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自助会と私〜自分の歴史を音楽と振り返る(16)

これまでに語ってきた通り、私には「精神疾患」「性的マイノリティ」ということにより生きづらさを感じ、その結果小学校の時に思い描いていたような、仕事をして給料を稼いで結婚して子供と幸せに暮らすような人生を送ることは無くなった。しかし、そんな私が今もこうして生きているのには、いくつかの自助会との出会いがある。今回はそのことを改めて語ってみたい。
そして音楽は、そんな話題に合いそうな曲をセレクトした。


私が思う自助会の特徴と効果

私はこれまで、精神障害のある人の集まり、LGBTQで精神疾患・発達障害のある人の集まり、不登校・ひきこもりの当事者・経験者の集まり、などに参加してきた。またいくつか運営にも携わってきた。今も精神障害当事者会ポルケの事務局として活動させていただいている。

さて、自助会(自助グループ)とは、調べると以下のように記載されていた。

同じ問題をかかえる人たちが集まり、相互理解や支援をし合うグループ。

交通被害者やアルコールや薬物などの依存症のひとたち、犯罪被害者など同じ問題をかかえる人たちが自発的に集まり、問題を分かち合い理解し、問題を乗り越えるために支えあうのが目的のグループです。

同じ問題をかかえているひたたちが対等な立場で話ができるため、参加者は孤立感を軽減されたり、安心して感情を吐露して気持ちを整理したり、グループの人が回復していくのをみて希望を持つことができたりと様々な効果が期待できます。

e-ヘルスネットより

これを踏まえて、私は自助会の効果を以下のように考えている。

  1. 自己開示によるストレス軽減:安心して自分を出せる場だからこそ

  2. 孤立感の軽減:「私ひとりじゃないんだ」という想いや共感

  3. 自己肯定感の醸成:「このままの私でここにいていいんだ」という安心感

  4. 異なる価値観との接触:フラットな立場だから異なる意見を受け入れやすい

  5. 回復への希望:自分や、同じ困難を抱える人がモデルケースとなり希望になる

自助会内でも、なかなか人に言いづらいことを言うのは、とても勇気がいることだ。ただ自助会では、「言いたくないことは無理して言わなくてもいい」としているところがほとんどだ。会の雰囲気にまずは身を委ねて、それでなんとなく「ちょっと言ってみようかな」と思うようになれば、言ってもいいかもしれない。

そして、いくつかの自助会に参加して感じたのは、一般的な社会に比べて、他のマイノリティ性に対して尊重しようという姿勢が高いという点だ。例えば、精神障害・発達障害の自助会におけるLGBTQへの尊重や、ひきこもりの当事者会における精神障害・発達障害への尊重などだ(それらのマイノリティ性が重なりやすいということもあるだろうけど)。実際に私は精神障害に関する自助会で自分がゲイであることをカミングアウトしたことがあるが、幸運なことなのか、これまでに直接非難されるようなことはなかった。

苦手な人がいたら〜私の自助会とのスタンス

ただ、人と人が交差する場である以上、相性というものが必ず存在する。参加したいけれど、どうしても苦手な人がその場にいるから行きたいけれど行けない、ということもあるだろう。マイノリティ性の高い=狭い業界でそうなると、自分にとってのせっかくの居場所が無くなる。それだけでなく、その会やその人物の影響力が大きければ大きいほど、他の当事者会や当事者向けのイベントにも繋がっていることが多いため、他のイベントにも気軽に参加できるものが少なくなっていく。そしてますます孤独だと感じてしまうのだ。私にもそんな経験がある。

