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[Climate Curation #114]GXに向けた人材育成の課題と気候テック業界の動向

以下の内容は2024年6月15日に配信したニュースレターClimate Curation #114と同じ内容です。今後継続的にメールとして受信を希望をされる方はtheLetter 、或いは Linkedin経由で購読頂けたら幸いです🙂。毎週土曜日にメールボックスにお届けしています。

こんにちは。新しく登録してくださったみなさん、ありがとうございます。直近1週間の気候変動・脱炭素・Climate Tech関連の国内外のニュース・トピックをご紹介するニュースレターを配信している市川裕康と申します。継続して読んでくださっているみなさん、いつもありがとうございます。おかげさまで「Climate Curation」は現在theLetterにおいて630名を超える方に購読頂いてます。2023年秋にスタートしたLinkedinのニュースレターでは990名を超える方に登録いただき心より感謝いたします。*日本関連の英語記事をキュレーションしている英語版のJapan Climate Curation [購読者数約2,600人]もよろしければぜひ覗いてみてください。

日本に特化した英語でのニュースレター[Japan Climate Curation 最新号 - 6/4配信]


【⭐📰👀今週気になったニュース・トピックス】
【1】
GX、適材200万人不足 人材争奪で年収1000万円提示も [6/10 日本経済新聞]

今週最ももやっとしたニュースがこちら。脱炭素、GX人材に関しては「アナリスト、ストラテジスト、インベンター、コミュニケーター」などの分類で定義されたとはいうものの、今ひとつぼんやりしている印象があります。DX人材の場合はデータサイエンティストを育成し、関連するリスキリング・プログラムも次々開発され、予算も5年間で1兆円と、(課題がありながらも)活況を呈していることもあり、今後のイメージがとてもしにくいと感じています。欧米の状況を見ると気候テック(climatetech)のスタートアップへの転職の機会も通じて数多くの新しい求人が生まれているだけに、国内でのそうした業界がまだ小規模であり、既存の大企業が中心となって脱炭素を推進する場合に、どのような人材育成が可能なのか、とても気になります。

「脱炭素化社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)を担う人材の不足が顕著になっている。必要なスキルを備えた雇用は2035年までに200万人分以上生まれるとされるが適任者が足りていない。5月にはこれまで曖昧だったGX人材の定義が定められた。リスキリング(学び直し)を通じた人材育成は日本社会の喫緊の課題だ。

日本経済新聞
image credit: 日本経済新聞

【2】気候テック求人掲載サイト 『ClimateTech List https://www.climatetechlist.com』

image credit: Climate Tech List

欧米の気候テックスタートアップにおける求人情報を集約したサイトに「ClimateTech List」というサイトがあります。2024/6/15現在、5325社における37,452件もの求人情報が掲載されています。どの企業がどのような求人を過去も含め募集していたかを一覧できるサービスで、どのような業界で転職のチャンスがあるのかを伺う意味でとても参考になりそうです。

例えば炭素除去、Direct Air Capture(DAC)分野で注目を浴びているClimeworks社のページを閲覧すると、昨年末から常に90人以上の求人が掲載されていることが伺えます。いずれ国内でもこのようなサイトが生まれることを期待しています。

image credit: Climate Tech List

【3】三井住友銀・村田製など17社、CO2削減支援の新興に出資 [6/13 日本経済新聞]

国内気候テック、クライメートテックの躍進という意味において、二酸化炭素(CO2)排出量の算定・可視化の分野の国内最大手であるアスエネ社の総額42億円の調達に注目が集まりました。大企業の排出量開示の義務化、カーボンクレジット市場の今後の拡大を見据える中でますますの躍進が期待されていることと思います。また、積極的に「クライメートテック」分野のスタートアップであることも意識されていることもあり、「業界」の盛り上げ、という意味でもとても期待しています🚀🤞。

三井住友銀、ソニーらが42億円出資、大手6社と提携のアスエネ。「M&Aで国内気候テック再編」も視野 [6/14 Business Insider Japan]

【4】《2024年最新版》「カーボンクレジット市場カオスマップ」を公開 [6/12 株式会社ExRoad / PRTimes]

カーボンクレジット・排出量取引制度についての情報サービスを提供する株式会社ExRoadが「カーボンクレジット市場カオスマップ2024」を公開されました。とても網羅的に情報が分類・掲載され、こうした分野の盛り上がり、今後の成長期待が伺えます。

Image credit: 株式会社ExRoad

【5】暑さ指数の測定装置、独自に開発 熱中症対策にかける県職員の熱意 [6/15 朝日新聞]

埼玉県が熱中症の危険度を示す「暑さ指数」(WBGT)を国の測定地点より多くの場所で細かなデータを示すことに尽力する、ある県職員の方の取り組みについて紹介されています。国による測定地域は8箇所に対し、県独自の測定地域は28箇所となっていて、誰でも『県気候変動適応センター』のホームページ から閲覧が可能とのことです。こうした取り組みはぜひ他の地方自治体にも波及されること、期待しています🤞🚀。

*ちなみに『全国の暑さ指数(WBGT) - 環境省熱中症予防情報サイト』(環境省)の存在を私は知りませんでした。こちらも今年の夏に向けてとても参考になりそうです。

