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なぜ営業マンは「メールで連絡ください」と伝えても電話をしてくるのか?

こんにちは。マイノリティという会社で代表をやっている柳澤です。企業の営業・マーケティング支援やB2Bビジネスのマネタイズ・グロースを専門としています。

先日、「法人営業の教科書」というオンライン講座を、Udemyで公開しました。

これは僕がこれまでキーエンスやメルカリ、スマートニュースなどにおける新規事業での営業経験、独立後の企業支援などで培ってきたノウハウを詰め込んだ、まさに1冊の教科書のような講座になります。

「営業」という仕事の基礎から応用までを、ケーススタディを用いて1時間に凝縮して解説しています。

どんな人に役立つかというと、まずは20代〜30代の若手ビジネスパーソンです。営業として自分の目標が達成できなかったり、達成できない理由もわからなかったりする方には、ぜひご覧いただきたいです。

同時にこの講座では、営業という仕事の習熟度を4段階に分け、それぞれのステージに必要なスキルを定義づけています。

そのため、自分自身はトップセールスマンとして成果を出していて、これからはメンバーの営業力を上げたい営業マネージャーの方にもフィットすると思います。

また、スタートアップの経営者でこれからPMFを目指している方、特に経営者自ら営業をして初期のお客さんを獲得している場合にもお役立ていただけます。

ここで少し講座の内容についてご紹介します。

まずは多くの方が陥りがちな「間違いだらけの法人営業の常識」についてです。


営業にもある「北風と太陽の法則」

法人営業における常識とされることが、実はお客さんにとっては非常識な行為になってしまう。営業の現場でたびたび起きていることです。

僕もよく目にしてきました。「契約するまで帰らない」とか「キャンペーン中ですよ」とか「今契約したら値引きしますよ」という煽り文句で粘る人、いますよね。

これって全然買う気がないお客さんにも買ってもらいたいから無理やり売ろうとするわけですけど、結局は時間を浪費するだけで、いいことはないです。

もちろん上司から「何としてでも今日売ってこい」みたいなことを言われているんでしょうけれど、これって「北風と太陽の法則」と一緒で、売ろうとすればするほど、お客さんは買ってくれないんです。

あの寓話にもあるとおり、本当は太陽的なアプローチをしたほうが売れます。それなのに営業の常識・慣習みたいなものが染み付いているために、北風みたいにとにかく無理矢理に、居座ってでも売ろうとする人が多い。これはもったいないと思います。

具体例で考えてみましょう。

たとえばシンプルな「ウォーターサーバーの提案営業」だったらどうでしょうか。

そもそも興味を持っていない人に、「いつでも冷たい水が飲めますよ」「熱いお湯もすぐに出るんですよ」と言っても、これでは「たしかに便利だけれど、別に今じゃなくてもいいかな」と思われてしまいます。

「今月契約していただけるとギフトカードをプレゼントしますよ」なんて勧めてもあまり意味はありません。これが北風のアプローチです。

では太陽的なアプローチならどうするか。これをやるには、後述する「営業のレベル」を1段階上げる必要があります。具体的にはレベル2の「Solution Selling」というスキルを用いて、事前にお客さんを想定した仮説を考え、そこから誘導していきます。

出典:営業力 4つのステップ しげの_インサイドセールス

30代前半の独身男性がお客さんだったとすると、「毎朝忙しいだろうな」「独身だし、料理もほとんどしていないだろう」「30代で独身だから、経済力があって、わりとオンとオフの両方が充実していそうだ」「男性で30代なら、コーヒーは飲むんじゃないか」などと考えられます。

ここから「毎朝忙しいだろう」と「コーヒーをよく飲みそうだ」という仮説に的を絞って課題の解決提案をしていくことに決めたとしましょう。

すると、「毎朝朝食は食べていますか?」と聞いて、「家でつくるのは面倒だし、食べてもバナナやヨーグルトくらいです」という答えが返ってきたら、「忙しいし、料理はほとんどしていないだろう」という仮説の通りになります。

さらに「毎朝コーヒーは飲みますか?」と聞いて、「時間があるときは飲みますけれど、お湯を沸かすのが面倒なんですよね。」と答えが得られたら、「でも、できれば毎朝コーヒーくらいはゆっくり飲みたいですよね」と問いかける。

つまり、仮説を立てた上で、営業がストーリーを誘導しているわけです。そして、「ウォーターサーバーを導入すると、毎朝すぐに温かいコーヒーが飲めますよ」という提案につなげていくわけです。

要するにこちらの言いたいことを押し付けたり、機能を説明するだけではなく、仮説をもとにお客さんの課題解決に向かうんです。

お客さんからすれば自然に話しているように感じるでしょう。でもこれは仮説をもとに営業が誘導しているんです。話しているうちに、気がついたら営業マンが用意していたシナリオに乗っている。これが北風と太陽でいう太陽のアプローチです。

