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超合金イワシマ沼津千本浜に現る

目指せスーパースター。蕎麦宗です。

ようやく落ち着きを見せるコロナ禍。人の動きも活発になってきた。行きたいところへ行く、会いたい人に会う。当たり前のことが出来なかった束縛から解放されて、皆んな楽しげだ。蕎麦宗にも、少しずつお客さんが戻り始めた今日この頃。ありがたいことです。

そんな折、メールが一つ届いた。

『宗さんご無沙汰しております…近くそちらに出向きます…』

送り主は岩島啓太君だった。彼は東京の日野市に《エイジサイクル》という自転車プロショップを構えるサイクリスト。今回はショップチーム《ミブロ》の仲間達と共に、沼津千本浜〜静岡由比の浜石岳のツーリングをするために来伊豆するとのこと。『よかったらご一緒に』とわざわざ声を掛けてくれたのだった。

岩島啓太…彼との出会いは2019年の*台湾KOMに出場した時が最初。宿泊先にて、ツアーを仕切るサンボルト社長・橋本さんが『なんとなく』で選んだ相部屋のお相手だった。*森本誠さんをはじめ、国内プロやアマチュア自転車界を代表するキラ星達の一人で、凄まじい戦歴を残している方だ。驚く程なので、いくつかあげておこう。…2010年ツールド沖縄市民210km優勝・2017年Mt富士ヒルクライムを*TTバイクにて60分切りして優勝・サイクルスポーツ誌が主催する店長選手権優勝にて年間連載も複数回している…etcなどなど。

そんな彼と何故ゆえに親しくなったのか。初対面の相部屋で色々と話す内、色んな経験や考え方が共通していて共感出来たうえに、彼も横浜国立大学の出身で先輩後輩だと判明わかったからだった。小さな大学なので出身者は多くない。まさか、こんな台湾くんだりに来て出くわすとは!。よわいも異なるし、しかも彼は工学部なので頭の出来も違う。それでも同門のよしみであり、二日間の寝食を共にする体験は、一気に僕らを近づけた。

そんなわけで、2019年のツールド沖縄で会って以来、幾度かの再会のチャンスが天気やコロナ禍で遠ざかってしまっていたが、ようやくこの時がやって来た。つづく

*台湾KOM…世界一過酷とされるヒルクライムレース。距離100kmを登り続け、ゴール地点は3300mにもなるため、制限時間内の完走率は60%を下回る。

*森本誠…アマチュア自転車界では《山の神》としてその名を知られたサイクリスト。

*TTバイク…空気抵抗を極限まで減らしたタイムトライアル専用の自転車。チョコレートプラネットが乗っているわけではない。

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さて、つづき。

『急なお誘いですいません、天気の具合で直前まで様子見していたので』

そうあったメールの約束時間に、CLUB SOBASOの仲間・手塚君に付き合って貰って沼津千本浜公園へ向かうと、ちょうどタイミングを合わせたかのように、軽バンに乗った啓太君が横に並んだ。

『宗さん、お久しぶりです』

『お〜!』

と手を振って再開を懐かしみつつ、駐車する軽バンに横付けした。この2年間、時世のおかげでアマチュア自転車レースはほぼほぼ無くなってしまった。流石の彼でもモチベーションの維持は難儀なようで、僕のそれが風前の灯なのは無理もない。とはいえ、相変わらずの肉体を維持しているあたりは、さすがの《超合金イワシマ》だけのことはある。

台湾KOMの*サンボルト絆チームは*ヒルクライマーが中心なので、筋骨隆々ではない極細マッチョ。その、か細いキラ星達の中にあって、彼のマッシブな体躯は異質だった。頑強な肉体と風貌についたあだ名が《超合金》らしいのだが、内実、シャイで朴訥として穏やかなお人柄。なのに勝負師だったり、理系的理論派のようでいて感覚的だったりと、ひんやりとした表面と熱いハートのギャップは、まるで出来たての超合金の塊インゴット。中々その魅力は懐深く、だからこそショップチーム《ミブロ》にもこれだけの人が集まるのだろう。

やがて彼の仲間達が東京ナンバーの車で駆けつけ、三々五々集まっている。ボチボチとロードバイクを降ろし準備完了、いよいよ出発とあいなった。

彼等はこの沼津千本浜公園〜静岡由比の浜石岳のルートは初めてらしく、伊豆在住の地元民としては道案内してあげたいところだ。しかし、祝日の店の営業前で時間の限られていた僕は、途中までの参加となった。それでも啓太君が誘ってくれた折角の機会。なんとか時間を作ってやってきたのだから、何かしらの刺激を持ち帰りたい。そう思って、超合金の真後ろを走らせて貰う。

走って直ぐに気付くのは、フォームの美しさと力強さ。リザルトが示す通りの伊達ではない実力は、時速25km/hであってもオーラを放つ。スポーツの上達は、上手い人と共にプレーするに限る。見て、真似て、身体に染み込ませるのが一番の近道で、産まれたてのカルガモが親の後に着いて周るように走る事が手っ取り早い。学ぶとは『まねぶ』つまり真似ること。そうこう思ってる内に、不思議な感覚が湧き上がってきた。

彼に習って姿勢を正してロードバイクを進めるに連れて、ガチなレースモードのスイッチが入ったのだ。この2年間遠ざかって、すっかり脳味噌は忘れている感覚を、しっかり筋肉は覚えているようで、ワクワクする気持ちが止めど無く血潮に流れ込んでくる。やがて、ペダリングも普段のまったりとは異なり研ぎ澄まされたものに変わる。そういえばこんな風に走っていたっけな。今は遠い記憶が呼び起こされて、台湾KOMやツールド沖縄を思い出し、なんとも昂たかぶった気分に包まれた。

今回のイベントは『実業団チームの練習』ではなく『ファンライドツーリング』といった趣旨のもの。決して速度や強度は高くない。そして僕自身は短い時間でもあった。それでも充実した素晴らしい体験が出来て、ホント参加して良かったなって思う。誘ってくれた啓太君にも感謝したい。

さて来年(2022年)、レースは元通りになるのだろうか?その時にならなければ分からない。でも、準備なしには出場も、ましてや活躍は叶わない。こういった刺激を点景にして、少しずつゴールを描いて進もう。僕は《超合金》には成れないけれど、きっと出来ることはあるはず。*世界最速(笑)の手打ち蕎麦屋は、多分そんなに遠くない。

岩島啓太君、チームのみなさん、ありがとう。また、一緒に走りましよう。ではでは、ガンバラナシませう。

*サンボルト絆チーム…サイクルウェア会社サンボルトの橋本社長が結成した、台湾と日本の架け橋となる台湾KOM参加のための特別チーム

*ヒルクライマー…ロードバイクレースの中で、山道を上ることが得意な選手をこう呼ぶ

*世界最速の蕎麦屋…2019年のMt富士ヒルクライムレースにて年代4位。表彰台の方々はサラーマンのようで、おそらくこれだけロードバイクで走っている蕎麦屋はいないだろうから多分日本一、そして手打ち蕎麦屋は日本にしかないので、つまり世界一になれるかも!…という半分本気で半分冗談めいた洒落た目標。

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#エイジサイクル #サンボルト #台湾KOM #沼津千本浜 #学ぶこと  台湾KOM #森本誠 #再会

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