見出し画像

本の虫

子どものころから本の虫だった。
そこに文字があれば追わずにはおれない。
天ぷらを揚げるのに床に敷いてある新聞だって、目に入るものなら読みたかった。

子どものころと今と。
確実に本に対する認識が変わってしまっている。
昔はなんだって読んだ。それが栄養になるとか頭が良くなるとかではなくて、文字通り息をするように。生きていくうえで普通に必要な行為だった。
目的もなく文字の海を泳ぎ、その中で生きていた。

今はそこから微妙に違う位置にいる。
本は読むが、多くは明確な目的を持っている。
掃除について知りたい、発達について勉強したい。一緒に働く医師が読んでいた本だ。

そうして得る知識と、子どものころのように目的もなく得た知識は、確実に味が違う。そして解釈も違う。
若い時に本をたくさん読みなさいってこういう意味もあるのかもしれないですね。

もうわたしは本の虫ではないし、読書家ではないと思う。
でももしわたしが長生きできて、自分にとって必要と思うものが変わってきたら、また本の虫になれるのだろうか。
あのばあさん、また本読んでる。紙の本なんて時代遅れね。
と言われながら、本ばっかり読んでいるばあさんになれたらちょっとうれしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?