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完全自力!株式会社オンライン設立(前編)

 皆さん、こんにちは! 創業伝の髙橋 規尊です。

 久々の投稿になりますが、いろいろと検証したいことがあり、この度、完全自力で株式会社を設立しました。今後、株式会社を設立される皆様の参考になればと、私が実際に行った手続きをシェアします。

1.株式会社の設立手段

 創業支援に携わる中では、法人設立の手段には大きく分けて3つの選択肢があるとしており、メリット・デメリット含めて次の通りです。

図2

 会社設立時は、少しでも支出は抑えたいものです。でも、会社設立登記手続きって煩雑な気がします。そこで、お勧めなのは「Webサービス活用」です。中でも、会計ソフト会社が提供するサービスは、経理でも使用するものですし、ちょうど良いでしょう。
◆マネーフォワード 会社設立
◆会社設立 freee
◆弥生のかんたん会社設立

 完全自力設立と比較するため、「マネーフォワード 会社設立」を試しに使ってみましたが、法人設立登記の専門知識が無くても、簡単に必要書類を作れて、設立手続きを進めることができます。

 資金面に余裕がある方、設立登記手続きの手間暇を避けたい方、種類株式発行や現物出資など特殊な事項がある場合などは専門家を活用すると良いでしょう。

 一方で、私がチャレンジした完全自力設立はと言うと・・・

図1

 それは何故か?
 とにかく煩雑で面倒だからです!

 私のように、創業支援に活かせて、実体験でものを言いたい人間でない限り、会社設立登記ノウハウを身につけた所で何の役にも立ちません。そんなことより、さっさと会社作って、事業展開を始める方がよっぽど効率的です。

 とは言え、少しでも資金を節約したい方や、完全自力設立をどう進めたのか気になる方のために、私が実際に行った手続きをこれから書き連ねてまいります。

2.株式会社設立の手順

 株式会社設立の手順を大まかに分けると、次のステップになります。

図3

 今回シェアするプロセスは『代表一人の会社の場合』です。近年、整備されてきているオンライン手続きを活用しました。私が設立登記を進める中で移動したのは、公証役場1回、銀行1回、法務局2回のみです。
※複数人が出資する場合、現物出資がある場合など、多少異なる部分がありますので、ご留意ください。

 とは言え、オンライン手続きで必要な「電子署名」、並びに法務省提供の「申請用総合ソフト」は、操作環境や操作方法が理解しやすいかというと、必ずしもそうではないです。

 専門家の方や利用頻度が高い方でない限り、諸機関に行って手続きをする方が結果的に早いのではないかと思ったりします。

※本手続きの詳細は、2020年12月時点のものです。

STEP0:情報収集

 予備知識があるとは言え、手続き実務の知識をアップデートしました。参照した書籍は次の通りです。

①『一番わかる会社設立と運営のしかた』中野裕哲著 西東社
②『自分で出来る!法人設立実践マニュアル』安部高樹監 三修社
③『株式会社のつくり方と運営 '19~'20年版』小谷羊太・板倉はるみ・佐藤善恵 他著 成美堂出版
④『株式会社をつくるならこの1冊』河野順一著 自由国民社

 そして、法務局のHPには、株式会社設立登記申請書の様式や記載例が掲載されています。

 一方で、私のような一人会社を設立する方のために、法務省のHPには一人会社設立登記の完全オンライン申請の案内があります。

 上述の書籍は、発行年月日から、オンライン申請についての情報が乏しかったため、法務省の案内をメインに、上述の書籍は、サブ的に参照しながら手続きを進めました。

STEP1:会社の基本事項の決定

 法務省の案内の「3添付書面情報の添付」を見ると、「発起人の同意書」「設立時取締役選任及び本店所在地決議書」が必要とあります。

 上述した参考書籍等を基に、1文書にまとめられそうなので、定款に関わる事項を含めて「発起人決定書」として作成しました。発起人決定書に記載した事項は次の通りです。

【発起人決定書の記載事項】
1 商号
2 事業目的
3 発行株式総数
4 設立時の発行株式数と発行価額
5 出資金
6 発行株式の引受先
7 出資金の払込先
8 本店所在地
9 設立時取締役ならびに設立時代表取締役
(本来、記載が不要な事項があるかもしれません)

