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タンブルウィード

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ーあらすじー これは道草の物語。露木陽菜(ツユキヒナ)は地元山形を離れ、仙台に引っ越してきて三年目。自宅とアルバイト先を行き来するだけの淡々とした日々を過ごしていた。ある日、誤…
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#音楽

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二週間後、中崎からのメッセージで地元新聞の朝刊の中に松島のGOISHIについての掲載がある事を知った陽菜は、普段買わない新聞の紙面を部屋で眺めていた。 コラフでのバイトから帰宅して中崎からそのメッセージを受けた時は既に夜も遅く、新聞はまだ残っているのかという不安を抱えながらコンビニに走ったところ、間一髪それらを撤去しようとしていたデビと店の前で鉢合わせた。 日本語能力試験や学校の授業でコンビニの夜勤を休んでいたデビとはしばらくぶりの再会ではあったが、彼は陽菜の顔をちゃんと覚え

玄関先で一通の手紙を見つめながら陽菜は立ち尽くしていた。 どこか遠くの国の海辺の街が描かれた封筒の宛名の欄には初めて字を覚えた子供のような筆跡で「小峰まゆ」とある。 自分宛ではない手紙が何故自室のポストに投函されていたのか陽菜は封筒の住所欄へと目を移した。 陽菜の住むアパートは二階建てでワンフロアに七部屋が並列している。陽菜の住む部屋の番号は101だったが、手紙の住所には107と書かれていた。 しかしながら陽菜も最初は筆跡の癖も相まってその数字が1なのか7なのか少し躊躇ってし

カントリーロード

0.5=7

再び陽菜が彼女に目線を戻したタイミングで演奏が終わり幾人かが手を叩いて彼女の歌声を称えた。 「ありがとうございます。改めまして、りさと申します。不定期でこの場所で歌ってます。今歌った曲はBob DylanのBlowin' in the Windという歌です。」 彼女は目線を下に落したり時々目の前の人々に向けたりを繰り返しながら話した。 「、、わたしは東京の会社を辞めて仙台にやってきました。次の曲はその時私を後押ししてくれた曲です。聴いてください。」 そう言うと彼女は次の曲を演

6.5

駅から市内へ続く道路を歩道を挟む形で仙台駅前には大きなアーケードが連なって存在している。 アーケード内には小規模飲食店やコンビニ、ゲームセンターなどが併設されていて、休日は人で溢れるのが常だ。 平日でもその賑わいは薄れることは無く、授業を終えた学生達の賑々しい声がアーケードのあちこちから聴こえてくる。 陽菜は山形から仙台に来てすぐこのアーケード内の人の波を存分に経験し、以降人混みを懸念し避けてきていた。 私生活もアルバイト先と自宅との往復が日々のルーティーンと化していて、買い