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[Climate Curation #122]気候変動の現実と対策:激化する豪雨から世界的な訴訟まで

以下の内容は2024年8月10日に配信したニュースレターClimate Curation #122と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて670名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは1,010名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,700人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】雨の降り方が昔と変わってきた? 温暖化で日本の河川や海に起こっていること [8/5 ウェザーニュース]

▶先日の木曜日晩に東京に滞在していた際、ゲリラ豪雨を体験しました。気候変動の影響を考えさせられる、印象に残る夏の出来事でした。

気温が高いほど大気中に含むことのできる水蒸気の量も増えるので、一度に降り得る雨の量が増大し、台風も強くなる可能性が高くなるので、大雨や短時間強雨などが増えます。今後も、雨の降り方が極端になる傾向は続くと予測されています。土砂災害や洪水浸水リスク、特に都市洪水リスクが増大します。豪雨による道路や鉄道、水道施設、通信施設、エネルギー施設などインフラの寸断が起これば、影響は甚大となります」「以前はまれだった大雨が、温暖化により変化しつつある気候下では、それなりの確率で生じる可能性が出てきています。梅雨期の豪雨で大きな災害を受けるのは九州や四国、本州でもせいぜい新潟・福島くらいまでが主だった印象があります。昨今のように秋田や山形県、あるいは北海道でも梅雨期に豪雨が降るようになったのは、やはり気候変動に伴う水循環の変化の反映でしょう」(東京大学大学院工学系研究科沖大幹教授)

【2】温暖化の果て…最高気温44度の未来か/格差と不平等と「気候正義」 先進国の責任は [8/8 報道1930| TBS NEWS DIG]

世界中の猛暑や海の温暖化の状況などを紹介しつつ、専門家のコメントを交えながら気候変動対策に真剣に取り組む必要性が語られています。

【番組ゲスト】江守正多氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授) / 藤野純一氏(地球環境戦略研究機関プログラムディレクター)/ 斎藤幸平氏(東京大学大学院准教授)

【3】若者16人、気候変動対策求め提訴 「環境も尊厳も守られる社会に」[8/6 朝日新聞🔏]

"深刻化する気候変動を食い止めようと、全国の15~29歳の若者16人が6日、大手電力など10社を相手取り、国際目標の達成を妨げるような温室効果ガス排出の差し止めを求めて、名古屋地裁に提訴した。"

気候変動訴訟の世界的傾向:2024年スナップショット[6/27 London School of Economics] 世界的に増えつつある気候訴訟。2023年には気候変動に関連する訴訟が233件提起されたことが報告されています。

image credit: London School of Economics

米モンタナ州ハワイ州での画期的な気候訴訟を率いた専門の弁護士事務所(Our Children’s Trust)も存在し、今後も気候訴訟の波が広がっていきそうです。参照:『Youth v Gov: 私たちの気候変動訴訟』(2020 Netflix)

【4】米大統領選挙の主要争点になりつつある気候変動対策? -

英語圏の米大統領線を巡る報道を眺めていると、カマラ・ハリス副大統領、そして民主党副大統領候補に選出されたティム・ウォルツ氏のこれまでの気候変動分野の実績、コミュニケーションスタイルに注目が集まり、気候変動対策に関わっている層からの熱狂的な支援の動きが窺えます。

特にティム・ウォルツ氏はミネソタ州知事時代に、2040年までに電力生成を炭素排出ゼロにすることを目標とする法律を制定し、州の公益事業者がクリーンエネルギーを利用することを義務付けたことなどが実績として挙げられています。また、気候変動問題を経済成長と雇用創出の機会として捉えることができる、効果的なコミュニケーターとしても評価されていると伝えられています。

*ティム・ウォルツ、州知事として気候変動を推進 - カマラ・ハリスの副大統領に選ばれたティム・ウォルツは、庶民的な人柄と中西部の田舎町にルーツを持つことで知られ、州における気候変動問題を高めてきた[8/6 New York Times🔏]

*ティム・ウォルツ、カマラ・ハリスの気候に関する信用を高める - 民主党のチケットが倍増[8/6 Heatmap News🔏]

*2024年を気候変動選挙として扱う - 米国の主要報道機関の政治デスクの編集者や記者が、ついに気候が重要であると判断した [8/1 Covering Climate Now]

【5】「エネルギー基本計画」経済3団体 原発の新増設など要望 [8/3 テレ朝news]

"総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第60回)に出席した経団連や経済同友会、日本商工会議所の経済3団体は、それぞれ安全性の認められた原発の再稼働や新設・増設などを計画に盛り込むよう要望しましたと伝えられています。

