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【特別無料公開】ユング心理学から見るBTS① 「7」の象徴性――『BTS、ユング、こころの地図』本文抜粋

ソロ活動始動で話題のBTS(防弾少年団)。その発表に際して公開された映像では、苦悩を打ち明けるメンバーたちの姿がファンの胸を打ち、世界中のメディアでも取り上げられるところとなりました。

そこで今回、「ソロ活動にいたるBTSの葛藤を予言していたかのよう」と話題の翻訳書『BTS、ユング、こころの地図』より本文の一部を特別に公開します。
本書はBTSのアルバム『MAP OF THE SOUL:7』にインスピレーションを与えたとされるユング派分析家による、アルバムの考察書にしてユング心理学の入門書です。

メンバーたちが友情タトゥーをいれたことでも注目を集める「7」という数字の持つ象徴性について、また、彼らの"第1章"を締めくくる曲となるはずだった「ON」に込められた意味について、ユング心理学の視点から見えてくるものとは――。


『BTS、ユング、こころの地図』書影


BTSと7

BTSが今作のタイトルを『MAP OF THE SOUL: 7』としたのは、少々意外だった。前作『MAP OF THE SOUL: PERSONA』の流れを汲んで、『MAP OF THE SOUL: SHADOW』か『MAP OF THE SOUL: EGO』のどちらかになると予想する人が多かったのだ。『MAP OF THE SOUL: 7』というタイトルは独創的であり、そして同時に意外性のあるものだった。

BTSが7という数を選んだことに関しては、様々な見方が可能だ。わかりやすい理由は、バンドのメンバーが7人だということや、彼らが7年間一緒に活動してきたということである。ただし、より大きな意味で考えてみても、7という数は象徴的だ。たとえば、1週間は7日ある。これは誰かが勝手に決めた数字ではない。この数字は聖書の記述に由来するもので、神は6日で世界を創造し、7日目に休息したとされている。7は物事を完成させる数なのだ。それは創造的な行為が完了し、とても大切な何かが成し遂げられて、いまは休息の時なのだという感覚を伝える数字である。いろいろな考え方があるとは思うが、今回のアルバムにかぎって言えば、BTSが何かを終えたことを示すもののように、私には思える。BTSは大いなる創造的な段階を完了したのだ。BTSは自らの仕事をやり遂げ、そしていま、それを振り返り、成し遂げたことを自ら称えようとしているのである。

素数としての7

また別の角度からの考えも浮かんでくる。7は素数だ。素数は1とそれ自体でしか割り切れない。このアルバムのタイトルは、BTSがひとつの存在であり、壊れることのないものだということを示している。BTSとは素数であり、彼らはグループを素数のような状態にするために懸命に努力してきたのだ。7人は一緒に生活し、起きている時間のほとんどを一緒に過ごし、同じ考え、音楽、生活スタイルなどに強く同一化している。ある意味では、BTSとは7つの(素早く)動くパーツで構成された、ひとつのパーソナリティだ。もちろん、それはいつまで続くものなのだろうかと思う人もいるだろう。メンバーが自分自身の、個としての人生を生きる必要を感じるようになって、それが終わりを迎えるのはいつのことなのか、と。その場合、7は 1+1+1+1+1+1+1となる。7というひとつのユニットが別れを告げ、おそらくその後、別のユニットとしてそれぞれの個人が再編成される日がやってくるのだろう。おそらく、グループの中のパーソナリティにより複雑で、より多くの特徴を持たせることのできる形に。けれども、BTSはグループとして、素数のようにひとつであるために懸命な努力を重ね、そしていま、これまでとは異なる未来をかすかに予期しつつも、それを祝っているのだ。

(「第1章 BTSと7」より)


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