馬より低い高さの棒などには、人間も気付きにくく、膝などをぶつけてしまう可能性が高いので、周囲の状況は常に確認しましょう。

■ 前に進むとき
 ウェスタンスタイルの外乗の場合、手綱を前に出すだけで馬が動き出すことが多いです。それか両足で馬のおなかを軽く押してあげます。膝から下の足の内側で押す感じです。
 動かない時はさらに強めに押します。それでも動かない時は足を浮かせて勢いを付けて押したり、踵を使って強く蹴ってみてください。手綱は緩めておきます。

■ 曲がるとき
 外乗で乗る馬はウェスタンスタイルのことが多いので、手綱を行きたい側に持って行って、行きたい方向とは反対側の手綱が馬の首に当たるようにします。

■ 止まるとき
 手綱を軽く優しく引っ張ります。ガツンと引っ張ると馬が嫌がることがあるので、じわじわーっと引く感じで手綱を引きます。
 止まってくれない場合、手綱を引く力を強くして、止まるまで手綱を引きます。諦めないでください。

■ 道草を食う
 馬によっては、草を見つけると食べ始めることがありますが、できるだけ食べさせないようにしましょう。食べそうになったら手綱を引いて、草から離したり、おなかを蹴って前に進ませましょう。
 道草を食べさせたり、馬の好きなようにさせていると、この人の言うことは聞かなくてもいいんだと馬に思われてしまい、馬がますます乗り手の言うことをきかなくなってきます。

■ 馬が暴れたり走り出したりしたら
 馬が何かに驚いたりして、暴れて跳ねたり、走り出したりすることがあるかもしれません。怖くても体を起こして、重力と反対方向に背筋を伸ばしておきましょう。
 怖くなって馬の首にしがみつこうとすると、確実に落馬します。どんなに怖くても体を起こして、胸を張ってください。

 走り出してしまったら、手綱を引いて、頑張って止めます。諦めないでください。走り出した後、急に止まることもありますので、注意が必要ですが、残念ながらこういうときは落馬してしまうことが多いです。

■ 馬が急に座りだしたり、地面に倒れ込んだりしたら
 座りそうになるのに気づいたら、手綱を引っ張ってさせないのが一番です。それでも座っちゃったり、地面に横になったりしてしまったら、すぐ馬から離れましょう。
 離れても手綱は持っていてください。万一、走り出して、抑えきれないようでしたら、手綱を離していいです。

■ 落馬するとき
 バランスを崩したなどで、不幸にして落馬してしまうときは、少なくとも足かお尻が地面に着くまでは手綱を持っているようにしてください。そうすれば、頭から落ちないので、大怪我をする可能性が小さくなります。
 通常、人間が落馬すると馬は止まりますので、手綱を持ったままで、立ち上がってください。痛くて立ち上がれない時は無理しないで、そのままの姿勢でガイドが来るまで待っていてください。
 落馬した後に馬が走り出した場合は、引きずられて危ないので、手綱を離していいです。

■ 馬を褒める時
 馬が言うことを聞いてくれた時や、馬から降りる時には、馬を褒めてあげてください。
 首の横あたりを手でポンポンとたたいてあげます。
 このように褒めてあげることを愛撫と言います。

■ 馬から降りる時
 手綱を軽く引いて、馬を止めます。
 前かがみになっておなかを鞍に付けるようにして、右足を鐙から外して、右足を後ろのから左方向に回します。このとき、上から見ると人間と馬が直角になって、おなかが鞍に乗っている状態になります。
 手は鞍をつかんでいる感じですが、左手は手綱も持っていてください。
 次に、左足を鐙から外して、馬体に沿ってストンと下に降りて地面に足を付きます。
 勢いよく下に降りると、足を痛めたり、後ろに倒れたりするので、手でコントロールしながらゆっくり降りてください。

■ 馬に舐められないように
 馬は乗り手を見て、楽をしたり、好きにしようとしたりすることがあります。乗り手の命令を聞くまで命令を出し続ける、馬の好き勝手させないなどが大事です。例えば、前に進もうと思っても動いてくれなかったら、あきらめずに動くまで強く押したりキックします。
 また、道草を食おうとしたら、手綱を引いて、させないようにします。
馬が自分の好きなようにできない、乗り手の命令に従わなきゃいけないと感じると、舐められることが減ります。

