星の味 ☆15 “壺のような日”|徳井いつこ
海が近づいてくると、すぐにわかる。大気中の光の量が増えてくる。あたりいちめん眩しくなる。
山が近づいてくると、すぐにわかる。雲が頭上をゆく。焚火の煙のようにすばやく流れる。
神戸で育った私は、海と山が近接している土地の特性を、からだで覚えた。雨が降る前は、海の匂いが濃厚になり、船の汽笛が大きく響いた。
六甲おろしと呼ばれる山風は、海から吹く風と違っていた。冬の颪は、子どもが手を広げて立つと、本当にもたれられるくらい強かった。
八木重吉のこんな詩を読むと、ああ懐かしい、