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#62 都市のイメージ

"都市のイメージ"を読了。
街づくりに関する学習にのめり込んで、ようやく都市計画の古典である本書に着手することができた。
これはかなり面白かった!

リンチ氏は都市空間の各部分がいかに認識されやすいのか?それが実はパターンとして浮かび上がってくるという点について着目し、その意味ある一貫したパターンをイメージと呼び、都市の各部分の認知されやすさのことを「イメージアビリティ」と名付けている。
そして、「イメージアビリティ」の概念をアイデンティティ&ストラクチャーの2つに重きを置いて分析している内容。
具体的には、5つのエレメントの観点からユーザーインタビューを行い、それぞれのユーザーがイメージしている内容を重ね合わせることで、住民/利用者のその都市に対する共通な記憶イメージを整理している。このイメージが定着したときに、その都市の正確が確立したことになるよ、というのがリンチ氏の主張。
かなり面白い!

本書からの学びは多かった中で、特に印象に残ったのは下記の3点。

  • それらの特性(5つのエレメント)をマスターしたならば、その次は、時間的に連続して感じられるような、そしてその部分が単に文脈として感じ取られるような全体を組み立てることがデザイナーの課題となる。

  • 我々が求めなければならないシークエンスとは、逆転が効くと同時に、中断されても良いようなシークエンス、つまり雑誌の続きもののようにどこで切られてもまだ十分なイメージアビリティを持つものであると考えられる。

  • 都市のデザインの芸術が高度に発展するかどうかは、批判力を持つ注意深い聴衆が誕生するかどうかに掛かっている。

都市を見つ直すための切り口を学ぶ際には必読だと思う。
自分が住んでいる/よく行く場所についてもこの視点で一回まとめてみても面白いかも?と思った。これ、誰かとやってみたいな。

良書でした!