果たして、どうすればいいのだろうか。
私が今思い浮かぶものをは以下並べてみる。

  • ある程度時間をおけば平気になるかも

  • 独りというのも、たまには悪くないかも

  • 自分達で新しく居場所を作るのもいいかも

  • 自分か相手の体調が悪くてそう思ったのかも

  • ためしにもう一度会ってみたら意外と平気かも

  • 自分にとって居心地のいい自助会が他にあるかも

  • 苦手なのは仕方ないと諦めたらすんなりといくかも

  • 自助会の主催者に相談してみたら配慮してくれるかも

  • 同じような孤独を感じてる人は実は独りじゃないのかも

  • 精神疾患やセクマイではない他の趣味で探すのもアリかも

  • 誰かに打ち明けたら楽になって何か新しい考えが浮かぶかも

自助会を構成するのは「人」であり、そのため相性がある。また「人」である以上、万能ではない。ただ「人」だから、永遠に変わらないということもない。

今の自分の体調や気分や状況を俯瞰的にモニタリングして、相手とのスタンス(距離)を模索しながらやっていく。というのが、今私が考える関わりなのかもしれない。

B'z「HOME」

さて、このテーマに添える音楽の話をしたい。まず1つ目は以前も紹介したB'z「HOME」だ。
ラストのサビの歌詞にはこうある。

言葉ひとつ足りないぐらいで 笑顔ひとつ忘れただけで
ほんの少しのすれ違いだけで 全部あきらめてしまうのか
愛されるばかりが能じゃないだろう
さあ見つけるんだ 僕たちの home

HOME 歌詞より

この曲は自分の誕生日である1998年7月8日にリリースされた。
最近この曲を聴いて、まさしく「居場所」のことを言っていると感じた。
多少言葉が足りないぐらいで、すれ違っただけで全部あきらめてしまうことに待ったをかけるのは、自分の白黒思考に対するアンチテーゼだ。
コロナ禍で緊急事態宣言がかかり外出禁止令が出された頃、B'zはこの曲をリモートでアンサンブルして話題になったのも記憶に新しい。

小泉今日子「My Sweet Home」

2曲目は小泉今日子「My  Sweet Home」がすぐに浮かんだ。1994年2月リリース。山口智子×布施博×野際陽子の中学受験ドラマ「スウィート・ホーム」主題歌。自分がストレスから中学受験を直前で断念し不登校になったぐらいに放映していたので、ドラマはよく観ていた。作曲は小林武史。実父を亡くした実体験をもとにキョンキョンが作詞した。

大好きだった背中を思い出して
大きな声で一人泣いたの
大切な心の中の My Sweet Home
遠くで抱きしめていて

My Sweet Home 歌詞より

今回この曲の歌詞を検索したとき、自分の幼い頃の記憶を思い出しては、胸がいっぱいになって、切なさで痛くなった。でも、心の中に家があるということは、これからもずっとその家はあるのだろう。そう思い、少し安心した。

MY LITTLE LOVER「Hello, Again〜昔からある場所〜」

そして3曲目はこの曲。1995年8月にリリースされた、通称マイラバの3枚目のシングルである。マイラバは先述の小林武史による女性ボーカルと男性ギターの2人組ユニット(のちに小林が加入したり色々と変遷する)。この曲はマイラバ最大のヒット曲で、180万枚を超え年間ランキングでもベスト10に入った。

歌詞は先述の「My  Sweet Home」と同じく、記憶の中でずっと二人は生きて行けるというフレーズが印象的。個人的にはサビ前の以下の歌詞が自分に投影される。

少しのリグレットと罪を包みこんで
泣かないことを誓ったまま時は過ぎ
痛む心に気が付かずに僕は一人になった

Hello, again 〜昔からある場所〜 歌詞より

サウンドにも触れておきたい。AメロBメロの素朴な雰囲気がサビ前でドラマティックに変化、サビは切ないメロディーがakkoの凛としたボーカルとマッチする。このサビに合う青い空と青い海、白い雲といった光景はMVでもそうだがこの曲のイメージとして染み付いている。


という感じ。
何か参考になれば嬉しいが、白黒思考気味で人間関係を築くのが得意な方ではない自分が、大分偉そうに語ってしまったかもしれない。それはどうか一個人の戯れだと思ってさらっと流してもらえたらと思う。

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