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【感想】過去からの弔鐘

 ローレンス・ブロック著、マット・スカダーものの1作目。
 警察官だった主人公が過去に自分がしてしまった行いに心を痛めつつ依頼された事件を解決していくハードボイルド小説。

 高潔すぎて近づきがたい硬さを持つハメットやチャンドラーやロスマクの主人公たちと違い、マット・スカダーは感情移入がしやすく一気読みしてしまった。

 その要因の一つに彼らほど女や酒や喧嘩に強くないというのがあげられる。また本が薄いのと登場人物が少なくストーリーが頭に入ってきやすい。

 訳者の田口俊樹さんの仕事のせいか作者の成熟した文体のせいかとても読みやすく、セリフが魅力的。

 性に対することがテーマになっていることが新鮮。今作は、幼くして異性の親を亡くした子どもがいささか屈折した成長をしながらも、幸せをつかもうとした矢先の事件であることが悲しい。
 
 マット・スカダーがラストの章で犯人に対して言うセリフが非情で、ただこんなことを言ったら自分もそれ以上に傷つくんだろうなと思うと胸が締め付けられた。

 マット・スカダーものをこれまで読んでこなかったことを幸せに思った。シリーズで17作あるらしいので一作ずつ楽しんで読みたいと思う。



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