以下、学びメモ。

ーーーーー
・我々の調査で明らかになったことの1つは、「眺めの広がり」の重要さである。
→広大な眺めに接すると感情的な喜びが生じるということは、しばしば指摘された。広い眺めは時には混乱を暴露し、性格の欠除からくる寂しさを表現する。しかしうまく処理されたパノラマは、都市の楽しさの主要素であるように思われる。
・★都市のイメージは5つのエレメントに分類することができる★:
①path(道路)→観察者が日頃あるいは時々通る(可能性がある)道筋のこと。街路、散歩道、運送路、運河、鉄道など。
②edge(縁)→観察者がpathとして用いない、あるいはpathとは見なさない線状のエレメントをいう。海岸、鉄道線路の切通し、開発地の縁、壁など、2つの局面の間にある境界であり、連続状態を中断する線状のもののことである。
③district(地域)→中から大の大きさをもつ都市の部分であり、2次元の広がりをもつものとして考えられ、観察者が心の中で”その中に”入るものであり、また何か独自な特徴がその内部の各所に共通して見られるために認識されるものである。
④node(接合点)→都市内部にある主要な地点である。観察者がその中に入ることができる点であり、そこへ向かったり、そこから出発したりする強い焦点である。nodeとなるのは、まず第一に接合点である。すなわち交通が調子を変える地点、あるいは道路の交差点ないし集合点、あるいはひとつの構造が他の構造に移り変わる地点などである。次に、nodeは単なる集中点であることもある。nodeの概念はpathの概念と結びついている。接合点は通常、pathが集合するところであり、人々の移動中の出来事であるからである。
⑤landmark(目印)→点を示すものであるが、この場合は観察者はその中に入らず、外部から見るのである。建物、看板、商店、山など、どちらかといえば単純に定義される物理的な物を指す。
・この5つのエレメントはそれぞれが重なり合っている。districtはnodeで組み立てられ、edgeに囲まれ、pathに貫通され、landmarkで彩られている。
・★主要なpathがアイデンティティを欠くとき、または他のpathと混同されがちである場合は、都市のイメージ全体があやふやであった。★
→また、pathはアイデンティティと連続性ともつものであると同時に、方向性をもつこともできる。pathが方向性を持つならば、さらにそれは距離の測定を可能にするという特質を持つこともできるであろう。
・★edgeとは破壊的な力を持つものであると理解しておく必要がある。★
→edgeは同時にpathであるものが多い。その場合、エレメントは境界としての性格によって強化されたpathとして受け取られることになるのである。
・★districtを決定づける物理的な特徴は、テーマが連続しているということである。テーマになるのは、テクスチュア、空間、形態、ディテール、シンボル、建物の型、用途、活動、住民、保存の程度、地形などである。騒音や道に迷うという混乱そのものさえも、時には手掛かりになり得る。★
・強いコアをもち、その周りに、それから離れるにつれて次第に衰えていくようなテーマの変化度が現れているdistrictは珍しくない。実際に、強いnodeというものは、単に”放射”によって、つまり主要地点に近接しているという感じを与えることによって、広くて性格が一様な地帯の中にdistrictのようなものを作り出すことがある。このような地域は主に、参照的な意味を持ち、知覚的には大した内容を持たないが、それでも、イメージの構成上の概念としては有用である。
・★node/接合点、つまり交通が一時調子を変える場所には、都市の観察者の注意を引かざるを得ないような重要性がある。というのは、接合点では決定を下さねばならないので、これらの地点に差し掛かると人々は注意力を高め、普通以上に鮮明にその近くのあるエレメントを感じ取るからである。★
・最大の価値を持つイメージとは、強烈な全体的な場に近いもの、つまり、密度が濃く、固定していて、鮮明で、あらゆるエレメントのタイプや形態の特徴が満遍なく取り入れられていて、場合に応じて体系的にでも連続的にでも組み立てられるようなものであろう。このようなイメージはごく稀にしかないだろうが。
・重要なedgeに、それと都市のその他の構造とを結びつける視覚的連絡ないしは交通面での連結が色々備えられていると、そのedgeを基準として、その他全てのものを用意に関連づけることができるようになる。
・役に立つlandmarkにとって絶対必要な特徴は、その特異性、つまりその周辺あるいは背景との対照である。空間的に傑出しているものは特に注意を惹きつける。加えて、イメージの強さは、そのランドマークと何らかの連想が一致していれば更に高まる。とある歴史的事件の現場だとか、アナら個人のドアの色と同じだとか。
・★path、edge、district、node、landmarkという5つのエレメントを、単に大量の情報を分類するのに都合の良い経験的な範疇と考えてほしい。これらはデザイナーのための積み木であり、その意味は役に立つと言えるだろう。しかしそれらの特性をマスターしたならば、その次は、時間的に連続して感じられるような、そしてその部分が単に文脈として感じ取られるような全体を組み立てることがデザイナーの課題となる。★
・★大都市地域のように広大な地域のためのパターンを構成する2つのテクニック★:
①その地域全体が静的な体系として構成されること
→例えば、大きなdistrictが3つのsub-districtを含み、また・・・というように構成されよう。マラ、体系的な構成のもう一つの例として、その地域のどの部分にも焦点となるノードがあり、これらの小さなノードはみな一つの大きなノードに対する衛生のような関係にあり、更にいくつかの大きなノードが地域における最大のノードを頂点とする、という具合に配置されることも考えられる。