脱炭素に向けた化石燃料以外のエネルギーへのシフトという観点のほか、大量の電力を消費するAI(人工知能)の利用拡大で電力の需要は増加が見込まれているため、これらに対応するには原発の活用が不可欠としています。"

*「原発の活用拡大に道筋を」 エネルギー基本計画改定へ、関経連など5団体が意見書 [8/8 産経新聞]

"関西経済連合会など北陸や西日本の経済5団体は8日、令和6年度内に改定する政府の「エネルギー基本計画」に関し、原発を再生可能エネルギーと同等の主力電源に位置付け「最大限活用するとの方針を明確に示す必要がある」とした意見書を公表した。"

*アーカイブ動画:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第60回)[8/2 metichannnel審議会用 YouTube]

発表資料:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第60回会合) [8/2資源エネルギー庁]

【6】化石燃料発電量が最高更新、市場原理任せに限界 3分解説 [8/9 NIKKEI FT the World × NIKKEI PODCAST]

市場原理に任せていては世界的に再生エネに転換しないとする、英フィナンシャル・タイムズコメンテーター、マーティン・ウルフ氏の論考の要点がポットキャストで紹介されています。

【7】トヨタの牙城 タイ市場が切り崩される?中国EVの攻勢 [7/31 NHK]

中国EVメーカーがタイにおける日本車メーカーの長年の支配に挑戦している様子が詳しく紹介されています。BYDが新たに建設した工場は中国の積極的な拡大を象徴し、一方で日本企業の一部は規模縮小しているとのことです。2019年から2023年の4年間に日本車のシェアが10%減り、中国車が8%増えていることに驚きます。

【タイ新車販売 シェアの推移(出典:トヨタ タイ法人)】
2019年 87.1%(日本)2.6%(中国)
2023年 77.8%(日本)10.9%(中国)

【8】New York Climate Week [9/22-29 Organized by Climate Group]

9月後半の"国連ウィーク"に併せて開催されるNew York Climate Week(NYCW)の告知がスタート。猛暑や気候変動対策の影響や難しさを見て憂鬱な気持ちになりそうですが、こうした新しい取り組みに多くの人が世界中から集う様子からはとても刺激を受けます。CTVC / Sightline がNYCWと提携して公開しているイベントカレンダーには既に70近いイベントが登録されています。いつか東京でも"Tokyo Climate Week"が開催されることを期待しつつ🙂🤞、ご紹介です。

CTVC x NYCW 2024 Events Tracker : NYCW'24 EVENTS TRACKER

CTVC x NYCW 2024 Events Tracker : NYCW'24 EVENTS TRACKER(DeepLで日本語翻訳したページ)

【9】ベネディクト・カンバーバッチ、父親から子供たちへの謝罪の手紙を読む(Benedict Cumberbatch reads a letter of apology from a father to his children) [4/22 Letters Live]

ベネディクト・カンバーバッチが朗読する、父から子への痛切な手紙の動画をLinkedinのフィードで先日目にし、とても印象深かったのでご共有です。

気候変動に対処できなかった世界への謝罪として、父親が子供たちに宛てて綴った手紙。社会の無関心さを嘆きつつ、自身の努力を伝えています。見逃された機会の時代に生きることの困難さを認めながらも、変化を起こそうとした父親の思いが伝わってきます。*YouTubeページ(アプリ)で自動翻訳を設定すると日本語字幕付で視聴可能です:)

【10】【イベント開催ご報告】 ご案内していた気候テックとメディアのあり方に関してのイベントが8月7日に無事されました。会場+オンライン併せておよそ130名以上の方にご参加いただき、最前線で活躍されている専門家や記者のみなさまの知見、実践例、メッセージを伺うことができました。気候変動に対する解決策の一つとしての気候テックに対しての理解が深まり、今後の広がりにつながる機会になっていることを信じています。登壇、ご参加頂いた皆様、企画・運営してくださったMedia is Hopeさん、ありがとうございました🙇!

世界が注目する気候テック(Climate Tech) 〜日本のメディアはどう報じるべきかメディア関係者&専門家と探ります〜【メディア向け勉強会】』[主催:一般社団法人Media is Hope / 共催:日本環境ジャーナリストの会 / 株式会社ソーシャルカンパニー]

ハッシュタグ: #気候テックxメディア


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたらSNSなどで「いいね」や「シェア」をお願いします 🙇‍♂️🙂[ハッシュタグ: #ClimateCuration ]。みなさんのネットワークの中で、気候変動に関する情報を必要としている方に届くきっかけになれば幸いです🙂。


*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、どうぞよい連休をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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