※このあたり、Webサービス活用なら何も考えなくて済みます。

STEP2:定款の作成・認証(電子公証)

 定款は、法務省の案内の「一人会社添付書面作成例」や上述した参考書籍等を基に、自身に合った良いとこ取りで作成しました。

 書籍掲載のサンプルを基に加筆修正した感じですが、記載の良し悪し、要項の必要不要などの判断が難しく、それなりに労力を要します。
※Webサービス活用なら簡単だし、十分です。

 私は、設立登記時の印紙代を節約できる「電子定款」にしました。電子定款等の作成、設立登記オンライン申請でも必要な「電子署名」を次のツールを活用しています。
※Webサービス活用なら、電子定款化に少しコストを要しますが、結果的に早いし、得だと思います。

【電子署名で使用した物】
①マイナンバーカード(公的個人認証サービス
②ICカードリーダー/ライター「PaSoRi RC-S380(ソニー社)」
③Adobe Acrobat DC(動画制作でAdobe CC使っているので)
④PC
※上記は、電子署名を行う装備の一例ですが、電子署名が使えない場合は、Webサービスや専門家の活用で電子定款化して、オフライン申請が望ましいでしょう。
※電子署名の印影は、デフォルトから名前表記のものに変更しておくと良いかもです。

ちなみに、Adobe Acrobat DCを用いた電子署名は、
「ツール」→「証明書」→「電子署名」で行ってます。

 定款の準備ができたら、公証役場に認証を受けに行くのですが、最寄りの公証役場HPからリンクされている下記の日本公証人連合会HPの記載に基づき、事前に連絡します。

 私が行った定款認証のプロセスです。
1.電話で最寄りの公証役場へ連絡
2.次の必要書類をメールで送付
  A.定款案(電子署名前のワードファイル版)
  B.実質的支配者となるべき者の申告書(株式会社用)
  C.個人実印の印鑑証明書(コンビニで入手)
  D.身分証明書
3.電話で公証役場と定款内容の調整
4.確定した定款に電子署名を付与する
5.定款認証のために公証役場に往訪する日時の予約
6.申請用総合ソフトで「電子公証」を申請
7.電子署名を付与した実質的支配者となるべき者の申告書を公証役場へメール提出(「電子公証」の申請手続きを終えた旨も伝える)
8.次の書類等を持参して公証役場に往訪
  A.電子定款を印刷した物(1部)
  B.個人印の印鑑証明書(コンビニで入手)
  C.身分証明書
  D.個人実印
9.認証手続きと認証後書類等を受け取り、完了(所要時間約10分程度)

 上記プロセスの内、「6.申請用総合ソフトで「電子公証」を申請」について、手順を書き残しておきます。

6.申請用総合ソフトで「電子公証」を申請するプロセス

 電子定款の認証申請は「電子公証」です。「商業・法人登記」ではないので、注意が必要です。申請用総合ソフトの「電子公証」の操作手引書の内、「第2 申請データを作成・送信する」を見ながら手続きを進めました。

申請用総合ソフトの「申請書作成」から「電子公証」の「電磁的記録の認証の嘱託【署名要】」を選択します。

スクリーンショット 2021-01-01 141727

件名は任意に決め、操作手引書に基づき、嘱託人情報、実質的支配者、公証人氏名を入力します。
※私は、はしごだかの「髙」を使っているのですが、本システムでは使用できませんでした。本システム利用時は「高」を使ってますが、定款等は「髙」を使ったままで手続きを完了しています。
※法務局名、公証役場名の決定を押さないと、次の項目が選択できない仕様です。

スクリーンショット 2021-01-01 144427加工

「チェック」→「完了」
「ファイル添付」→「ファイル追加」で、電子署名済みの定款ファイルを追加します。
※定款のファイル名を全角なら15文字、半角なら31文字以内に納めないと、後述する申請データ送信後、システム内で自動的に申請が「中止/却下」処理されます。
(私はこれで2回程差し戻されました(>_<) )

「電子署名」を付与します。
※私のように、マイナンバーを使った公的個人認証サービスで電子署名する場合、下記で必要になる「ICカードのアクセスパスワード」とは、「署名用の電子証明書」の6~16文字の暗証番号です。
(こういう所、表現を統一してほしい(>_<; ロックされる場合があるんだからなおさら!)

