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【レビュー】インテリオールの新ルール3ヶ条 第5節 レアル・ソシエダ - レアル・マドリード

開幕から4試合を終え、ソシエダは現在1勝1分2敗。
結果もさることながら、内容も良くない。さらには怪我人が増えてきてしまっている。代表に招集されていた選手も多く、チームのコンディションは依然として不安が残る

そんな中で迎える、王者マドリーとの一戦。
ちなみに現在の順位はこんな感じ。

グーグル検索より


最悪だった前節ヘタフェ戦も良かったら



チームコンディション

  • 前節の試合でブライスが再び中足骨を骨折

  • トラオレは前十字靭帯断裂で今季絶望

  • 代表戦でオヤルサバルが捻挫

  • ザハリャンは引き続きお休み

過密日程はこれからだっていうのに…
不安だらけ

ちなみにマドリーも怪我人多数。


スターティングメンバー

スチッチと新加入のアゲルドが初スタメン。
ワントップにはサディクを起用。



試合結果

 0ー2

チームスタッツ

数字はFotMobより

相手陣内にかなり押し込んで戦えている。

シュートの位置も良い感じ。

青い方がソシエダ

個人スタッツ

データはOpta Analystによるもの

チャンス多くて内容もソシエダの方が良かったけど、結局勝つのはマドリー、とかいう理不尽にも慣れてきた。内容で勝っただけで全然満足できる



試合内容

ソシエダはローブロックを中心に、要所でハイプレスを織り交ぜるバランスの良い守備を設計。

ソシエダのローブロック

マドリーの中盤3人に対するソシエダの守備はマンツーマン。

久保とベッカーは中央へのパスを警戒。それに伴いマドリーの両SBは比較的フリー。

ギュレルにはセルヒオ・ゴメスがマークにあたり、バルベルデにはスビメンディが、モドリッチにはスチッチが対応する。久保とベッカーは内側に絞って、中央へのパスを警戒

ソシエダはローブロックでマドリーに前進を促す
マドリーが前進してくることで、ソシエダのディフェンスはコンパクトになってくる

マドリーの左最前線はエンバペとヴィニシウスが使うエリアなので、LSBメンディの上がりを警戒する必要はない。

マドリーの右サイドにはライン間で受けるのが上手いブライムとギュレルがいる。そのためソシエダはこのように、4-5-1でコンパクトにしてしまった方がライン間のスペースがせばまって都合が良い。エンバペやヴィニシウスにボールが渡ってしまった時に、サポートに行く味方の位置が近くなるというメリットもある。


ハイプレスに移行するトリガー

ローブロックからハイプレスへ移行するトリガーは3パターン。

1.マドリーのCBにバックパスが出された時
2.GKクルトワがビルドアップに参加している時

3.ネガトラ時(ボールをロストした瞬間)

前半20分のシーン。
マドリーがCBを経由してサイドを変えたところ。

縦に流れてくるヴィニシウスにはアランブルがぴったりマーク。裏のスペースを狙われた場合にはスベルディアが対応。

LSBメンディに渡ったところで久保が弱めのプレスをかける。縦はヴィニシウスのスペースなのでここからドリブルで前進されることはない。モドリッチとバルベルデが絡んでくるところだけ注意しておけば良い。

結局メンディは出すところが無く、モドリッチとパス交換した後、CBリュディガーにバックパス。(トリガー1)

メンディの体が後ろを向いたところでサディクがスタート。リュディガーにハイプレスを掛ける。サポートに向かうミリトンを狩るためにベッカーもスタート。ベッカーはシステム上もともと内側に絞っているので、しっかりミリトンの縦を切りながら最短距離でプレスに向かえる。

ミリトンが狙われていることに気付いてか、リュディガーはGKクルトワまで戻すことを選択。(トリガー2)

サディクはリュディガーへのパスコースを消しながら、そのままクルトワにもプレス。(サディクはディフェンス上手くなってますね。)
右サイドへのサポートに走るミリトンとカルバハルの体勢は悪いので、ベッカーとセルヒオ・ゴメスにがある。

