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忘れ得ぬ人

学生時代、とある施設でボランティアをしていました。
子どもたちと遊んだり、一緒に勉強したり、キャンプに行ったり。

私自身がさまざまな経験を積ませてもらい、それが今の自分の土台を作っていると感じています。
あの頃がなければ、今コーチとして活動していなかったかもしれません。
誰かと真剣に向き合うということについて、初めて自分なりに深く考えるきっかけを与えてもらいました。

毎週土曜日の午後は、自由遊びの時間。
数人の学生ボランティアと、確かその時は20人ほどの子どもたちが、自然といくつかのグループに分かれて遊んでいました。
元気な子どもたちが、大学生のお兄さん・お姉さんを取り合うような状況になることも度々です。

私もグループのひとつに混ざっていたのですが、いつも仲良くしてくれている小学生の女の子が、私とふたりで遊びたいと声をかけてくれました。

とても嬉しいお誘いです。
でも、今進行中の鬼ごっこはちょっと途中離脱できない雰囲気。

そこで私は彼女に、少し待っててね、鬼ごっこが一段落したら一緒に遊ぼうねと返事をしました。
彼女はにっこりうなずいて向こうのほうへ。

その後しばらく、ちらちら彼女を横目で気にしつつも、鬼ごっこから離れるタイミングをつかめずにいました。
そのうち彼女も他の友達と遊び始め、私はひと安心。

しばらくして鬼ごっこは終わりましたが、彼女は引き続き友達と楽しそうに遊んでいたため、私は彼女に声をかけることはせず、別の子とおしゃべりしていました。

そしてそろそろ遊びの時間が終わりに差し掛かる頃。
職員の先生に呼ばれました。
「あの子、あなたと一緒に遊ぶのをずっと楽しみにして待ってたから、ちょっと行ってあげて」

ハッとしました。
自分の浅はかさをあれほど瞬間的に深く悔いたことは、後にも先にもないかも。

すぐに彼女の元に駆け寄り、誠心誠意謝りました。

ずっと待っててくれたんだよね、ごめんね、他のお友達と遊んでるからもういいのかなって勝手に思っちゃったけど違うよね、本当に私が悪かった、ごめんなさい。心から謝ります。

私の言葉を聞いて少し安心したような表情を浮かべた彼女の目からは、涙がポロポロ。

ああ、私はなんてひどいことをしてしまったんだろう。
勝手な解釈で行動し、相手を傷つけてしまった。

もしかしたら、本当にきちんと誰かに向き合って謝罪したのは、人生初だったかもしれません。
(それ以前に私が謝罪した皆さんすみません)

幸い、優しい彼女は私の気持ちを受け入れ、その後も変わらず仲良くしてくれました。
これも私の勝手な解釈かもしれませんが、私が今まで以上に心を込めて向き合うようになったからか、それまで以上に仲良くなれたようにも思います。

年齢や立場に関係なく、誠意をもって人と向き合うことを、彼女が私に教えてくれました。
関わることができたのはごくわずかな期間でしたが、私の大切な恩人で友人です。

どうかどうか、今でも元気で、幸せに暮らしていますように。

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