■ 馬の歩き方
 馬の歩き方には大きく3つあります。
常歩(なみあし) Walk
 ポクポク歩く歩き方です。初心者向けの外乗では基本的にこれだけです。
速歩(はやあし) Trot
 ポッポッポッポッと2拍子で早歩きしている感じの歩き方です。座っていると人間のお尻が当たって跳ねます。跳ね続けるとバランスを崩して落馬する場合がありますので、気を付けてください。お尻が当たって痛い場合は、鐙に立ってお尻を浮かせます(慣れないと難しいですが)。前の馬と間が空いたときなどにこれで前の馬に近づこうとすることがあります。
 ちなみに、ずっと座ったままの速歩は英語でSitting Trot といいます。1歩ごとに立って座ってを繰り返す速歩を軽速歩 Posting Trot と言います。
駈歩(かけあし) Canter
 タタタンタタタンと三拍子で走ります。暴れん坊将軍が海岸で走っているアレです。慣れないとバランスを崩して落馬する場合がありますので、体を起こしているように心がけましょう。
 初心者向けの外乗会ではまずしませんが、何かに驚いて走り出したときや、坂道を上るときに前の馬に追いつこうとするときなどにこの走り方になることがあります。
 駈歩の速いバージョンは襲歩(しゅうほ) Gallop です。競馬などでの走り方で、通常はほとんどしません。
 並足、早足/速足、駈足/駆足は馬の用語としては間違いですので気を付けてください。

■ 馬用語日英対訳
馬(うま, Uma) Horse
鞍(くら, Kura) Saddle
鐙(あぶみ, Abumi) Stirrup
手綱(たづな, Tazuna) Rein(s)
銜(はみ, Hami) Bit
頭絡(とうらく, To-raku) Bridle
拍車(はくしゃ, Hakusha) Spur
腹帯(はらおび, Haraobi) Girth
無口(むくち, Mukuchi) Halter
鞭(むち, Muchi) Whip, Crop (短鞭)
扶助(ふじょ, Fujo) Aid (脚、座骨、舌鼓、声、鞭、拍車など)

常歩(なみあし, NamiAshi) Walk
速歩(はやあし, HayaAshi) Trot
- 正反撞(せいはんどう, SeiHando)の速歩 Sitting Trot、軽速歩(けいはやあし, KeiHayaAshi) Posting Trot
- ウェスタンでは Jog
駈歩(かけあし, KakeAshi) Canter、反対駈歩はCross Canter
襲歩(しゅうほ, ShuHo) Gallo
停止(ていし, Teishi) Halt
蛇乗り(へびのり, HebiNori) Serpentine、三彎曲の蛇乗り(San WanKyoku no HebiNori) Three Loop Serpentine

馬術(ばじゅつ, Bajutsu) Equestrian
乗馬(じょうば, Joba) Horseback Riding
外乗(がいじょう, Gaijo) Horse Trekking/ Horse Trails

厩舎(きゅうしゃ, Kyusha) Stable
馬房(ばぼう, Babo) Stall
蹄跡(ていせき, Teiseki) Rail (埒を意味する場合もある)
馬場(ばば, Baba) Arena

放牧(ほうぼく, Hoboku) Turn out
調馬索(ちょうばさく, Chobasaku) Lunging

■ おまけ
 馬術部がある会社があります。小さいころから馬に乗っていた人や、学生馬術を頑張ってきた人、社会人になってきた人など、馬術部の構成員はいろいろです。これらの馬術部の多くは 日本社会人団体馬術連盟 に加盟して、大会(全日本実業団障害馬術大会や全日本社会人馬術選手権大会など)へ出場したり、講習会へ参加したり、ボランティア活動などを行っています。

 どんな会社に馬術部があるのか興味がある方は、加盟団体一覧 を参照してください。会社に馬術部がない場合、創部しちゃうってのも手です。



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