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意志決定のファシリテーションには「公正なプロセスの設計」および「正しい運営」が必要

この記事は、ファシリテーター Advent Calendar 2021の記事です。

ファシリテーションの役割のひとつに、「意志決定を促す」があります。ぼくは今年、意思決定についての勉強や実践をしてきました。そのなかで感じているのは、意思決定のファシリテーションは「プロセスの設計」および「正しい運営」が重要なポイントであるということです。

その理由のひとつは、「納得感」。どんな素晴らしい意思決定をしたとしても、参加者あるいはその意思決定の影響を受ける人たちに納得感がないと意味がありません。

これは、「良い結果ができたなぁ」という最終結果ではなく、「このプロセスで決まったのだから文句はない」という決め方に納得するかどうかです。結論への筋道が妥当であれば、たとえ自分が賛成した結果でなくとも協力的な行動をしてくれるでしょう。

そうした公正なプロセスには必ず、情報を参加者に平等に提供すること、みんなが意見をだすことが含まれています。この2点をしっかりとプロセスに盛り込むことが納得感のある意思決定プロセスの最低条件です。

ふたつめの理由は、意思決定の対象の重要度と、意思決定にかけられる時間によって有効なプロセスが異なること。

時間がなく、重要でないものを決める場合は多数決が手っ取り早いです。とはいえ、多数決の多用は厳禁です。じつは、多数決では良い案が選ばれない場合があるからです。

時間がなく、重要なものを決める場合、誰かが決定する、専門家が決定するということをすると良いでしょう。緊急事態への対応もこの領域に当たります。

時間があり、重要なものを決める場合、できる限り選択肢と評価軸を吟味すると良いでしょう。このような意思決定マトリクスを使うと良いです。

※「スケール」は目標が達成できている度合い

時間があり、重要でないものを決める場合、決めないというのも手です。時間が経つにつれ重要度が増していくこともあれば、決めなくても問題がないことも多いためです。

実際の意思決定の場面では、これらの中間くらいのものが多いでしょう。重要度とかけられる時間を鑑みて意思決定のプロセスを設計すると良いです。

最後は、意思決定をする人々の「関係性」です。友達同士で旅行の行き先を決めるのであれば関係がないですが、仕事の現場では「ランク」の影響を無視できません。

「ランク」とは、プロセス指向心理学の提唱者であるアーノルド・ミンデルが定義した概念です。社会的地位や能力、容姿、宗教などの要素により、人 のランクづけがなされるというもの。仕事であれば、上司と部下や発注元と発注先、正社員と派遣社員といった関係の間にランクの差があらわれることが多いです。ランクの高い側からは抑圧、ランクの低い側からは抵抗がうまれます。

ランクの高低を無視できるようなプロセス(みんなの意見を出すようにする、偉い人がその場にいないステップを入れるなど)を設計したり、グランドルールを設けると影響を抑えることができます。

リーダーにとって重要なことは、どんな決断をくだすかではなく、どうやって決断を下すか、その意志決定のプロセスを決め、自制心をもって運営することである

書籍『決断の本質より』

意志決定のファシリテーションでは、この3つのポイントを押さえ、(他の場面と同様、あるいはそれ以上に)プロセスをいかに構築し、正しく運営するのかが鍵なのです。



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