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ケアマネ?

 介護という仕事は、情報収集→分析(アセスメント)→計画作成(ケアプラン)→実践→評価(モニタリング)→更なる情報収集というサイクルをたどりながら行われる連続的な実践のことだ。現在、日本においては在宅であっても施設であっても、情報収集、分析、計画作成、評価は基本的にケアマネジャーの仕事ということになっている。介護職員が行うのは実践だけである。「構想」と「実践」の乖離による効果の抑制がどの介護現場にも見られる。その原因はここにある。
 そうでない国もあるようだ。スウェーデンの認知症施設介護(いわゆる特別住宅)においてモニタリングやケアプラン作成を担う中心的存在はアンダーナースと呼ばれる介護職員たちだ。介護職員は一人につき2〜3名の入居者を担当し、本人の要望を聞き、家族とコンタクトを取り、彼らの思いを聞き取りながらケアプランを作成していく。もちろんその過程で看護師や理学療法士、ソーシャルワーカーなどの協力を得ることになる。だが、最も身近に入居者と接する彼ら介護職員こそがモニタリングにしろケアプラン作成にしろ最も適任であることは明らかである。
 日本のケアマネジャーも施設ケアマネの場合、多くの人は身体介護にそれなりに携わっているだろう。しかしその頻度はやはり介護職員の方がずっと多い。果たして日常的に介護を行うわけではないケアマネに正確なモニタリングやアセスメントが可能であろうか?この部分を補うためにケアマネは多職種連携の要となって様々な職種から聞き取りを行い、情報収集しつつケアプランを作成する。ただその連携が本当に効果を発揮しているかどうかは怪しいものだと感じる人は多いだろう。
 ケアプランに直接関わらない介護職員にとって入居者の重要な情報といえばどうしても体調不良とか、ADLの悪化という類の情報になってしまう。入居者がこういうことに興味を持っているとか、意外にもこういうことができたとか、そういうその人のストレングスやエンパワメントにつながるような情報というのはよほどケアマネが介護職員に対して意識的に聞き取りを行わない限り、介護職員の方から積極的にケアマネに上がっていくことはないのではないか?多くの介護職員の意識としては、困った時にケアマネに相談するという意識になっていると思われる。困った時、つまりは体調不良やいつもと様子が違うとか、介護に支障が出たというような時に相談する相手がケアマネ、そういう意識である。
 介護職員がケアプランの作成を担うようになると、その意識が変わってくる。ストレングスに目が向くようになり、介護の質そのものも向上していく。もちろんケアプラン作成やアセスメントが可能なように介護職員の底上げが必要になってくる。誰でもできる簡単な仕事、ご主人が主な稼ぎ頭だからその足し程度で働かせられる主婦がたくさん求人に応募するだろう、だから教育もそれほど必要ないし、給料も安くていい、そういう安易な制度設計の思想が現在の介護職員の状況を作り出しているように思える。

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