②1つないし2つの支配的なエレメントを用いることである。そのエレメントに他の小さなエレメントを結びつけるのである。例えば海岸沿いに住宅地を設けること、基本的なコミュニケーションの背骨に沿った線状の町をデザインすることなどがこれに該当する。また中心部にある丘のような、非常に強力なランドマークを中核として、その他のものを放射的にこれに関係づけることも可能かもしれない。
・都市の問題の難しさは、シークエンスが可逆であるばかりでなく、その途中の多くの地点でふいに中断されることもあるからである。たとえ、序奏、提示、展開、クライマックス、そして終結と、入念に組み立てられたシークエンスであっても、そのクライマックスの部分へいきなり自動車を運転しては入り込んできた者にとっては、まるで役に立たないかもしれないが。
→★してみると、我々が求めなければならないシークエンスとは、逆転が効くと同時に、中断されても良いようなシークエンス、つまり雑誌の続きもののようにどこで切られてもまだ十分なイメージアビリティを持つものであると考えられる。★
→このことは、クラシック音楽のスタート、クライマックス、フィニッシュというような形式ではなく、本質的に終わりがなく、しかも連続性を持ち、かつ変化に富んでいるジャズのパターンのようなものへと、我々を導くであろう。
・イメージの発展にとって、見られるものを造り直すことばかりではなく、見るための教育を行うことも非常に重要である。実に、この両者は、円の過程、あるいは螺旋の過程を作り上げることも期待できる。
→★都市のデザインの芸術が高度に発展するかどうかは、批判力を持つ注意深い聴衆が誕生するかどうかに掛かっている。★
・イメージの組み立て方は様々な種類がある。まず、様々な特徴の位置や関係に言及するために、抽象的且つ一般化されたレファレンス(指示)・システムを用いる方法が考えられる。このシステムには論理的なものもあれば、どちかと言えば習慣的なものも含まれる。
→例えば、シベリアのチャクチー族は22の方角を区別しているが、それらは3次元にわたっていて太陽に結びつけられている。この向きは寝室の向きを決めるために重要である。また、中国北部の平原地帯で用いられているシステムは厳密であり、北は黒と悪に等しく、南は赤/喜び/生命そして太陽に等しいという具合に、深い魔術的な意味合いを持つものである。宗教的な物体や恒久的な建造物の配置が。全てこのシステムによって統制されている。
・★都市のパブリック・イメージに関するユーザー・インタビュー:★
①”都市名”という言葉から、あなたの心にまず何が浮かびますか?あなたにとってその言葉は何を象徴していますか?”都市名”の物理的な面について大まかに描写してみてください。
②XX通りより内側の”都市名”中心部の地図をざっと描いてもらいたい。(地図が描かれる順序をメモする)
③-a、あなたが毎日の通勤に際して通る道筋について、全てをはっきり教えてください。今実際にそこを通っていると考えて、途中で見えたり聞こえたり、匂ったりするものの順序や、あなたにとって重要な道標や、不案内な人があなたと同じ決定を下さねばならない時に役立つと思われるような手がかり、などを説明してください。
③-b、あなたは通勤の途中にある色々な部分について、何か特別な感情を抱いていますか?時間はどれくらいかかりますか?どこにいるかがはっきりしないような場所はありますか?
④”都市名”中心部にあるエレメントの中で、あなたが最も独特だと思うものは何かを教えていただきたいです。大きいものでも小さいものでも構いせませんが、あなたが最も容易く見分けることができて、記憶できるものを選んでください。
⑤-a、それについて説明していただけませんか?もしあなたが目隠しをしたままそこへ連れて行かれたとしたら、目隠しが外された時に、あなたはその場所を正確に知るためにどんな手がかりを用いますか?
⑤-b、それについてあなたは何か特別の感情を持っていますか?
⑤-c、あなたが描いた地図では、それがどこになっているのか教えてください。その境界はどこですか?
⑥あなたの地図では北はどっちになっていますか?
⑦-a、私たちが何を探り出そうとしているのだと思いますか?
⑦-b、都市のエレメントを見分けることと、それらの位置や方向を知ることは、人々にとってどの程度重要でしょうか?
⑦-c、あなたは、今どこにいるのかとか、どこへ行くところなのかということがはっきりわかると嬉しいですか?それと逆の場合には不愉快ですか?
⑦-d、”都市名”で道を探すのは優しいと思いますか?市内のいろいろの部分は見分けやすいと思いますか?
⑦-e、あなたがご存知の都市の中で、方角がはっきりしていて分かりやすいと思われる都市をあげてください。それはなぜですか?
・★(解説)リンチは、「都市は人々にイメージされるものである」という指摘している。リンチは、「イメージされる可能性」を「イメージアビリティ」と名付け、これを高めることこそ、美しく楽しい環境にとって最も重要な条件であるという大目標を掲げながら、「イメージは、アイデンティティ、ストラクチャー、ミーニングから成り立つが、最初の2つは形そのものがもたらすものであり、最後の1つは社会的/歴史的/個人的/その他諸々の要因から生まれるものであるから、これら2種類(アイデンティティ&ストラクチャーとミーニング)は独立した領域と考えられる。そして、前者に集中して形そのもののイメージアビリティを追求することも可能であり価値があることである」と思いきいった宣言をしている。★

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