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まちからお店を考える 後編

初めまして。沖縄・名護にある、まちの「お惣菜&コーヒー」のお店、sōenと申します。前半では、お店がある「地域共創型の公園 coconova」についてお話しをしました。後半はsōenについて、お話し出来ればと思います。
▼ 前半はこちら

● ここの場から飲食店を

前述した通り、公園を基にしたまちづくりのプロジェクトcoconovaが生まれました。僕達はcoconovaを開放しつつ次なる一歩として、来てもらう人をどう増やせるかを考えました。そこで生活のインフラ・飲食店です。この場所は、誰のための何のお店にするのが良いんだろう?スケルトンになった店舗予定の場所を見て考えました。

スケルトンになった外観

子供が買いに来るパーラーを創るのが良いんじゃ無いか?(パーラーは沖縄によくある軽食売店のこと)コーヒー屋さん。屋台をたくさん作る。タコス屋さん。公園だったらハンバーガー?色んなアイデアが飛び交いました。coconovaはまちに開かれた公園です。まちの人が喜ぶ、つまり客層を限定しないお店の在り方が最善だと考えを深めていきました。

● まちからお店を考える

ちょっと横道にそれますが、一般店なお店作りには、マーケットイン・プロダクトアウトという考え方が適応されます。
「マーケットイン」は、市場に合わせてお店を作るというやり方。企業がよく取り入れるいわゆる「マーケ」的なお店の作り方。利用者を考えてお店を作るので失敗が少なく、客観的にお店を作る事が出来ます。反面、情熱が宿りにくく、かつ利用者というより数字に標準が合う事も多い、血が通いにくい事が課題となります。
「プロダクトアウト」は、やりたい事や出来る事を先に考え、そこからどのように販売していくかを考えるやり方。プロダクトアウトは個人が取ることが多く、やりたい事にフォーカスしたお店を作ります。その点、熱のこもった良いお店が生まれる事も多々あります。しかし、利用者を置いてけぼりにする手法なので、廃業率も高いのがこの手法の課題です。

まちからお店を考えるという点からマーケットイン的にお店を考えましたが、次第にマーケットという言葉のドライさに違和感を感じました。来ている人たちの雰囲気や文化、数字には表れない血の通った人たちに目線を戻しました。マーケットではなく「まち(人)」インではなく「良くする」つまりマーケットインではなく「まちを良くする」。抽象的ではありますが、大きな考え方の違いがあります。幸い飲食店は、利用者の満足度が目の前で分かる健康的な事業です。良い事をしたらお店に足を運んでもらえる。満足すれば、また来てくれる。友達を連れてくる。次第に客足が増え、売上にもつながる。売上が上がればまた、良い事に挑戦出来る。良い事が出来ているかは、売上以上に「価値提供出来たか」という視点の変革です。働くスタッフの感度を育めば次第に結果に繋がってくる。売上が上がっても摩耗するだけで、やりがいを感じない職場なんて作る意味がない。ただ流行るだけで消費されるお店を作りたく無い。でもエゴイスティックで排他的なお店は作りたくない。僕達はまちに良いお店を作ろう。

●まちの「お惣菜&コーヒー」のお店

sōenは公園(まち)に開かれたお店として、多種多様な人が、多様なシーンで使えるお店を目指しました。子供から大人、ランチや家に持ち帰って食べる時、地元の日常利用から観光客の一時的な利用など。ジャンルも限定しない在り方を模索しました。そこで「お惣菜」というアイデアに辿りつきました。「お惣菜」はおかず全般のことを指す言葉で、かつ多くの種類が並んでいるのを想像しますよね。色んなジャンルを内包し、趣味嗜好が違う人たちが使えるお店を目指します。また地元沖縄の食材や料理を取り入れることで、外から来た人にも「このまち」を楽しんでもらう。複数の種類があることで、日常利用が出来るお店として毎日来ても飽きず、色んなシーンで活用出来るお店を想定しています。

例えばママさんが来て今日の晩御飯のおかずを探しにくる。パパと子供はハンバーグ、ママは自分のためにカラフルなサラダを買って帰る。ついでに明日のお弁当のおかずを。そんな自由に好みに合わせた使い方が出来る「お惣菜」を提供しています。地域の人の日常使いから、観光客がこのまちを知るきっかけを作れるお店へ。

またsōenといえば「コーヒー」です。これは僕達の好みもすごく入ってしまうのですが・・笑コーヒーはたかが一杯の飲み物ですが、されど一杯。一杯の美味しいコーヒーのために、豊かな農園、生産者から流通者、ロースターがいて、バリスタが淹れる。それぞれがクオリティを維持して一杯のコーヒーを創りあげる。熱いロマンがあります。また、良いコーヒー屋には面白い人が集まります。良いコーヒー屋は良い文化を持っています。これから作っていく「良い場所」に良い文化を作るために、美味しいコーヒーは必要だなあと自然にアイデアに入り込んでいました。※コーヒーは東京のonibus coffeeのスペシャリティコーヒーを使用しています。そうしてまちの「お惣菜&コーヒー」のお店のアイデアが決まりました。

お店の方針は決まったので、名前を考えます。sōenのネーミングには、「惣菜」や「公園」を想起させるような言葉の響きが欲しいと思いました。ソウエンのソウは惣菜の「惣」、「創」「想」の意味、エンは公園の「園」に、調和するという意味で「円」を用いています。惣菜の「惣」という文字は、全てという意味があります。さまざまな事が上手く調和する場所として、創造的である場所として、想う場所として、sōen(ソウエン)と名付けました。