セルヒオ・ゴメスが捨てたギュレルのマークにはアゲルドが

クルトワ → ミリトン → カルバハルと苦し紛れのパスが繋がる。後ろ向きのカルバハルに対してセルヒオ・ゴメスとベッカーの2人で挟んだところでハメ込み完成。完璧でした


このようなローブロック&ハイプレスには、前線の選手が試合中に休める時間が確保できるメリットもある。カウンター用に余力を残しておくことも出来るだろうし、試合終盤のガス欠による失点を減らすことも期待できる。



ソシエダのパス成功率の高さ

実は今シーズン最もパス成功率が高い試合だった。
なんと87%
あのマドリー相手に?とも思うが、これにはソシエダの良かった部分(後述)と、マドリーの悪かった部分が合わさっている。

マドリーの悪かった部分はプレスの強度。はっきり言ってゆるすぎる。
エンバペとヴィニシウスの守備での献身性が低いことに加え、それをカバーできるベリンガムやチュアメニ、カマヴィンガといった守備に奔走できる選手が怪我で欠場していたのも原因だろう。

そんなマドリーの内情もあって、近頃のソシエダが抱えるビルドアップの悩みを露呈することなく、中盤で容易に前を向いてボールをキープできた



続いて、ソシエダの良かった部分。
こちらは今節のマッチレビューの本題になるので少し前置きを。


ソシエダが抱えるビルドアップの悩み

・ 中盤3人の役割が決まりすぎている
・ 流動性に乏しい
・ 替えの利かない選手の存在

どれも説明不要かと思うのでさらりと。
ソシエダの中盤は逆三角形に配置されており、明確に役割分担されている。

23-24シーズンではこう。

緑で結んだ3人の絡みでサイドを崩す形が多い

もはやお決まりの形であり、どのチームも対策を講じやすかったと思う。
それでもなんとかなっていたのはやはりメリーノの存在が大きい。そして今夏そのメリーノが抜けたことで、何かしらのテコ入れは必須になっていた。

幸いだったのはセルヒオ・ゴメスが驚くほどフィットし、チームに流動性と攻撃のパターンを与えてくれたこと。とりあえずの希望が見えていた。

でもじゃあセルヒオ・ゴメスが怪我したらどうなるのか、スビメンディが休む時は誰が代役を務められるのかといった不安はついて回る。

その解決策を見たのがこのマドリー戦だった。



インテリオールの釣瓶つるべの動き

つるべというのは井戸にある水を汲む桶、またはその構造のことを指す。

釣瓶のイメージ画像

桶を引き上げるために、もう一方の紐を引き下げる。このような動きの連動性をサッカーでは釣瓶の動きという名で呼ぶ。

釣瓶の動き

リスク管理の面からこう連動するのが一般的というだけで、もちろん絶対ではない。強いチームは攻撃に人数をかける傾向にあり、SBを両方とも上げてしまうことも多々ある。


ソシエダはこの動きの連動性をインテリオールに組み込んだ


インテリオールの新ルール3ヶ条

約束事はシンプル

・ 2人のインテリオールのうち、上がるのはどちらか一方
・もう1人は連動して下りてきて、スビメンディと高さを揃える
・ サイドが被ったら、下りる人は逆サイドに

インテリオールの新ルール3ヶ条
スビメンディ役は入れ替わっても良いという隠しルールもある

これだけ。めちゃくちゃシンプル。
それでもメリットは多い。

・ ビルドアップに詰まっても最終ラインに下げなくて済む
・ 誰が出ているかに関わらず運用できる
・ 流動性とバランスが得られる
・ セルヒオ・ゴメスの自由に動くスタイルに味方が連動できる

セルヒオ・ゴメスの自由な動きは良い意味でバグ(イレギュラー要素)として働くので、スポイルしてしまうのはもったいない。ただある程度のルールを設けることで、他のプレイヤーの良さを出すことにも繋がっている。


