【読書メモ】「知」のソフトウェア
この情報社会、「知識」を使えるように、賢くなりたいですよね。
人間もソフトウェアも同じで、賢くなるには(性能を出すには)情報の入出力方法が重要です。
この本はそういった、知識の入れ方/使い方のフレームワークを整理した良本です。
以下、読書メモです。
はじめに
人はソフトウェアとは違います。
どういう性能で、何に興味があるか、どういう性格かは人によって違います。
だから世の中にはたくさんのインプット、アウトプットの方法があふれています。
すなわち、一般的にこういう方法がいい!という方法はない、と、切り捨てています。
なのでやり方は試行錯誤するしかないのですが、やっていたらきりがないので、他人の知識を取り入れることは時短におすすめだよ、と至極まっとうなことをおっしゃっています。
その文脈で、この書籍は作者(立花隆さん)の独自の方法を述べているにすぎないのですが、方法に納得できる背景は多いのでとても参考になります。
情報のインプット
【新聞/雑誌】
新聞/雑誌はニュースのトピックを客観的に整理するのに最適な媒体です。
この本の著者がやっているのは、単純に新聞を切り抜き、分類し、時系列ごとにすくらっブックに張っていくというものです。
作業に時間をかけるのではなく(作業自体が目的化してしまうため)、あくまでどういう目的の場合、どういう分類にするのかを考える時間を多く割くべき、としています。
【検索/コンピュータ】
PCを使用するのは、検索にとても効率的です。
今日だとgoogleでとても効率よく情報が手に入ります。
ただ、物理媒体で仕入れた情報をわざわざPCにアーカイブするのは時間の無駄としています。
書籍としてあるなら読んだほうが相当早いです。人間の処理能力をなめちゃいけません。
【入門書/専門書】
領域について知りたい場合は入門書がとても大事です。
ざっと読んでみて、読みやすく、基本概念が分かり、全体像が俯瞰でき、中級上級になるにはどうすればいいのかが書かれている本がよい入門書となります。
さらに主張が偏らないように、異なる著者の本を複数読んでおくことで、領域のおおよそがつかめるようになります。
分からないところはどんどん飛ばします。分からないということは、単純にその本の説明が不足しているからであり、中級本や他の入門書で理解できる個所が必ずあるからです。
一つの本を3回読むより、同じ領域の他の入門書3冊を1回ずつ読むほうが3倍効率的です。
できれば、入門書を読んだその場で参考文献に記載されている中級書もざっとみておくことで、自分がどこまでわからないか、またその領域の奥深さを理解することができます。
専門誌の内容が理解できるようになったら完璧。
その道のプロと難なく話すことができます。
ただ、その時点で知識量はプロと同じ!と思いあがらないようにしないといけません。どの領域も、プロは思っているよりすごいのです。
【官庁情報/企業情報】
官庁は紛れもなく、国でトップの水準の質の高い情報が大量に存在する機関です。
一般に公開しないような情報も多く扱っています。
情報を集約しているということは、その情報の流し方によって世の中の影響を変えることができます。
官庁は世論を作り出すために、ある程度バイアスをかけた情報をマスコミに流すことが日常茶飯事です。
農林水産省が米価を抑制したい場合は、米価を抑制する論拠となる論文をいくつかピックアップしてまとめてマスコミに流せばいいのです。(論文なんてものは、正反対の主張をする論文は山ほどあるものです。)
同じ理由で、大企業や団体の機関紙なんかも、利潤を追求しているのでバイアスがかかりやすいです。
一方、銀行と証券会社系は、その業態上、幅広く領域を見なければならないので、比較的バイアスのない優秀な情報がそろっていることが多いそうです。
この本ではほかに、NRI Searchをお勧めしています。
【インタビュー】
何を聞きたいのかを明確に筋道立てて準備し、どのように質問したら知りたいことが知れるのかという想像力を働かすことが大事だとしています。
語るに足る人と思われるよう、丁寧にズバリと、わからないところをわからないまましないように質問することが大事です。
情報のアウトプット
アウトプットはインプットに対して無意識で発するものなので、仕組みなど理解できません。
意識はブラックボックスなので、頭の中で思い描いていることをメモに残して複数人で構造化していくKJ法を著者はディスっています。
そんなことしたら能率がガタ落ちしてしまうのです。
二人三脚は一人で走るより遅いのです。
良いアウトプットは良質のインプットを大量にしていれば自然とできるものだ、としています。
本書の筆者は、自分の頭を整理し、アウトプットのための素材として材料メモや年表、チャートの一枚ぺらを作ったりしています。
そのようにしてできたアウトプットが読みづらい場合は、不要な表現が多いか、説明の順序が良くない場合がほとんどです。
論理的にすっとわかりやすい順序で記載する意識をしましょう。
批判的思考
よく言われる大事なことですが、その情報が一次情報なのか、二次情報なのか、はたまたさらに低い次元の情報なのか、それがどこの出自なのかを知ることは重要です。
ガセネタは世の中に想像以上に多いものです。
意図をもってそういう情報を流す人が山ほどいます。それは公共の権威ある組織や人であっても同様です。
激しく同意なのですが、筆者が最も伝えたいこととして、自分の中で情報をどう扱うのか、何が正しいのかの軸を持つことが、最も重要であるとして締めています。
サポート頂けたことは、巡り巡って必ず、あなたに届きます!