● sōen

まちの「お惣菜&コーヒー」のお店 sōenは、「まちに良いお店」をコンセプトに、お惣菜とコーヒーを中心に、多様なライフスタイルに合うお店を作ります。基本テイクアウトのスタンドですが、coconovaでイートイン出来る仕様となっております。常時8種の手作りお惣菜は、土地の食材や料理を取り入れつつ、和洋折衷ジャンルに捉われない料理を。また、コーヒースタンドとしてもスペシャリティコーヒーを中心に、地元の銘茶やクラフトジンジャーエール等、こちらも多様な好みに応えられるドリンクを提供しています。

● 4つの「まちに良い」

上記に加え、sōenは4つのまちに良いを叶えていく挑戦をしています。
①良いお店づくり
②暮らしが豊かになるお店
③まちのプレイヤーの拠点作り
④まちを良くする商品の創出

①良いお店づくり
言わずもがなですが、シンプルに良いお店を作る事。良いなあと思うお店を作る。美味しい、綺麗、雰囲気が良い、良い音楽・・・何はともあれ飲食店です。ハイクオリティで、かつ心が温まるような。行ってしまいたくなる、また行きたくなるお店を作る事。

②暮らしが豊かになるお店
売れる事だけが全てでは無いですよね。利用者が豊かになるお店。レシピや盛り付けなど、家で作る料理のアイデアになったり、暮らしをより丁寧にしたくなるような、お弁当の包み方だったり。もしかすると、帰り際の気の効いた一言かもしれませんし。店と関わると少しだけ豊かになるようなそんなお店。

③まちのプレイヤーの拠点作り
ここから少し具体的ですが、利用するのはお客さんだけではありません。お店の半分はシェアキッチンを設けています。まちのプレイヤーである事業者に、拠点となる場所を提供します。また、シェアキッチンは「週1マガリ店舗」として、週1でお店を持てるサービスをしています。将来お店を持ちたい人に。ポップアップ出店の次のステップとして。はたまた副業で週末お店をするスタイルに。お店の在り方はもっとまちに開いた形で、もっと自由に出来るはずです。共に良い文化を作っていける長期的なパートナーとして、関係を築いていければなと思っています。

④まちを良くする商品の創出
少し夢を語るのですが、、。沖縄は観光地としても有名です。しかし、一過性の消費的な観光が多く、循環が生まれていないのも事実です。その「観光」を作るために関わる人達は豊かになれているのだろうか?どこかに負担がかかった構造になっていないのだろうか?内側に暮らしてみて見えてくる風景があります。北部・名護のアイデンティティを表現した、名産品を作る。このまちの豊かな素材や生産者に負担のかからない継続的なやり方で、集まるプレイヤーが共同でプロジェクトを盛り立てて行く。まちぐるみのプロジェクトに仕立て、地元の大学生や企業が販促して行く。そして名産地としてお店に「観光」で来てもらう。観光客はcoconovaに出会い、普段の観光じゃ覗けない、まちの奥行きを感じる。そしてこのまちの魅力を知る。そんな場所になりたいと思っています。

● まちに良いお店

飲食店は、本来とてもクリエイティブな仕事です。しかし、職人的な文化もあり、柔軟では無い考え方も多くあります。サービスは画一的な事も多く、お客さんもサービス慣れをして、喜びを感じられない。もっと創造的になれる筈で、もっと豊かな仕事を生み出せる筈です。お店は、自分の足元だけ、遠くの景色を見るだけでは良くありません。もう少し足元から目線を上げ、まち(人)に視点を合わす。まちにいる人が豊かになる(もちろんそこで働く自分達も含めて)良い仕事を生み出す。そうすると仕事は本来の価値を取り戻し、きっと上手く良く。

一つ、お店のご紹介をします。(ずっとしていますが笑)
sōenではランチがあります。曲げわっぱ弁当にその日のお惣菜を詰めて、手間をかけて手拭いで丁寧に包みます。公園(coconova)のどこでも食事が出来、お客さんはテーブルや膝の上、畳の上に広げて召し上がります。

お弁当スタイルの曲げわっぱランチ
ある日の昼過ぎ
お惣菜の詰め合わせ・曲げわっぱ弁当

手拭いに包まれたお弁当は、誰かの手で包まれた事を感じます。そして食べ終わった時に「ご馳走様でした!」多くの方が挨拶をしてくださいます。人が感じられるデザインだからこそ、人間味のあるコミュニケーションが生まれました。学生生活を思い出す方や、お弁当に挑戦された方も居ます。チームメンバーの顔も晴れやかになり、次の「良い事」に挑戦します。そんなランチのご紹介です。効率化の真逆を行く挑戦ですが「良い事」と実感しています(恐れ多いですが・・・)。きっと僕達が挑戦すべき事はここにヒントがあって、この延長線に「まちに良いお店」があるんだなと感じております。これからもまち(人)に視点を合わせた、「良いこと」に挑戦するお店で在れるように楽しんで行けたらと思います。お付き合い大変有難うございました。

まちからお店を考える、そんなsōenのお話でした。

photo:Taisuke Kuriyama.Takumi Fukuyama.Mai Masubuchi.Erika Hirata.Hikaru Matsushita.

sōen
〒905-0011  沖縄県名護市宮里 1004番地 coconova 1F
▼Instagram

株式会社Social design
https://social-design.town/


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