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ソーシャルマーケティングで災害リスクの低い山林をつくる

こんにちは。ソマノベースという事業で「土砂災害による人的被害をゼロにする」ことを目指し活動している代表の奥川季花(おくがわ ときか)と申します。今回、ソーシャルマーケティングを研究されている瓜生原先生のご著書が出版されたということで、私が普段取り組んでいる活動を例に社会課題の解決に「ソーシャルマーケティング」がどう役立つのかについて感じていることをお話できればと思います。

1.東日本大震災の年に起きたもう一つの大災害

私は1995年に和歌山県の那智勝浦町という自然豊かな町で生まれました。和歌山県の南端に位置するその町は世界遺産に登録されている「熊野古道」や「那智の滝」、温泉、新鮮なマグロ等があり観光地として栄えました。

2011年3月、あの大きな被害を出した東日本大震災が起きた年、私は中学を卒業したばかりでした。この記事を読まれている皆さんにとっても印象深く記憶に刻まれている出来事かと思います。

しかしその年の9月、紀伊半島大水害と呼ばれる台風災害が、和歌山県をはじめとした地域で発生し、大きな被害が出たことを記憶している人はどれほどいるでしょうか。

私は高校に進学し、ようやく学校生活に馴染めてきた頃でした。台風による大雨で地元である那智勝浦町は土砂災害や浸水被害に遭い、多くの命がなくなりました。たくさんの方が家を失い、私自身も学校に通えず、水もない生活を送りました。このような状況になっていても、町のために高校生の私にできることは泥だらけになった道路に落ちている瓦礫を拾い、被害の大きかった地域の家の泥かきをすることくらいでした。

小さいころから何か自分の興味の向くことをしたいと思っていた私は、田舎町である地元が嫌いでした。「こんな町なんもないやん。早く出ていきたい。」そう思っていました。しかし被災した町を見たとき、「この町やこの町の人のためになることをしたい。田舎でも命があるだけで何でもできる。」そう思ったのを覚えています。

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2.ソーシャルマーケティングとの出会い

高校を卒業し、私は京都にある同志社大学の商学部に入学しました。その時に出会ったのがソーシャルマーケティングという分野を研究する瓜生原ゼミでした。ソーシャルマーケティングとは、社会課題の解決を目指し、人々の行動を好ましいものに変えることを目的とした学問です。瓜生原ゼミでは、研究はもちろん、社会課題の解決のために研究を活かすことを重視し、様々な実証実験を行っており、このゼミで学べば、「どうすれば地元に貢献できるかがわかるかもしれない」と思い、すぐに申し込みました。

瓜生原ゼミでは「臓器提供の意思表示率の向上」をテーマとして様々なアクションリサーチを行いました。その活動を通して、地元に活かせることはないかと興味深く学びました。

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3.地元のために土砂災害リスクの低い山林を作りたい

大学3年生のある日、地元を再び大きな台風が襲いました。人的被害はありませんでしたが、浸水したエリアもあり、京都にいる私は、また以前のような災害がおきないかと不安な一日を過ごしました。家族はもちろん、友人、そして思い出がその町に残っています。やはりあの時のような災害はもう2度と起きてほしくない。災害をなくそう。それが地元やそこに住む人、そこで育った人にとって一番必要な活動だ。そう思いました。

その日から、大学の授業をサボって、毎日のように図書館やカフェにこもり、豪雨災害について調べるようになりました。しかし、自然災害というものは自然を相手にする問題です。人が簡単に防げるものではないという現実を知りました。

そんな中、目に留まったのは、森林づくりによって土砂災害のリスクを下げることができるという内容の文献でした。森林は林業家と呼ばれる人達が仕事として山づくりをしています。(もちろん手を付けていない自然林もあります。)この山づくりを通してなら、人の力で災害を防ぐことができるのではないかと思ったのです。ただ、林業や災害と森林の関わりについての書籍やネットの情報はかなり少なく、また、専門用語が多く学ぶことがとても困難でした。そこで、林業家さんをはじめとする林業関係者や土砂災害に詳しい方にお話を聞きまわり、1から知識を身につけました。

そして社会人2年目の時に、土砂災害による人的被害をゼロにするため、「土砂災害リスクの低い山林を作る」ことをビジョンに掲げたソマノベースという事業を立ち上げました。

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4.ソーシャルマーケティングで災害リスクの低い山林を作る

林業は今、木材価格の低下などにより林業事業体の収益が減少傾向にあります。利益にならないからという理由で山林管理をしたくない、山林を手放したい山林所有者も増加しています。そのような理由で林業事業体は災害リスクの低い山林づくりに関心があっても(関心のない人ももちろんいます)そこにコストをかけられないという現状があります。

また、災害リスクを下げるための林道の作り方等(知識やノウハウ)を知らないという課題もあるということが事業体へのヒアリングでわかりました。

防災に関心があるのに行動に移せない。このような課題を解決するのに役立つのが、ソーシャルマーケティングです。彼らが行動できない原因を調査し、その要素をイベントや事業等の施策によって解消するのです。


私は、ソマノベースにおいて、防災に関心があるけれど出来ない事業体の方々にヒアリングを通して調査をしました。その原因が「防災に回す資金がないこと」と「防災に対する知識がないこと」であるとわかりました。よってこれらを解消すれば、事業体のみなさんは災害リスクの低い山林へ投資でき、知識に沿って作業ができるため、災害リスクの低い山林が増えるという仮説です。また、災害リスクを下げる作業をすればするほど利益に繋がり、利益がでるほど防災ができる、というサイクルを作れないかと模索しています。

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5.社会をよくする大きな一歩

この仮説を確かめ、防災に関心のある事業体のみなさんに行動に移していただくためには、私たちの事業が本当に彼らの課題を解決する施策になっているのかを検討し、PDCAを回していくことが重要です。

そしてこれは林業や防災だけではなく、世の中にあふれる社会課題すべてにおいて応用できます。社会課題という難しく、解決策が不確かなものものだからこそ、リサーチを行い、効果を検証していくことで、一歩ずつ解決に進んでいけるのだと思います。

みなさんも会社内や学校内、どこでもいいですし、どんな小さなことでもいいので、困っている人がいれば、彼ら・彼女らをどうすれば救えるのか考えてみてください。

その時に、その困りごとの原因は何で、どんな要素を取り除ければ解決できるのかを考えてみてください。それがソーシャルマーケティングの第一歩ですし、社会全体を良くする大事な行動だと思います。

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偉そうにつらつらと書きましたが、まだまだ未熟者ですので、行動とリサーチを積み重ねて、少しでも地元をよくするために頑張ります!!

ソーシャルマーケティングについて詳しく知りたい方はぜひ瓜生原先生のご著書をご覧ください。


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