スケさん〜ドバイからやって来た同級生
旅するスーパースター、蕎麦宗です。
『山ちゃんご無沙汰!』
いらっしゃいませ!の声と重なって、屈託のない笑顔が暖簾をくぐった。そう言われたものの、一瞬誰だか分からなかった。けれど、分厚い首元と広い肩幅の、ガッチリとしたラガーマン風情の体躯が直ぐに思い出させてくれた。
『おお!スケさん久しぶりやな』
なんと大学時代のクラスメイトで、ラグビー部に所属していた村尾俊介だった。
『卒業して以来かな?せっかく遠くから来てくれたのにすまんけど…予約含めて満席なんだ、待てる?空いたら連絡するよ』
『もちろん!、時間潰して出直すからヨロシク』
そう言って、娘・息子さんと連れ立って出ていった彼は、奥様がカナダ人でカナダ在住というところまでは知っていたものの、おそらく卒業以来30年ぶりの再会。
その日は【金龍に乗った将軍】こと尾池さん達が来店予定で、彼との仕事の打ち合わせのために【ひととてま】の平野さんも来ており、またお客さんも入れ替わり立ち替わりの繁忙日だった。
そのうち尾池さんもやってきて、他のお客さんは帰って席が空いたと電話すると、しばらくして再びにこやかに村尾ファミリーが現れた。
『いやぁ、ホントご無沙汰だよな!でも元気そうだ』
互いに久しぶりの再会を喜び合って話す姿に、娘さん達が目を丸くしている。
『パパには友達が居ないってコイツら言うんだよ。そんなことない、日本にたくさんいるし、山ちゃんも友達だよって言うんだけど…信じないんだ』
…以前、アングロ・サクソンの国々の方々と友人付き合いしていた頃がある。その時に感じたことだが、確かに彼らは他者との関係性において、一線引かれている完全なる個人主義。ゆるやかな関係性を、何年経っても持ち続けている日本人の感覚とは異なり切断されている印象を受けた。
『でもさ、どれだけ時が経って間が開いても、会って一言二言の言葉を交わしただけで、瞬時に若かりし頃の友人に戻るって不思議だよな!』
そんな様子を見て、訝しく思っていた年頃の娘さんも、確かにパパにも友人がいたのだと言うことを信じ直したようで、そのやりとりを、スケさん親子は英語でやり直した。娘さんは『少しだけ』息子さんは『全然』日本語が話せないと言うが、納得して日本語で頷いた。
彼は大学卒業後、勤務先にて奥様と出会い国際結婚。カナダへの帰国に同行し、その後もインターナショナルスクールにて教員となって、多くの国々を回ったらしく、
『妻がボスなものでね!』
と言う。きっと気立ての優しいスケさんのことだ。カカア天下で尻に敷かれているのだろうと思いきや
『家でも確かにそうだけど…』
と父と子で目を合わせて笑いながら『奥様が校長先生でありつつ、さらに上役に出世予定がある』ことを話してくれた。
『だから実際に仕事上のボスなんだよ、家でもそうだけど』
と言うと子供達は『うんうん』と頷きつつ笑う。、今回の帰国はドバイからなんだと伝えてくれた。そこへ、
『えっ、ドバイからなんですか!』
と反応したのは尾池さん。つい最近ドバイでの事業がスタートするそうで、そちら方面の情報を集めている最中だと言う。
『このタイミングで、この出会い!宗さん流石です、おおきに!』
と喜びつつ色々と情報交換していた。まぁ、蕎麦宗ではこの手のシンクロニシティは良くあること。別に自分のおかげではないけれど。特別驚かなかった一方で、世界の富豪が集まる砂漠の未来都市ドバイには僕も興味がある。なので行くツテが出来たなって密かに楽しくなった。
そんな風に和気あいあいと時間は過ぎて帰り際。今回の一時帰国はあと一週間ほどで、あちこち顔を出すつもりだと言う。つい先だって僕らの同級生・青木陽一が、東京・神田にて居酒屋《一喜一笑》を出店した。長年SEとして勤めたIBMを早期退職して夢だった飲食経営をすると、昨年の暮れに蕎麦宗へと顔を出してくれていた。その、
『陽一の店に行こうと思ってさ』
とスケさん。おお!それは良い、予定を頭に浮かべて夜なら空いてることを確認して『自分も顔出したいから一緒に行こう』となった。
『OK!じゃあまた明日ね!』
と言って、まるでネイティブな発音で流暢に挨拶をするスケさん。ハグした後、彼らファミリーを見送った。 つづく
同級生・青木陽一君の店↓
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