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ひととてま

旅するスーパースター、蕎麦宗です。

 たまに、妙に意気投合してカウンター越しのお客さんとの会話が盛り上がることがある。


 過日、店構えに惹かれてフラッと立ち寄ったという、東京から来て下さった建築設計に携わる方もそうだった。深く対話するまでもなくモノやインテリアの趣向に留まらず、思想めいたことまで相通じるのだから面白いものだ。

 僕は隣の家が大工で子供の頃からDIY好きで、かつては建築やランドスケープアーキテクト(造園建築)を目指していたこともあったし、最初に配属され勤めた県立高校には(たまたま)建築科もあって教官室に入り浸ったり(念のため体育教師です)、土木建築作業や庭師のバイトも経験している。そして、それらが高じて蕎麦宗のインテリアや外観をセルフビルド=(デザイン・設計・施工・施工管理)した実績もある。
 そんな顛末を、あの頃の思い出と*パースや設計図面と共に見て頂いたら、とても喜んで下さった。

ひと頃、三島・青木工務店のH氏もそんなこんなを喜んでくれたことを想うと、建築的嗜好の合う人達は総じて思想にまでも通じてゆくのかもしれないことは、【屋上緑化の実例見つけた】や【これまたシンクロニシティ】にも書いた。
 それはおそらく《建築=アーキテクト》という作業が思想=《ヒトの営みを知ること》と同義だからであろう。 
 
 で、その方とのお話しの中で印象に残ったものを一つ紹介したい。それは

《結局は人なんですよ、建築でなくて》

という結論。その方、住宅や店舗インテリアなどの設計を引き受ける《ひととてまdesign》と合わせて、その事務所とショールーム機能も兼ねた《cafeひととてま》という7坪の飲食店を吉祥寺にて経営されている。なかなか興味深く羨ましくも有るのだが、cafe barとしての飲食店のオペレーションは曜日ごとの各《店主》さんによってスタイルまで代わるらしい。土曜日にはオーナー自ら店主となって《ArtsLife》と《スナックぱんだ》という屋号でやっているようだ。
 単にオーナーではなく現場に身を置くことで、自身の手がけた《建築》の使い勝手やメンテナンスを確認しているよう。殊勝な事です。だからであろう、

『店に立つ人(店主)によって、ホントにガラッと店内の印象、いや店が変わってしまうんですよね』

と感じるようで、実はこのこと、僕も本当にその通りだと感じている。というのは夜の部《navgatione》を経営やっているからで、来店経験ある方は知っての通り、僕が立つ店とスタッフ(弟・ユースケ)が立つ店とでは全く空間が異なっている事に気が付く筈だ。

 寸法と素材や形状によって、様々な空間を創り出すことが建築デザインの世界。それ自体の心地良い魅力に意味がある一方で、しかし、どんなものを作ったとしても《ひと》により全く異なる空間となってしまうのはなんとも意味深い。場合によっては建築家にとってある意味負けゲームで、時に無力感とやるせなさに包まれることもあるだろう。
 かつて建築デザイナー《ケンブリッジの森》の故・藤原慎一郎氏と語った時も同様のことに行き詰まる虚しさ・悔しさを共有した記憶がある。

『でも、そこに立つ人を輝かせる舞台装置だからさ、タテモノは』

という慰めが僕らの会話の帰結で、建築やインテリアが商売や店を乗せる器である以上、これからもこの方、《ひととてま》さんが建築デザインに携わってゆく原動力となるのだろう。

 それにしても、色々とチャレンジングに取り組んでいることの一つひとつが興味深く実に面白い。いずれ、吉祥寺に足を運んで立ち寄りたい。 
 また、なにかしらの形で僕も関わって出来そうなことがありそうな気がしている。加えてその刺激から、以前から構想している住宅やインテリアに関するワークショップも、蕎麦宗で必ずやろうと想いを新たにした。そんな諸々もろもろの置き土産を沢山頂き、ありがとうございました。

 さて、でも、あわてないあわてない、ガンバラナシませう。

*パース…設計した建築物をイメージしやすいように立体的に表現した絵やCG。

ひととてま↓

#ひととてま #空間デザイン #居心地の良い場所作り  

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