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夏 鳥取のアツい夜

12月に夏の旅を振り返るのも、良いだろう。

夏休み、僕は列車に揺られて鳥取へと向かっていた。
新見で乗り換え。お昼ご飯は、備中そば。

姫新線のディーゼルカーは、のんびりと走る。
6月に札幌で衝動買いした、良い音のイヤホン。旅のお供は音楽。
ラジオで聞いて好きになった「ハク。」というバンドの、「なつ」という歌。

 一緒にレモンサワー飲みたいし
 変なダンスを踊ろう(←ここがめっちゃ好き)
 思い出になる前に
 なつなつなつなつを感じよう
 向いてないとべそかいた日々を
 あなたにはまだ見せない

列車に揺られて、お気に入りの歌を聴いて、夏を感じている。
新見では曇り空だったが、峠を越えると少しずつ青空が開け、夏の日差しが窓から差し込んで来た。

田んぼの中に、犬を連れたおじいさんが立っている。
列車に向かって、杖を振っているおじいさん。
お〜い! こちらも手を振り返す。
一瞬の出会いと別れ。
列車はただ、走り続けている。

鳥取に着く。宿に荷物を置き、夕方の街へ繰り出す。
鳥取の街をゆっくり歩くのは初めてだ。優しい雰囲気のある街。

宿のお姉さんオススメの定食屋へ。やっぱり今日はレモンサワーで一杯。
ちょっと酔っ払って、変なダンスを踊りながら、ようやく暗くなった街を散歩する。
良いイヤホンで、ラジオの巨人ー阪神戦を聴く。

繁華街の中の、公園のベンチに寝転がれば、視界に一面の星空。
公園で一服しているのは、酔客を運ぶために待っているタクシー運転手。

いつものタイガースなら、そろそろ失速してくる季節なのに。今年はどうも様子がおかしい。近本がホームランを打った。逆転。

鳥取には、街中に温泉がある。飲み屋街と温泉。パーフェクト。
温泉に入りに行こうかと歩いていると、阪神戦をテレビで映しているおでん屋さんを見つけた。反射的に暖簾をくぐる。
ご主人は阪神ファン。ひとしきり阪神トークで盛り上がる。
「今年は、ひょっとしてひょっとしますね」。喜びがあふれ出てニヤケちゃっているご主人。あまり人のことは言えない。

暑いのに熱燗とおでん。
汗をかきながら頬張っていると、代打の代打で、原口が打席へ。

初球を打った。
打球は、レフトスタンドへ。
背番号94の頼もしい背中が、おでん屋のテレビに映る。

東京ドームから遠く離れた鳥取のおでん屋で、僕は阪神の優勝を確信した。
熱帯夜、熱燗、おでん。
大好きな原口の、ホームラン。
その後、良い気分で入った温泉の、異常に熱いお湯。

僕が過ごした鳥取の夜は、世界で一番アツい夜だった。

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