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【レビュー】 久保の超絶アシストまでの流れを振り返り 第36節 レアル・ソシエダ - バレンシア

今季のリーガも残すところあと3戦。ずっとキープしていた6位から7位へと落ちてしまった。

次節にベティス戦が控えている状況で、勝ちが必須となる一戦。


前節はこちら



コンディション

  • 前節から中2日の過密日程

  • ウーゴ・ドゥロとペペルが欠場

  • 直前の試合でベティスが引き分け

今節の過密日程に関してはどのチームもほぼ同条件。得点源のウーゴ・ドゥロ欠場はバレンシアには大きな痛手。
ベティスがラス・パルマスに引き分けたため、ソシエダは6位再浮上の大チャンス。ラス・パルマスがやる気に満ちてて、良い試合だったなぁ。


スターティングメンバー

4-3-3 対 4-4-2

ソシエダはいつもの4-3-3。前節バルサ戦から6人を入れ替えて臨んだ。


試合結果

スタッツ

交代

  • バレネチェア → ベッカー

  • ザハリャン → ブライス・メンデス

  • アンドレ・シルバ → オヤルサバル

  • オドリオソラ → トラオレ

  • ティアニー → アランブル

得点

  • アンドレ・シルバ (アシスト:久保)


試合内容

バレンシアの横スライド

バレンシアの守備時の形から見ていく。ソシエダのビルドアップに対して、バレンシアは4-4-2でマンマーク。

この時、左SHの16番がSBのオドリオソラをマークしているのに対し、右SHの11番ピーテルがマークしているのはSBのティアニーではない点に注目。

ボールから遠いサイドのSB(ティアニー)に対するマークを捨てている。これによりボールサイドのエリア(緑)で同数を実現。最終ラインはソシエダの3トップに対して数的優位の状況。

ここからパチェコを経由し、空いているティアニーに繋ぐとどうなるか。

右サイドのオドリオソラが空いている

まずザハリャンをマークしていた11番ピーテルがティアニーにプレス。ザハリャンには、トゥリエンテスをマークしていた6番ギジャモンが新たに付く。同様にメリーノに付いていた8番ハビ・ゲラがトゥリエンテスに流れ、オドリオソラに付いていた16番ディエゴ・ロペスがメリーノに付く。

このように中盤でひとつずつマークの受け渡し(スライド)をすることで、効率的にコンパクトな守備を実現している。バレンシアはこの動きがスムーズで早い。現在8位ながら、失点の少なさではリーグ4位なのも納得がいく。


中切り外嵌め

ちなみにこの後は中央へのパスコースを遮るような位置に立ち、縦パスを誘導する。

後ろ向きでボールを受けるバレネチェアにプレスをかけ、ここで奪う。いわゆる中切り外嵌め。奪ったら速攻に転じるというカウンタースタイル。
仮に縦ではなく、パチェコやレミーロを経由してまた右サイドに展開される場合には、同様の流れで再び横スライドを行う。

整理するとこうなる。

紫のエリアで奪いたい

バレンシアは守備のロジックがハッキリしている。


ソシエダの狙い

このような横スライドからの外嵌めはそう珍しいものではない。対処法はいくつかあり、そこにチームのカラーが出る。

たとえば、空いている方のSBまでロングボールで飛ばしてしまう方法。リーガではマドリーの試合でよく見られる。
あるいは中盤を飛ばして前線に送るという方法もある。こちらはマジョルカやヘタフェなんかが得意とする。コンパクトな守備だからこそ、ロングボールによる大きな展開にはスライドが追いつかなくなる。

