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[Climate Curation #118]気候変動・エネルギーに関する議論・情報の"翻訳"

以下の内容は2024年7月6日に配信したニュースレターClimate Curation #118と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて640名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは1,000名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,700人]もよろしければぜひ覗いてみてください。


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】

【1】シェ・バスティーダ(Xiye Bastida)さん:メキシコ出身の22歳の環境保護活動家。ニューヨークの環境保護団体「リ・アース・イニシアティブ」の共同設立者、2023年のTIME100 Next選出

▶今週気になったのは偶然目にした以下のX投稿でした。気候変動に関することは複雑かつ難解と頻繁に感じる中、20代前半の若いリーダーが取り組んでいる役割として「翻訳家」との言葉があり、ニュースレターを配信する中で自分自身も微力ながら翻訳家として役にたてることがあるのでは、と思うきっかけを頂きました。以下は7/10-13に開催されたBloomberg Green Festivalのセッションでのメッセージ。X投稿の抜粋と、気になった発言の翻訳・要旨です。

"交渉の世界や複雑な世界的気候変動枠組みをナビゲートすることについて、「彼らは私たちに何が起こっているのかを知られたくないから、そのような言葉を選ぶのです。 活動家としての私たちの仕事は、翻訳者にもなることです。"

"気候交渉の言葉はとても難しいです。みなさんは「NCQG」という言葉の意味をご存知ですか?これは気候ファイナンスに関する言葉です。今後50年間、私たちが心配しなければならない最大の問題は、エネルギー転換、排出削減、気候災害後の損失と損害のために、北半球が南半球にどのように資金を提供するかということです。

NCQG は「New Collective Quantified Goal」の略語です(新規合同気候資金数値目標)。これらの言葉は、私たちに何が起こっているのかを知られたくないがために、そのような(難解な)言葉を選んでいます。したがって、活動家としての私たちの仕事は翻訳家でもあります

パリ協定とは何か、損失・損害基金とは何か、米国とは何かを理解するためには、何百もの文書を読まなければならないほどです。参入障壁の多いこれらの政府や専門機関・団体に対し、私たちが若者としてどう感じているか、コミュニティでどう感じているかを、街頭で起きている活動を翻訳することも、活動家としての私たちの仕事です。"

【2】第7次エネルギー基本計画・脱炭素・GX関連審議会情報ポータル(資料・動画アーカイブ・議事録等)

複雑で難解でかつ「見つけにくい情報」として最近感じる機会が多かったのが、気候変動対策、そして今年の5月から議論が始まっているエネルギー基本計画を巡る議論に関する情報です。経済産業省、資源エネルギー庁のホームページには確かに掲載されているものの、今ひとつ全体のスケジュール感や議論のポイントなどが見えにくい、と感じる方も多いのではないでしょうか。

環境NGO、シンクタンク、業界団体からも専門的な知見が盛り込まれた資料、提言、記事等が次々公開され、イベントやウェビナーなども最近頻繁に開催されていると感じます。こうした情報が包括的、網羅的に掲載されているページをなかなか見つけることができなかったこともあり、微力ながら個人でNotionというツールを活用して集約してみることにしました!

既にそうした集約サイトが存在しているようであれば、ぜひ教えていただけたらありがたく思います。まだ始めたばかりですが今後少しずつ随時情報を追記していけたらと思っております。

【3】1.5度目標と整合する野心的な2035年目標を日本政府に求める 提言

あまりメディアで大きく取り上げられる機会が少ないのでは、と感じているのが自然エネルギーの推進に取り組まれているシンクタンクや団体による提言です。経済成長と脱炭素のバランスの取れた議論・政策を進める上でも、参考になる視点や論点が数多く掲載されています。こうした情報も上記Notionページに掲載していく予定です。

【4】再エネ拠点周辺に工場など集積 効率活用へ政府検討 [7/12 日本経済新聞]

"政府は11日、再生可能エネルギーなど脱炭素電源の近くに工場やデータセンターを集める政策の検討を始めた。風力や原子力といった発電拠点の近くに産業が集まれば、生み出す電気を無駄なく使うことができる。今後、必要な支援策などを詰める。遠く離れた場所への送電や、電気から水素などへのエネルギー転換には損失が伴う。エネルギーの地産地消が進めばこういったロスを減らすことができる。同日開いた内閣官房の「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた専門家ワーキンググループ」で政府側が産業立地の論点を示した。"

*短い記事ではありますが、改めてこうした議論が行われていることを知り、内閣官房のホームページには50ページにもの資料が格納されていることを知りました。関連事業に携わる企業の担当者の方は当たり前のようにこうした情報にアクセスし5年後10年後のビジネス戦略に活かしているかもしれません。私にとってはあまり馴染みのなかったこともあり、こうした資料からいろいろな情報やヒントが得られ、とても有益と感じます。

