理想のデート

私には理想のデートがある。
２５年間、それはたった一度も実現されたことは無い。実に悲しいが、日本にいる限り望みは薄いと思っている。
なぜなら私の理想はすべてハリウッド映画の中にあるからだ。

ディズニーのミュージカル映画「ディセンダント」。まず日常でいきなり歌われたりするのは大変困るのだが、この映画のデートシーンはとにかく王子がかっこいい。
あの「美女と野獣」の美女と野獣の息子である。白い肌にサラサラの髪、凛々しい瞳、ホッケーで鍛えられた体。まさに王子様である。

主人公ヒロインとの川辺のデートは信じられないくらいキラキラしている。はじめは薄目をあけて見た方がいいだろう。眩しすぎる。

「食べて、祈って、恋をして」のバリで出会ったツアーガイドとの恋。
デートシーンというより出会ってから結ばれるまでの一連の流れが良い。
海外の恋愛映画ではお決まりの「出会いは最悪」もしっかり押さえている。
なんと男が運転している車に轢かれかける。男はよそ見をしていて自転車に乗っていた主人公に気づかず、主人公は車をよけて転んでケガをしてしまう。

ただその後また会い、ひょんなことからバリの街を案内してもらいながらデートをして、彼の家でBBQをし次の日に誰もいない綺麗な海で泳ぐ。

決して私は轢かれたくはない。ケガもしたくない。誰もいない海で泳ぐのは大変羨ましい。

この男の何がいいってストレートに褒めるところだ。恥ずかしくなるようなキザなセリフも普通に言う。それがなにより良い。

そして私の理想に完璧に近い、ディズニーピクサーの「マイ・エレメント」のデートシーン。
主人公の女の子が待ち合わせ場所に行くと先に彼は待っていて、一緒に映画を観てそのあと展望台に行き、プリクラを取る。
なんてことない普通のデートだが、彼は彼女を常に気にかけている。
紳士にエスコートしてくれるし、混み合うエレベーターでは片腕で守ってくれ、彼女を楽しませようとダンスに誘ったりする。
簡単なことだけれど、これができない人は多い。

これに加えて花を贈ってくれたら完璧だ。待ち合わせ場所に着いたら花を持った彼が待っている。最高である。

前にどこかでデートで花を贈られてもずっと持っておくのが面倒だなどとぬかすことを言うやつらがいると聞いたことがあるが、私はまったくそんなことは思わない。
ちゃんと大事に持っておくし、たまに見つめて微笑む。

渡す時もぜひ素敵なセリフで渡してほしい。例えば、
「初デートの記念に」とか「似合うと思って選んだんだ」とか「今日は会えて嬉しいよ」とか笑顔で。

そしたら私はディズニープリンセスさながら胸に手を当てて喜び花を受け取る。
そのあとは映画でもカフェでも見晴らしのいい丘とか静かな海辺とかに行きたい。
何よりドアを開けてくれるとか混んでいる場所で守ってくれるとか私の話を楽しそうに聞いてくれるとかが大事だ。

今まで関西以外の出身の人とデートしたことがあるが、こちらのボケを普通に受け取られてしまい私が変な奴みたいになったことがある。
その時は何も言わなかったけれど、大変遺憾であった。
会話はキャッチボール、ボケさせツっこませだろうが。
ただあったことをつらつら報告されてもまったく楽しくない。
相手を楽しませようとする気がないならデートなんて１００年早い。

別に関西以外の出身の人でもおもしろい人はいると思うので、これから出会えることに期待している。

もうひとつ、恋愛で良いなと憧れていることがある。
それは和歌をおくりあうことだ。平安時代のように。

自分の想いをたった３１文字にしたためる。だらだらと長電話をするなかでそれっぽいことを仄めかすのではなく、和歌にのせて粋に告白する。
素敵な文化だと思う。

しかし現代は現代語なので、和歌を一から詠むのは難しい。
ただ現代はとても便利なので、たくさんの素敵な和歌の現代語訳がすぐに調べられる。
百人一首や古今和歌集などからひっぱってきて想いを伝えてほしい。
私も平安時代の女流作家さながらいい歌を返したい。

私は海外の人と付き合いたいのか、日本人と付き合いたいのかわからないが、ざっくり言うと

「優しくておもしろい、キャプテンアメリカと和歌のやり取りをしたりする恋愛」

がしたいのだ。

いつかきっと出会えると信じている。

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