今節のソシエダが採った戦術はこれとは逆。コンパクトな守備だからこそ、そこさえ突破できれば一気にチャンスが生まれるという考え方だ。

緑のエリアで崩したい

嵌め込みに来るポイントでプレスを剥がすという、 いわば正攻法。
両チームの思惑を確認したところで実際のシーンを見ていく。


得点シーン

場面はティアニーから両CBを経由し、オドリオソラへ渡ったところ。バレンシアの中盤はボールサイドにスライド中。

メリーノに付いていた16番がマークを変えるタイミングで、メリーノが縦に顔を出す斜めの動き。それを見て久保がスペースを作るため前に抜け出す。

メリーノが悪い体勢(たぶんわざと)でボールを持ったため、プレスが強まる。バレンシアはここが奪いどころ。久保への縦パスを左SBの20番が奪いにくる。ソシエダはこれをワンツーでプレス回避。

バレンシアのコンパクトさよ

密集地帯ながら前向きでボールを持てたことで、中を経由して逆サイドへ展開できた。ハーフレーンで受けたティアニーがさらに外のバレネチェアへ。
ちなみにここまで来ればソシエダの攻撃戦術はひとまず成功で、フィニッシュの形はバレネチェアに委ねるところが大きい。

アンドレ・シルバがニアに流れ、メリーノがファーに入ってくる。ティアニーのオーバーラップもあり、コンパクトなバレンシアは大外の久保をマークするには人が足りない。

バレネチェアのクロスは若干ずれたが、とにもかくにも久保の超絶アシストのおかげでゴールが生まれた。なおアンドレ・シルバはほぼ触るだけだったが、クロスが大きく流れても中で動き続けていた結果であり、ストライカーらしさを感じる。



今回ピックアップしたのはわずか1シーンだったが、これ以外にもサイドの面白い攻防がたくさんあった。コンパクトを好むバレンシアに対し、ソシエダがその上をいくことが多く、もっと点が入っててもおかしくなかった


両サイドバックの押し上げ

この試合とても目立っていたのが両サイドバックの押し上げだ。久保が持てばオドリオソラが外を猛ダッシュし、バレネチェアが持てばキーランが内側から追い抜く動きを見せる。
そのおかげでバレンシアにサイドで1対2を作らせないシーンが増え、久保バレネからの攻撃が多く生まれた

メリーノのゲームメイク

ブライス・メンデスがターンオーバーだったため、ザハリャンが攻撃の中心になるかと思いきや、違った。いつもは左のインテリオールにいるメリーノが右に入りゲームメイクを担った。驚いたのはロングボールの精度。いや、あんなにうまいとは。展開力もキープ力もあるし、ヘディングも強いし、スタミナも底知れない。ついでにケガもしない。ソシエダで最も代えが効かないのはメリーノなんじゃないかと思う。

久保のキレ

久しぶりにキレキレのドリブルを堪能させてもらった。調子が良さそうだ。
マッチアップしたフルキエ、D・ロペスいずれに対しても個での優位性を出せていた。やっぱり久保が活躍する試合がなにより楽しい


次節ベティス戦に向けて

ついに決戦
またしても中2日の過密日程なのがつらい。

完全アウェイ

前回ホームで対戦した第17節、ソシエダはベティスにチケットを販売しなかった。これには理由があるのだが、ベティスはその件により、今節ソシエダ側にアウェイ席のチケットを売らないようだ。
詳しくは書きたくないので割愛するが、とにかく完全アウェイとなる見通しだという。その次の最終節で、ベティスがマドリーとアウェイで戦うことを踏まえれば、ソシエダは引き分けでも良しといえる。もちろんソシエダが勝ってくれれば最高だし、そう願っている。


最後に。

今季ひそかにベティスの試合をよく見ていた。レベル的にソシエダと近いという偵察的な理由もあったが、それ以上にやはりイスコがいるというのが大きかった。今季29試合に出場し19回のMOMに選出。負けてもMOMはイスコ、という圧倒的な存在感を見るのが楽しみだった。

だが前節ラス・パルマス戦で負傷。左腓骨骨折で今季はもう出られない。ヨーロッパリーグ出場をかけた今年一番ともいえるビッグマッチを、こんなにも複雑な心境で見ることになるとは思わなかった。怪我は嫌だ。ベテランの怪我は特にだ。選手生命どうこうなんて話にならないことをただただ願う。


次節はこちら




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