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タンブルウィード

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ーあらすじー これは道草の物語。露木陽菜(ツユキヒナ)は地元山形を離れ、仙台に引っ越してきて三年目。自宅とアルバイト先を行き来するだけの淡々とした日々を過ごしていた。ある日、誤…
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#ギター

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7月。霧の様な雨がコンクリートを湿らせた市内は、例年より遅い入梅を迎えていた。 喫茶コラフの店内は普段通りの落着いた空気を、窓の外の薄曇った天候が後押しする様にしんとしていた。 駅から近い店舗とはいえ、少しだけ外れた場所に佇むコラフは実際には容易に天候の影響を受けてしまうのだった。 厨房に立つ陽菜はホールの奥に位置するはめ殺しの丸窓を見つめながらサラダに使う新鮮なレタスを千切っていた。 クボは早々に来訪の見切りをつけ休憩スペースに引っ込んでいた。大方うまい棒でも食べているのだ

玄関先で一通の手紙を見つめながら陽菜は立ち尽くしていた。 どこか遠くの国の海辺の街が描かれた封筒の宛名の欄には初めて字を覚えた子供のような筆跡で「小峰まゆ」とある。 自分宛ではない手紙が何故自室のポストに投函されていたのか陽菜は封筒の住所欄へと目を移した。 陽菜の住むアパートは二階建てでワンフロアに七部屋が並列している。陽菜の住む部屋の番号は101だったが、手紙の住所には107と書かれていた。 しかしながら陽菜も最初は筆跡の癖も相まってその数字が1なのか7なのか少し躊躇ってし

カントリーロード

0.5=7

再び陽菜が彼女に目線を戻したタイミングで演奏が終わり幾人かが手を叩いて彼女の歌声を称えた。 「ありがとうございます。改めまして、りさと申します。不定期でこの場所で歌ってます。今歌った曲はBob DylanのBlowin' in the Windという歌です。」 彼女は目線を下に落したり時々目の前の人々に向けたりを繰り返しながら話した。 「、、わたしは東京の会社を辞めて仙台にやってきました。次の曲はその時私を後押ししてくれた曲です。聴いてください。」 そう言うと彼女は次の曲を演