第6回「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」 [7/11 内閣官房]

image credit:第6回「GX実現に向けた専門家ワーキンググループ」 [7/11 内閣官房]

【5】金融庁、排出量データの品質向上促す サステナ報告書 [7/9 日本経済新聞]

"金融庁は9日、企業の脱炭素などを金融サービスで支援する「サステナブルファイナンス」について、官民の取り組みや課題をまとめた報告書を公表した。企業と投資家の間では温暖化ガスなどの排出量データを経営指標や投資判断の材料として活用する動きが広がる。データの品質向上に向け、正確性を担保する仕組みを検討するよう促した。"

こちらも31ページのPDFファイルが閲覧可能です。

*「サステナブルファイナンス有識者会議第四次報告書」の公表について [7/9 金融庁]

image credit:「サステナブルファイナンス有識者会議第四次報告書」 [金融庁]

【6】スイス新興、米でCO2直接回収 27年に巨大施設稼働 [7/9 日本経済新聞]

炭素除去 / DAC(Direct Air Capture)関連の著名スタートアップであるクライムワークス社が大きく日経新聞で取り上げられてることに注目しました。欧米においても賛否両論ある技術ではあるものの、産業界・投資家からは大きな期待が高まっていて、国内と海外の温度差がとても大きい分野と感じつつも、今後の動向に注目しています。

*DACに関しては一般的なメディアで取り上げられる機会は少ないかも知れないものの、今年の1月からは経産省においてDACワーキンググループが設置され、既に6回もの議論が頻繁に行われています。

*DACワーキンググループ[経済産業省]

image credit: 第6回DACワーキンググループ[経済産業省]

【7】『グリーン戦争―気候変動の国際政治 [6/19 中公新書 / 上野貴弘 著] 』

6月22日配信のニュースレターでも紹介させていただいた書籍ですが、https://www.amazon.co.jp/dp/B0D78R3FDV/ref=tsm_1_fb_lkやっと読了しました。気候変動対策の壮大な話を外交交渉、貿易・補助金政策、金融、エネルギーなどの切り口で描かれた教科書な書籍という印象で、知っておくべき情報を知れた1冊でした。淡々と交渉や政策の史実が描かれていることもあり、読み通すのは途中苦戦する箇所もありました。ただ、上記のような目まぐるしく動いている気候・エネルギー政策の理解を深めるという意味では、このタイミングで読めて良かったと感じる一冊でした。

【8】世界平均気温、13カ月連続で過去最高 通年でも最高更新か=EU機関 [7/8 ロイター]

"欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス(C3S)」は8日に発表した月報で、先月は記録上最も暑い6月になったと明らかにした。月ごとの世界平均気温が観測史上最高となるのは、これで13カ月連続。

最新データでは、今年は年初から人為的な気候変動とエルニーニョ現象で記録的高温となる異常気象が続いており、一部の科学者は昨年を上回って記録上最も暑い年になる可能性があるとみている。バークレイ・アースの調査担当科学者ジーク・ハウスファーザー氏は「24年の気温が23年を上回り、1800年代半ばの地球表面温度観測開始以来最も高温の年になる可能性が約95%と推定される」と述べた。"

【9】脱炭素「見える化」に大型マネー 1~6月、スタートアップ調達ランキング アスエネ、6000社の排出分析 [7/12 日本経済新聞]

2024年上半期のスタートアップ調達額ランキング。上位15社のうちおよそ6〜7社が脱炭素、気候テック関連企業。かつて2022年春に『米ビジネス誌『FastCompany』が選ぶ「最も革新的な企業」の上位7位全てが気候テックスタートアップであることの意味』というブログ記事を書いたことを思い出します。日本においても広義の「気候テック」の躍進が感じられます。

欧米圏における気候テック業界の2024年上半期の振り返りレポートが最近いくつか公開されています。2022年ごろのバブルな状況からは落ち着きを見せつつあり、新しい技術やイノベーションに対する事業・投資意欲が引き続き感じられます。

*気候テックの現状 第2四半期 - Net Zero Insightsが四半期ごとに分析する、プライベートマーケットベンチャー分野におけるグローバルな資金調達とディール活動 [7/10 Net Insights]

【10】気候テックに関して登壇の機会を頂きました:)

*対面の現地参加はメディア関係者の方限定ですが、オンライン視聴はどなたでも無料でご参加いただけます。普段ポッドキャストや記事、ブログ、動画を通じて学びを頂いているジャーナリスト、専門家のみなさまとの議論を司会・進行させて頂ける機会、とても光栄で楽しみにしています。


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、どうぞよい連休をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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