降臨!龍神ゴロー
旅するスーパースター、蕎麦宗です。
2022年の夏。3年ぶりの三嶋大祭りが終わったあと、ひょっこりと蕎麦を食べに現れたのがゴロちゃんこと橋村吾郎だった。
彼は高校の一学年下の後輩で、全国大会上位常連校だった名門・静岡県立韮山高校の空手部にいた。その部の親しい友人から紹介された記憶があって、小柄(当時)だけどちょっとヤンチャで、目の光が強く印象的な彼の事を当時から知っていた。
たまたま彼のご両親は蕎麦宗が開店した当初からの常連で、ある時何かの会話で繋がって、東京在住のゴロちゃんを連れて紹介して下さった。
さて今回。その彼は西伊豆へと釣りに出掛ける途中に唐突に思いついて、伊豆縦貫道のインターチェンジを降り、遠回りしてわざわざ来てくれたらしい。
『大間のマグロを釣りに青森行くつもりだったんすけど、都合でキャンセルになっちゃって…』
はぁ?大間のマグロ!それってレジャーの釣りで出来るモノ?!またまた意味不明なスケールが出て来たぞ、これは面白い。
彼の本業は《医療法人ODC》という歯科医院グループを経営する理事長。歯科医師としても顎関節や頭蓋も関わるような大手術もこなす、つまりはスーパーデンタルDr。海外からの依頼も多く、大袈裟でなくてきっと命も救って来たはずだ。何度か来店してくれて、とっても豪快かつ太っ腹なキャラなのを知っていた。なので何の気無しに相談してみる。
『2023年の3/14〜3/21にね、レイラインツアーに挑戦するんだ。それのクラファン思いついたんだけどさっ!』
ざっくり趣旨や道程を語り、返礼品としての件の、7つのパワースポットの7枚のお札を春分の太陽にかざす儀式の話題を伝えると、彼は一つ返事で応えてくれた。
『いっすよ!!。でも、宗さん、それって僕も走れませんかね?』
『最終日は日本橋から玉前神社の80km、まだ7ヶ月あるし、今から鍛えればゴロちゃんなら大丈夫なんじゃん!』
と答えるとすっかりその気になったのか、『ロードバイク買おうかな〜!』と楽しそうな少年の瞳のまま、その日は西伊豆での釣り旅に戻って行った。
しかし、だ。そこからは怒涛の行動力だった。彼は《流れ》を大切にしているとの事で、やるとなるとすぐ動く。あっという間にロードバイクやそのブランド・ショップの知識を身に付けて、僕が紹介した店も即日予約して翌日にクルマ飛ばして行くくらい。まるでダイヤモンド鉱山で働くブルドーザーのようなパワーと突進力。それに釣られた僕も先周りして情報を用意したのは、彼のような経営者マインドを見習いたかったからだ。
結果、(当時)通常半年〜一年待ちとなっているこの自転車業界に於いて、わずか2週間で《サーベロS5》をゲット。そう、僕が以前乗っていて競輪選手を目指す《幸野夢翔(【太っ腹礼賛7】を参照)》に貸しているあのバイクの新型モデル。
この時、もう一つの幸運にも恵まれたのは彼の行動力が引き寄せたのだろう。なんとサーベロを取り扱う《東商会》の社長に、【太っ腹礼賛4】の渡正さんのランボルギーニの際に繋がった当時の副社長《寺井》君が就任したのだった(色々お世話になったので、この場を借りてお礼申し上げます)。
さてさて一月後。そんなゴロちゃんがひょっこりとまた三島にやって来て、蕎麦宗の夜の部navgationeでの呑みに誘ってくれた。
『このあと宮古島行くんで、輪行バッグお借りします。一周100km サーベロS5で走ってきますよ!』
そう言って本当にこなしてしまうのだから、この男恐るべし。そんなこんなを色々意気投合して語り合う内に一つの疑問が湧いた。
『ガキの頃散々チャリ遊びしたにしてもさ、よっぽどハマったんだねロードバイク』
そう言うとゴロちゃんが答える。
『いや、そこまでロードバイクには興味ないです。でも、これ買って鍛えて僕が宗さんに寄せたら、先輩と一緒に遊べるじゃないっすか!』
この男愛すべし。なんて嬉しいことを言ってくれるのだ。
『ゴロちゃんさ、もうこの歳だし一つしか違わないし、敬語とか先輩とか別にいいよ』
と言うと、
『何言ってんすか、《先輩》って言いたいんすよ!』
彼は経営者として俗に世間でいうところの成功者(この言葉はあまり好きでないが)である。そして、名だたる歯科医師でもある。それゆえに、尊敬や称賛を集めることは多けれど、無邪気に童心に戻って関われる仲間、しかも同じ《韮山高校》ともなると、もう身近にはほとんど居なくなってしまうのかもしれない。そんなことを思いながら『分かった』と僕は静かに頷いた。
ずいぶんと時間を忘れて楽しく呑んだその日、ヘッドスパの話題から移ろってとある話をゴロちゃんが持ち出した。
『なんか、群馬の凄腕の方が見えちゃう系の人で…ヘッドスパやりながら『あなた龍神を背負っているね』って言われたんっすよ』
出た!また龍神だ。実は【星読みの会】を一緒にやっている同級生のひとみも、掛り付けの整体師から『龍神を連れて来ちゃう人といわれるんだよね』と以前聞いていたし、東京は東雲での龍神会というイベントにも、『今度行きませんか』と知人から誘われている。
『そうか、ゴロちゃん!龍神か!。このところ3人目だよ、これで。オレ、龍神会行くにするは』
繰り返し同じキーワードやメッセージが続く時は必ず何かある。思いついて《ひとみ》の【日本橋の星読み】を聴きに行った時もそうだった。今回もきっと何かが起こる。そんな予感をゴロちゃんが運んで来てくれた、navgationeの楽しい夜だった。
数日後。店の休みの日にトレーニングも兼ねて箱根周辺をロードバイクで走った。目指す場所は箱根九頭竜神社。駒ヶ岳の直下にある龍神を祀った社で、橋村吾郎が一番敬愛して参拝する場所だという。
僕はお礼がしたかった。尊敬すべき経営者として、あのポジティブでパワフルな真夏の太陽のようなキャラクターや、太っ腹な心意気に対して。あるいは中学生みたいな無邪気な遊びを通じても次は僕が彼に寄せてゆきたいし、受け取ったあの刺激をまた誰かに皆んなに分けてあげたい。
だからなんとなくだけど、そんなゴロちゃんに引き合わせてくれたことを龍神様に感謝したかった。
静かな芦ノ湖畔に立つ小さな赤い鳥居にキラキラとさざなみが寄せる。秋分近くなのにまだ夏のままの梢からはらはらと陽光が降り注ぐ。大した信心は未だにないけれど、神様はきっといる。ゆっくりと歩いて朱い社殿の前に立ち、二礼ニ拍手のあと祈りとお礼を捧げると、ふと、どこかから声が聞こえた気がした。
『先輩っ!あざっす!』。 終
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