戦う相手が違う!支援者の苦悩
羊の奇襲
とある動画に出会いました。古い記事に掲載された動画です。
襲撃された羊飼いの女性がとても気の毒。特に二度目の激突では頭を地面に叩きつけられ大怪我の恐れがあります。ドライバーはドイツ語でScheisse(シャイセ=くそっ)!と叫んで車を停めましたね。救助にあたってくれたと思いたい。
さて、状況を整理するとこうです。
・ 羊の群れに車が接近した
・ 犬が車に駆け寄って吠え始めた
・ パニックになった羊の群れの多くは路肩に逃げた
・ 一頭の羊が羊飼いに追突した
・ 地面に叩きつけられた羊飼いがのたうち回った
・ 落ち着いて膝をついた羊飼いに同じ羊が体当たりした
羊の群れの構成は、羊飼いと犬と羊です。犬は羊飼いの意向を汲んで群れの統制を取り、羊は吠える犬に従います。羊の群れは羊飼いを頂点としたヒエラルキー構造です。
ですが、羊も好きで従っているわけでなく、羊には羊のストレスがある。ストレスを貯める羊に、車の接近や大きな吠え声など追加のストレスでパニックに陥りました。事態を正確に理解できない羊は。群れを統制する羊飼いに八つ当たりしたのです。
羊に「戦う相手が違う!俺じゃない!」といっても羊には通じませんし、事態を俯瞰して理解する認知能力を持っているわけない。
羊にはいくら言っても仕方ありません。
支援員の苦悩
似たような場面は福祉の現場でも起こります。
例えば児童福祉。幼児の認知は未成熟だから事態の理解は難しい。なので親御さんも幼稚園・保育園の先生も「とりあえず謝る」場面がありますね。認知力が低いから、事態の収集を優先するのは仕方ありません。
認知力の不足や低下は他人事には出来ません。脳の外傷がきっかけの高次脳機能障害や加齢に伴う認知症は、全員に平等に与えられたリスクです。
認知の低下や歪みが強まると自律的な生活が困難になるため、医療福祉の支援が必要になります。逆に、低下や歪みの程度が軽いと支援など無く生活できますが、軽ければ良いわけではありません。
なぜなら認知が鈍ると無駄なストレスが増えるから。無駄なストレスで不満が募ると、無関係な人に当たる”羊化?”のリスクが増えてしまいます。
認知力低下は外傷や衰退以外にも、現実逃避でも起こります。認知すべきだけど一番考えたくないのが自分の現実。それに向き合って考えないと自分が何者かわからなくなる。それも認知力低下の要因です。
必要なのは適切なリハビリ。当たり散らす人には言っても仕方ありません。
「戦う相手が違う!俺じゃない!」と思いながら「とりあえず謝る」のが精神保健に携わる支援者の日常です。
そのストレスを適切に処理できないと支援者が燃え尽きてしまう。けれど組織長と支援者の関係は、羊と羊飼いの関係と違います。八つ当たりして気を休める程度の認知では仕事が務まりません。健全に認知する支援者組織で、適切かつ発展的な支援を持続可能にする仕組み作り、頑張らないとな。
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