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みんなのコーヒー

勢いと流れでコーヒー屋を選択し、アルバイトとして働くことになった22歳の時の僕。

まさか自分が渋谷の駅ビルで働くことになろうとは想像していなかったことだった。

そこの店の従業員の方々は7~8人で、正社員さんが3人。あとは僕と同じアルバイトだけど年齢的にはバイトさんの方が年が上だった。良きアニキ、アネキといった存在で、若い社員さんをサポートしている雰囲気の良さが初日からなんとなく感じられた。で、男性はそのアニキと僕のみ。大多数を占める女性陣のキャピキャピとした声が響き渡るようなにぎやかな職場でもあった。

いや、にぎやかなんてもんじゃなかった。アニキもアネキも店員の女子もみんな笑いのセンスが抜群な人がなぜか揃っており、「ボケ・ツッコミ・いじり・いじられ・たしなめ・天然」などバランスもバッチリ。それぞれが自分の(トークの)役割をキッチリとこなすチームワークの良さもあり、エンジンがかかるともう止まらない。声のボリュームはどんどんあがってゆき、終いには何度か隣のギフトコーナーの店長さんに注意されていたほどだった。(あとから知ったが、このメンバーの半分がB型という面白い比率で構成されていた。そして、たしなめ役はA型の人だった。B型の方には申し訳ないですがちょっと納得😅)


そんなこんなで、コーヒーのことをよく知りもしない人間が、基本のキから教わり、見よう見まねでほぼ初めて淹れたものをお出しする生活が始まった。楽しいメンバーのおかげで割りとすんなり職場に馴染むことができ、コーヒーの美味しさ、魅力なんかもなんとなく分かってきたような。
そしてちょっとずつ慣れてくるにつれ、ようやくお客さんと話をしたり常連さんの顔を覚えたりする余裕もでてきた。

「ここで飲むとおいしいのよねぇ」と言って始めて数週間の僕のコーヒーをおいしそうに飲んでくれるマダム。この人はモカ。
ハンチング帽に新聞と、見た目からして明らかに競馬好きな初老の兄妹。彼らはブレンド。
ここで飲んだ後、駅前で道行く人にお祈りを乞いているらしい無口な男性。この人はアメリカンだった。


その後地元で就職が決まったため、名残惜しい中、半年ほどでやめることになってしまった。そして僕の東京生活もわずか1年で幕を閉じたのだった。あれから十数年経つが、結局誰とも連絡は取っていない。そう言えばアニキは当時からM-1グランプリに参戦したりして芸人の道を探っていたようだったがどうなったのだろう。


僕はと言えばおかげですっかりコーヒーが好きになった。

今日は休日なので、たまには教わった淹れ方を思い出しながらコーヒーを楽しもうと思う。


お越しいただきありがとうございます。フォローするわけではないですが、B型はなんとなく相性いい気がして僕は好きです。

ではまた!

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