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瀬戸内の島 石をくれた少女

よく晴れた、初夏の日。
僕はバスと船を乗り継ぎ、瀬戸内のとある島にたどり着いた。

その昔、北前船の寄港地として栄え、風待ち湊と呼ばれた町。
海沿いの道には、風情ある「船宿」が並ぶ。

かつての港に着いた。
石造りの防波堤を、女の子が走っている。近所の子なのかな。
「よーい、どん! よーい、どん!」
自分で掛け声をかけて、楽しそうに駆けていく。

港を見守るように立つのは、港の鎮守として建てられた神社。
写真を撮っていたら、さっきの女の子がやってきた。

「あのね、キレイな石、見つけたの」

手に持っている白い石。確かに、ツルツルで、いい色している。
いつもここで「魔法の石」を探しているんだとか。

「光ってるんだよ、不思議!」
「2つ見つけたんだ。1個あげるよ」

ありがとう。大事にするね。

「この神社に来ると、きっといいことがあるよ」
へー。いつも何をお祈りしてるの?

女の子は、目をキラキラさせて言った。
「キレイな石が見つかるように、祈ってるの!」

神社で祈ることは人それぞれ。いろんな願いを、神様に託している。
でも、この子の願いが、一番好きだ。

神様、世界中のキレイな石を、ここに集めてきてくれませんか。

僕たちは、大切な「魔法の石」を、一緒に手水鉢で洗った。

四国へ帰る船の時間が迫っていた。
じゃ、そろそろ行くね。
「うん、気をつけてね!」

海沿いの道を歩いた。
強い日差しが照りつける瀬戸内の海は、いつも以上に輝いて見えた。


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