Image credit:『県気候変動適応センター』

【6】英労働党公約、与党延期のガソリン車禁止「30年に戻す」 [6/13 日本経済新聞]

今年は世界中で選挙が行われていますが、7月4日に投開票が予定されている英国総選挙の結果に注目です。現在の情勢分析によると労働党の勝利が予想されているだけに、一時35年に延期されていた「ガソリン車禁止」時期が2030年に戻される可能性もありそうです。

"英国の最大野党・労働党は13日、7月4日に投開票される総選挙の公約を発表した。ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する時期を2030年に戻すと記した。与党・保守党のスナク政権が35年に延期していた。

スナク政権は23年9月、それまで30年としてきたガソリン車などの新車販売の禁止を35年に延期した。世界に先んじて脱炭素の旗を振ってきた英国のグリーン政策の停滞を印象づけた。電動化で遅れた日本の自動車業界には安堵する声もあった。"

【7】グリーン活動家が英国選挙キャンペーンで戸別訪問中 - グリーンピースの新戦略は、気候変動が選挙の主要争点であることを立証するために、戸別訪問を行うことである [6/12 Financial Times]

グリーンピースは時に過激なアクティビズムのスタイルで批判されることも多いですが、今回の英国の総選挙においては「プロジェクト・クライメート・ボート」というキャンペーンを通じ、気候変動を選挙の重要な争点にすることを目指す戦略を取っているとして、ビジネス紙のフィナンシャルタイムズで報じられています。国民の気候変動への懸念は高いものの、インフレ、経済、医療、移民などの他の問題と比べ優先度は低いのが現状とのことです。キャンペーンでは、気候変動対策がもたらす地域・国への利益を強調し、有権者の支持を得ることを目標としていると伝えられています。

【8】【#国会中継】参議院 環境委員会 地球温暖化対策推進法で参考人質疑 ~令和6年6月6日~ [6/6 ニコニコニュース]

先日6月6日に参議院環境委員会で「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)の一部を改正する法律案」について参考人質疑が行われ、参議院公式ウェブサイトやYouTubeで公開されていることを先日目にしました。参考人としては以下の3名の有識者の方が発言されているにも関わらず、あまりSNSやメディアで報道されていることを目にすることがなかったことが気になりました。特に今年は第7次エネルギー基本計画の策定に向けて多くのこうした議論が行われていることもあり、意識的にこうした議論の経緯に注意を払ってみたいと思いました。参議院のウェブサイトを見てもなかなか情報を見つけにくいのですね。一覧の情報がまとまっているサイト等、もしご存じの方がいらしたら、教えていただけたら嬉しいです:)。

  • 高村ゆかり氏(東京大学未来ビジョン研究センター教授)

  • 山岸尚之氏(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン自然保護室長)

  • 深草亜悠美氏(認定NPO法人FoE Japan事務局次長)

【9】Speed & Scale トラッカーサイト: https://speedandscale.com/tracker/

2022年11月に邦訳版として出版された気候テックについての実践的な書籍、『Speed & Scale(スピード・アンド・スケール) 気候危機を解決するためのアクションプラン (日本経済新聞出版)』の著者らによる2024年版の進捗アップデートについて、5月上旬に公開されています。どの分野でどのような進捗があり、具体的な関連の報道やデータがふんだんに盛り込まれています。この書籍も国内ではあまり多くの方の目に触れてなさそうではありますが、気候変動対策のための実践書、特にアメリカでの動向について理解する上では参考になる点が多くありそうです。

Image credit: Speed & Scale

【10】【学費1300万円】急成長ベンチャーと激論する「名物授業」 [6/15 NewsPicks]

折に触れて紹介させていただいているポッドキャスト番組のグリーンビジネスの皆様による週末土曜日に配信される別番組「伝書鳩TV」において、MITにおけるディープテック、グリーンビジネス、気候テックについての最前線の様子が動画で紹介されています。

ものづくり、ハードウェア、研究開発型のスタートアップのエコシステムについてのレポートは日本でのGX分野スタートのスタートアップ育成という文脈でもとても示唆があるのでは、とも思える内容でした。有料コンテンツではあるものの、ぜひ視聴する「価値アリ」と思ったのでご紹介です🔥

🎟️追記:イベント情報

6/19開催: ESG TECH PITCH #9 - 生物多様性 & ネイチャーポジティブ編

いつもご一緒させていただいているCIC Tokyoの環境エネルギーイノベーションコミュニティ(E&Eコミュニティ)主催のイベントが開催されます。オンラインでも参加可能です。よろしければぜひご参加ください。生物多様性&ネイチャーポジティブ関連の注目のスタートアップ8社が登壇されます。


ここまでお読みいただきありがとうございました! 今回は以上となります。もしニュースレターが有益と感じられたら、同僚、ご友人、或いはSNS等でご興味ありそうな方に共有いただけたら嬉しいです🙂。

*気候変動、脱炭素、気候テック関連のリサーチ等にも力を入れています。海外の業界動向調査やコンサルティング等、お仕事のご相談・ご依頼がありましたら、どうぞお気軽にご連絡下さい。

では、どうぞよい週末をお過ごしください🙂🙋
市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー | www.socialcompany.org

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