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「近大に体操部を」創部に向け奮闘する理工学部生

 技の難しさと美しさで競うスポーツ、体操。日本はオリンピックや世界選手権でメダルを獲得する強豪国であり、世界的に有名な選手も多い。しかし、近畿大学には体操競技部がない。体操に興味があってもクラブがないなら仕方がないと諦める学生もいるだろう。私がその一人だ。でも今、体操部創設を目指してサークルをつくって活動する学生がいる。近畿大学理工学部物理学専攻の2年生、武井快地(たけい・かいち)さんだ。体操にかける思いを聞いた。【2年・坂東里美】
 

――なぜ体操サークルを作ろうと?

 小中学校と体操をやっていました。中学生の時に通っていた体操クラブが経営破綻でなくなり、体操から離れることになりました。もう一度やろうにも地元が愛知県の田舎で、男子6種目を指導できる人がいなかったので難しかったんです。大学生になり、何かに取り組む最後のチャンスだと思いました。後悔しない選択がしたかったので、もう一度体操に取り組むことにしました。

――体操競技を始めたきっかけは。 

 2012年のロンドンオリンピックの男子個人総合決勝で、内村航平さんが着地をピタリと止めたのを見てかっこいいなと思い、その2年後の小5の時に体操を始め、中1までやっていました。最初の2年は体を動かして楽しむコース、あとの1年は選手育成コースにいました。試合に出たこともありました。
 

――体操クラブがなくなり、完全に体操から離れていたんですか?

 趣味程度にやっていました。関西圏で最も大きな体操施設である(滋賀県の)栗東体育館を借りて練習することもありました。

――なぜ体操部のない近大に?

 物理学が学べ、体操部のある大学に入学したいと思っていましたが、受からなかったため、体操を諦めて近大に入学することになりました。

――体操サークルを始動させたのはいつ頃ですか?

 1年生だった2022年の秋から冬にかけてです。最初は僕一人でした。大学付近の体操クラブや、体操部のある東大阪市内の小中学校に連絡して体育館を使わせてもらえないかどうか、許可を求めていました。ほとんど断られましたが、諦めずに連絡を取り続けました。活動拠点を探すことに3か月以上費やして、昨年の春休みにようやく拠点が決まりました。6月に2年生の女の子がサークルに来てくれました。2人目のサークル員です。現在は6人います。男子4人、女子2人、マネージャーはいません。最初に来てくれた女の子の次に1年生が来てくれて、その次も、と続いていき、現在に至ります。

――現在の活動拠点は?

 大学の隣にある近畿大学附属高校の体操部、緑風冠高校(大阪府大東市)の体操部と共に、合わせて週2回練習をしています。サークル員がそれぞれやりたいことや課題、目標を持って活動しています。最初に来てくれた女の子が附属高校出身で、体操部の顧問とのつながりができ、合同練習をしていただけるようになりました。

――大会には出ているんですか?

 現時点で近大の公認団体ではないため出られないんです。公認団体になる申請をするには部員が10人必要なのですが、あと4人足りません。公認団体はまず「同好会」から始まります。同好会昇格の申請を行うには、部員数が最低10人必要。活動が正しいものかどうかなど、さまざまな条件があります。僕の在学中には、サークルを同好会にすることで精いっぱいかもしれないです。

――そのためにも部員集めを進めないといけないんですね。

 活動を知ってもらうため、SNSで発信しています。主にインスタグラム(@kindai_gymnastics)を運用しています。


――よく練習風景などを投稿していますよね。 

 開設当初は僕が動かしていたのですが、SNSの扱いに慣れていなくて。最初に来てくれた女の子はSNSの運用が上手で、最近は彼女にお願いしています。サークル員は得意な分野の役割を担っており、互いに助け合える良い関係を築けています。

――ストーリーや投稿の内容はどうやって決めているんですか?

 話し合っています。ストーリーに練習風景を載せると「いいね」やコメントなどの反応がもらえます。全国の大学体操部にも相互フォローをさせていただいています。滋賀の体育館に練習に行ったとき、自作の近大のTシャツを着ていたら声をかけていただけたんですよ。ここ最近でうれしかった出来事の一つです。大学の体操部は長い歴史があるところが多い中で、近大の体操サークルは新しい団体です。新興団体ということで、他大学体操部から注目を浴びているのかもしれません(笑)。大きい体育館へ練習に行くと、他大学の人との新しい出会いがあったり、声をかけてもらえたりと、いいことがあります。

――目標や意気込みを教えて下さい。

 体操に魅力を感じる人は多いと思います。僕のように体操をやりたくても、できなかった環境の人もいると思います。そういった人の元に体操を届けたい、もっと体操を普及させて気軽に取り組めるようなものにしたい。そのために公認団体となり、公式大会出場や大学公式SNSで宜伝していただけるようになれば、活動の展開につながると思っています。「新しい体操の団体」として関西から新しい風を巻き起こせるように、そして自分たちらしい体操を作っていけるように、頑張って活動していきます。