(メモ)技術貿易収支にみる日本企業の技術力

「技術貿易」は、特許の使用料など技術の使用を外国企業にさせて使用料を受け取る(輸出)、外国の技術を利用して使用料を支払う(輸入)というサービス貿易を指す。これが黒字であるか赤字であるかということは、国内で生まれた技術の外国での通用度が、輸入技術以上のものとなっているかどうかを判定することができるわけで、日本企業の技術力を評価する一つのモノサシになるだろう。
「2021年科学技術研究調査」(総務省統計局)によると、2020年度の企業の技術輸出額は3兆1009億円(うち子会社向け2兆1789億円)、技術輸入額は5598億円となっている。技術貿易において、輸出は確かに子会社向け輸出が大きいことが要因だが、それを除いても1兆円弱の技術輸出がある。これは技術輸入額の倍近くあり、かなり大きい額であることわかる。
技術輸出のほとんどは製造業であり、3兆167億円と全体の97%を占めている。第3次産業で特許権料やロイヤリティー収入などが少ないのが日本の産業の弱点であるかもしれない。ただし、第3次産業でも技術貿易が赤字となっている主要産業はない。
ちなみに現在統計が見られる最も古い年度である1991年度は技術輸出が3705億円、技術輸入が3946億円と赤字であった。黒字に転換するのは1993年度からである。この黒字転換の大きな要因は日本企業の海外進出増加に伴う子会社への技術供与のライセンス料の増加だった。これは形を変えた直接投資収益と見做せないこともないし、また必ずしも市場での選択によって購入されたサービスでもなかったかもしれない。
しかし、技術貿易黒字の拡大は、その後も続き、現在は、上に見た通り親子会社間を除く取引でも黒字となった。このことは、日本の製造業を中心にした技術の実力が、国際標準的にもかなりの競争力を持った存在になっていることを示している。
忘れてならないのは、こうした技術貿易輸出は、技術の提供による相手国企業の労働者の搾取の一部であることだ。企業会計上は技術料(ロイヤリティー)の支払いは費用として計上されるが、本来の利潤の一部であり、技術提供という形態における資本の投下に対する利潤分配が本質である。

(メモ)技術の資本化



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