「電話で熱意は伝わる」は間違い

もう一つ、売り手と買い手の感じ方が大きく異なる行動があります。いまでも僕のトレーニング先でよく見られるのですが、「何度も連絡すれば熱意が伝わる」、「ちょっとしたことでも電話で連絡しなければ」と考えている人がいます。

みなさんも経験があるんじゃないでしょうか。営業の人ってメールで済むことでもやたらと電話してきますよね。

じつは僕もやっていました。20代で営業をやっていたときは、ずーっとお客さんに電話をかけ続けていました。なぜなら「お客さんは電話をした方が喜ぶ」とか、「電話のほうが気持ちが伝わる」と思い込んでいたからです。

それですごく怒られたエピソードがあります。

相手の方は全国展開をしている会社の副社長で、出張が多かったので社内にいないことがほとんど。なので、僕はことあるごとに彼の携帯に電話していたんですが、電話に出ていただけないことが多くて、折り返してもらうことも多かったです。

電話をしたタイミングが飛行機に乗る直前のこともありました。そんなに忙しい人だとわかっているのに、その状態でも僕はなぜかずっと電話をしていました。

そうしたら半年くらい経ったときに、「なんでいつも電話してくるんだ!電話じゃなくてメールで連絡してきなさい」と、電話越しにすごく強く叱られたんです。

僕はそのとき、怒られてはじめて「えっ、もしかして電話をするのって迷惑なのか…?」ということに気がつきました。なんで気づかないんだって思うかもしれませんが、社内では僕の周りの営業も常に電話をかけていて、「電話をかけたほうがお客さんは喜ぶだろう」と思い込んでいたからなんです。

その後、営業部門からマーケティング部門に異動して、自分が営業を受ける立場になったときに、「頻繁に電話をしてこられると迷惑だな」と身をもってわかりました。

令和の時代になっても、営業の人はガンガン電話をし続けているんですが、メールで連絡してもらったほうが早くレスポンスできることも多いです。当たり前のことだと思われるでしょうが、これは営業現場における典型的な間違いなんです。

でも、本当に不思議ですよね。

たとえば引っ越しをするときに不動産サイトに見積もりをお願いすると、いくら「メールで連絡をしてください」と言っても、必ず電話をしてくるじゃないですか。

それはもう、そういうアイデンティティとしか言いようがないです。「電話をしなければいけない」と体に染み付いているんです。

実際、僕も前に引っ越しをしたとき、「電話じゃなくてメールで連絡してください」とお願いしたら、1分後に電話をかけてきた会社がありました。面倒だからそのまま商談をしながら、「これだから電話がなくならないんだよな…」と反省しました。

スピードが早いということも1つの付加価値になり得るのも理解しつつ、コミュニケーションの手段としての電話は迷惑なことも多いです。「基本は必ず電話をする」という常識は考え直したほうがいいでしょう。

「ビジネスは合理的に意思決定される」は間違い

さきほど例に挙げたウォーターサーバーのような個人向け商材はともかく、BtoBにおける商品の購入は「合理的に意思決定される」と思っている人がほとんどでしょう。

つまり要件が当てはまっていたり、お客さんの課題を確実に解決できるプロダクトであれば、「合理的に考えて」導入が決まるはずだと。

じつはこれも勘違いです。

というか、半分正しくて半分正しくない。

そもそもお客さん自身が社内の課題を課題として認識しているとは限りません。目の前の業務が忙しくて課題を考えている余裕がない場合もありますし、もっと言うと、「あえて課題に目をつぶっている」こともあります。

たとえば、会社の立場で考えると営業から売り込まれた商品やサービスを導入したらメリットがある、という場合でも、対面に立っている担当者個人としては仕事が増えるだけで、かえって大変になる、みたいなことはよくあります。

そのため、会社にとっては明らかに費用対効果が高くて、やらない理由がないような状態であったとしても、失注することが実はかなりあるんです。その理由はシンプルに、商談をしている担当者個人にとってメリットがないからです。

結局、相手も人なので、その人が損をするのか、それとも得をするのか、みたいな損得勘定で動くことも多い。そのあたりを認識しておかないと「なんでだろう?」と理由がわからないまま失注することになります。

その場合に取るべき方法としてはいくつかあって、ひとつは担当者個人にとってのメリットを提示することです。たとえば「この商品を導入した他社の担当者さんはこんなふうに評価されていました」という話をするなど、その担当者個人の評価につながる一言を添えればいい。

必ずしも合理的ではないのですが、人が介在する限り、そういった要素は無視できないレベルで存在するので、相手の損得を考えることもすごく重要です。

営業は正論やスキルだけで上手くいくことはありません。対人間であることは常に意識しておきましょう。

ここまで、「間違いだらけの法人営業の常識」の一部を紹介してきました。が、他にもまだまだ間違いはあります。なんとなくやっていること、周りがやっているから当たり前だと思っていたこと、すべて本当に効果のある営業活動なのでしょうか。

そのあたりを「法人営業の教科書」ではわかりやすく動画で解説していますので、よかったらご覧いただければと思います。

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