見出し画像

休んでいいよ、が聴こえない


五月半ば、残業中に突然、
左耳だけ音が低く聴こえた夜がありました
音響の機械が壊れたのだろうと思ったのですが、
帰宅して、部屋の電気をつけて音楽を流したとき、
はじめて自分の耳の問題だと気がつきました

そこから病院に行き、
あれよあれよと言う間にメニエール病の診断を受け、
何もかも追いつかない中で、
お仕事をしばらくお休みすることになりました

限界が何回来ても、何回もやり過ごして、
うん、なんとかやれている、
と思っていたこの生活と、
コントロールできているはずだった体と心

突然の強制終了に戸惑いながらも、
動けない自分とあらためて対話をし
ときに、そんな自分をいじめ抜いて
ときに、逆襲され
殴り合ったりしながらも、
まずは、ひと月が過ぎました

・・・・・・

この六月は、
突然降ってきた「休む」という事実を
私自身がまったく理解しておらず、
かなり悪あがきをしました

いま、私はこうして倒れているけど、
単なる気の持ちようなんじゃないか、とか
気合い入れたら仕事行ける気がする、とか
みんなしんどいのに私だけずるしてる、とか
ずっともう一人の自分が、自分を責め続けていました

お金のことが不安すぎて、
必要な書類を書こうにも頭が働かず、
涙が止まらなくなったり
全く起き上がれない日が続けば、
無価値観に押しつぶされそうになり、
それを振り払うには少しでもなにかしなきゃ、と思って
突然zineをつくりはじめてあっさり挫折したり、
絵を描きまくったり(これは時に気晴らしになりました)、
本を読みまくったり(これは時と場合と内容によりました)、
散歩して、ぐったりして動けなくなったり、
いろいろとありました
音楽に、ずいぶん助けてもらいました

まだまだ休むのが下手な私だけど、
いちばん効いたのは、
①ぐっすり寝て
②ちゃんと食べて
③疲れを感じたらその場で横になる
でした
みんなも、どうかむりしないでね

・・・ーーー・・・

休んでいいよ、の言葉を自分にかけられるようになるまで、
丸々一ヶ月かかりました
まだ、実はちょっと小さい声になってしまう

私の周りの人は誰も、休むことを責めなくて
ゆっくり休んでね、と言われるたびに
申し訳なさでいっぱいでした
ずっと、休むことを許可できずにいたのは私だけだった
これは、病気が教えてくれた
大切な気づきなのかもしれないと思いました

一人でいると、どうしても時間が止まりがちなこの部屋
外に連れ出してくれたり、遊びに来てくれたりして
こころに風を吹き込んでくれた家族、友人

動けない自分に戸惑い、
あれしなきゃこれやらなきゃに奔走していた躁の私も、
反動として訪れる大きな鬱の波も、
決して否定せず、
楽しい時も辛い時もそばに居て
いつも深い安らぎをくれた、パートナーの瀀さん

感謝しています

はじめは、とにかく早く回復して
人生を立て直さねばと焦っていたけど、
その焦りが薄れてきた今、
もしかしたら一ヶ月かけてようやく、
げんきになる、のスタートラインに立った段階なのかもしれません

・・・・・・・

今日からは七月、マキコミヤの季節

哲学者 宮野真生子さんの遺した約束をよすがとして
たくさんのひとたちやいきものたちが、
学問や語りや実践を通じて出逢い直し、大いに遊ぶ
毎夏恒例の祝祭

いま、宮野さんの言葉を読み返しています

いつだって、一番つらくて
もう生きていけない、と思ったときに助けてくれたのは
大学時代に出逢った、哲学の本たちでした

いつの間にか大学を卒業してから4年が経って
マキコミヤも4回目になって
最初は、観る側として参加していたけど、
昨年はじめて、自分でイベントを企画して、
好き勝手に暴れられることに味を占め、
今年もふたつの実践を予定しています

構想を練り始めた頃は、
自分がこんな状態になっているとは思っていなかったけれど、
もしかしたら、この偶然の分岐も
宮野さんからのギフトなのかも

心から信頼をよせる、お二人との試み
言葉と音と思考と、この身を巡らせて
いま、の精一杯で臨もうと思います
また追って、お知らせさせていただきます

きっと、
きらきら、めらめらした
いのち大爆発なイベントになる
そんな予感があります
続報をお待ちください
遊びにきて、ね!


可能性とは、ルートが分岐しつつ、その行く先がわかった一本道などではなく、
つねに、動的に変化していく全体でしかないのではないでしょうか。
もちろん、その変化する可能性のなかには多くの良くない可能性も含まれています。(中略)けれど、未来とはそうした可能性もふくんだまるっとした総体なのであって、私たちは、一本の道の先だけを生きているのではないはずなのです。

宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』
第一便より

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?