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※電子署名付与の段階で、ICカードリーダーとPCを接続したり、ICカードリーダーにマイナンバーカードを置いたりすると、下記のエラーが出てくる場合があります。その場合は、申請用総合ソフトを閉じて(終了して)、ICカードリーダー・PC・マイナンバーカードを接続したままで(もしくは接続し直した上で)、再度、申請用総合ソフトを立ち上げて手続きを進めると、上手くいきました。
(なんでやねん!と突っ込みたい(^^;) )

スクリーンショット 2021-01-01 154329

「申請データ送信」を行い、到達通知メールが届き、処理状況が審査中になったら、申請データが公証役場に届いたことになります。

 これで事前手続きが終了したので、公証役場へ往訪しての手続きは約10分程度で終わりました。一応、定款の謄本を2部入手して、総費用は「51,980円」でした。

 通常、定款の謄本1部を会社の控えとし、もう1部を設立登記時に法務局に提出するのですが、設立登記をオンライン申請すると、電子定款を電子データで提出するので、今の所、定款の謄本は2部とも手元に残っています。
(設立登記のオンライン申請だと、定款の謄本は1部で十分なのか?しばし様子見です)

STEP3:印鑑の作成

 会社設立のWebサービス活用だと、セットメニュー的に安価に購入できたりしますが、選べる材質が限定されたり、一部が天丸じゃなかったりします。

 私の場合、
◆最初だし、高いコストをかける必要性が低い
◆それでも、会社の顔になるものなので、そこそこのクオリティは欲しい
◆印鑑変更による印鑑登録のやり直しは面倒なので、できるだけ長持ちさせたい
ということから、次の構成にしました。

【印鑑構成】
◆法⼈印鑑セット(黒彩華、篆書体、ケース付)
 ・代表者印(丸天丸18mm)
 ・銀⾏印(丸天丸16.5mm)
 ・⾓印(⾓天丸21mm)
◆印袋3つ(念のため、持ち運び用に)

キャンペーン価格でもあったので、これで約19,000円です。
印鑑は人それぞれの好みだと思うので、参考までに。

STEP4:出資金の払込み

 インターネットバンキングである私個人の既存口座で処理しました。なお、本手続きは定款の認証日以降(同日はOK)である必要があります。その詳細手順は次の通りです。

【出資金の払込みプロセス】
1.銀行窓口へ行き、出資金額の出金と入金をしたい旨を伝える
2.ATMで出金し、即入金をする
(金融機関の皆様はこの手続きに不慣れなようで、管理職の方が出てこられて対応してくださいました(^^) )
3.以下の必要書類を用意する(下記①~③を1ファイルに集約)
  ①払込みのあったことを証する書面(電子署名を付与)
  ②口座情報(払込先金融機関名,口座名義人名)を示す書類
  ③入金日、入金額を示す書類

 ATMの入金記録だと、「ヨキンキ」と表示されるので、これで良いのか不安になりました。そこで、東京法務局の登記電話案内室にも確認した所、払込先金融機関名,口座名義人名,入金日、入金額を確認できれば良いようで、問題ないことが分かりました。

 「払込みのあったことを証する書面」は、法務省の案内の「3添付書面情報の添付」にある「添付書面の作成例」そのまま使ってます。

 また、入金日、入金額を示す書類は下記のような感じです。
(必要な所だけ抜粋してます。恥ずかしい所は網掛け(^^;) )

スクリーンショット 2020-12-03 234705(加工)

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 さて、STEP4まで進めてきました。分量が多くなったので、ここまでを前編とし、STEP5~7を後編で見ていきたいと思います。

クリエイター活動を通じて、将来を創り上げる創業者の皆様に貢献し続けるためにも、皆様のサポートを頂ければ幸いです!