具体的なシーンを見てみよう。

前半41分。
ハビ・ロペス視点でどうぞ。

スチッチが上がりセルヒオ・ゴメスが下がるのはルール通り
  1. スチッチが上がっているのを確認。

  2. つまりセルヒオ・ゴメスがスビメンディの横まで落ちてくる。

  3. となるとセルヒオ・ゴメスが狙いそうな左ハーフスペースが空いたまま。

  4. オーバーラップのタイミング。

というように応用しているようだ。


せっかくなのでまだまだ紹介。
前半33分のシーン。

直前のシーンでスビメンディがボールを持っていたため、スチッチはスビメンディと横並び

今度はセルヒオ・ゴメスが前、スチッチはルール通りスビメンディの横。
ここからセルヒオ・ゴメスが裏抜けを狙うも、マークが外しきれておらずパスは出ない。ハビ・ロペスはベッカーを選択。

セルヒオ・ゴメスが裏抜けしたことでマドリーのライン間にスペースが生まれる。ベッカーのカットイン。逆サイドのスチッチがモドリッチの背後を取りつつ、とても良いタイミングで上がってこれる。
通りこそしなかったが、ベッカーはやはりスチッチにスルーパスを送った。


まぁもうとにかくバランスが良い。
インテリオールの上下が連動するだけで、再現性のある新しいパターンがどんどん生まれてくる。



さらなる進化への可能性

インテリオールが釣瓶の動きをするシーンは、たぶん20回くらいあった。
その中で今後の進化を予感させるパターンがあったので最後にご紹介。

後半8分のシーン。
スビメンディがパスの出しどころに詰まり、隣りのセルヒオ・ゴメスに預ける。

スチッチが上がっているのでセルヒオ・ゴメスは下がっている。ここまではルール通り。

セルヒオ・ゴメスはスビメンディからの横パスを受けた後、久保に預けて自分は前に出ていく。これは相手のディフェンスを動かすという観点からも、とても良い動き。

となると連動してスチッチが下がってくるのがセオリーのところを…

代わりに久保が中盤の3人の間に入ってきて前進を手伝う
こうなるとスビメンディがサポートに行けば良いので、スチッチが下りてくる必要はなくなる。

久保はこの動きを、セルヒオ・ゴメスが縦に抜けていくタイミングから、一連の流れで行なっている。セルヒオ・ゴメスがマークを引き連れていくことでどこにスペースが生まれるのか、そしてそれをどう使うのかまでしっかりと意識して動いていることが見て取れる。

ちなみにマドリーはこの時間かなり後ろに重くなっており、プレスの出足も遅かった。久保はそこも踏まえてだろう、ワンタッチで前を向き、ドリブルで前進。逆サイドのベッカーまでパスを届けた。さすがすぎる。


といったような、3人の中盤+ときどき久保、というのが最終形になるような気がする。いや、ぜひそうなってほしい。
インテリオールの釣瓶の動きは他のチームも真似できるが、プラス1で絡めるプレイヤーはそうそういないはずだ。

周りがよく見えていて、判断が早い。ハイレベルな技術をも併せ持った久保なら器用にこなしてしまうに違いない。

ソシエダの新たな4−3−3に進化の余地は大いにある。



次節の見どころ

本当はもっともっと書きたいことはある。
アゲルドはキックもディフェンスも上手いけど、上半身の使い方が抜群で、ヨンマルくんとパチェコは一気に伸びるだろうなぁとか。
エンバペとの1対1にはこういう対策してたんだろうなぁとか。

でも仕方ない。
すぐにミッドウィーク開催の次節、マジョルカ戦が始まってしまうから。


とりあえずマジョルカ戦の見どころは、今節と違う中盤のメンツで再びインテリオールの釣瓶の動きが見れるのか、機能するのかというところ。


楽しみですね。


もうすぐ始まるELの初戦、ニースの情報をリサーチしてみました。
良かったら予習にどうぞ。

今節で、サディクちょっとやるじゃんと思った方にはこちらをオススメ。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




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