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北へ(10)新札幌のラーメン屋

最終日の朝。
昨夜のお酒が残っていたか、せっかく早く起きたのに時刻表を見間違え、1本後のバスに乗る。

バスは紋別の街を抜け、一面の銀世界を行く。牧草地帯だ。
雪原の中に、ぽつぽつと牛小屋が建っている。牛が顔を覗かせている。

この先に街があるのか、不思議に思っていると、やはり忽然と現れた湧別の街。雄大な景色の先に、人の暮らし。
北海道のバス旅で、一番ワクワクする瞬間。

湧別、中湧別と、かつて名寄本線が通った街を抜けていく。
バブル期のスキーウェアのような紫のジャージ、絶滅危惧ファッションを身にまとったおじさんが乗り込んでくる。
土地の空気を感じられる路線バスの旅が大好きだ。

バスは遠軽に着いた。やはり現役の鉄道が通る街、なんだか随分と都会に見える。街を見下ろす高台にある、歴史ある駅舎。

特急大雪に乗り込み、旭川へ。いよいよ帰路につくんだと、寂しくなってくる。車窓を眺めながら、旅の思い出をメモに残す。
あの景色、あの出会い、全ては大切な記憶。

遠軽は晴れていたが、北見峠を越えると一転して雪景色。
特急を乗り継ぎ、旭川から札幌へ。

飛行機まで少し時間があったので、新千歳空港への道中、新札幌で途中下車してみた。駅の改札を出ると、ラーメンのいい匂い。
旅のシメに一杯!

シンプルなみそラーメンだ。でも、これが一番美味しい。
観光客が来るような場所ではないけれど、人々に愛されているのがわかる。
この旅を通して感じた、北海道の懐の深さ。北の大地に住む人々の「ぜいたく」を、少しだけおすそ分けしてもらった気がする。

新札幌から空港へ。この旅最後の列車から見えたのは、北広島の新球場。
空港でのんびりお土産を選んでいたら飛行機の時間が迫ってしまい、急ぎ飛び乗った。離陸。

いつの日か、また北へ向かおう。
荒れ狂う日本海、氷に覆われたオホーツク海。
朝、冷え込んだ街に差す日の光。
夜、街を包む静寂。
雪、風、コーヒー。
おでん、お酒。
蕎麦、ラーメン。

北海道を、また全身で感じよう。


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