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何者(レビュー/読書感想文)
何者(朝井リョウ)
を読みました。直木賞受賞作。
朝井さんの作品は、以前、読んだ「正欲」に続いて2作目です。
就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。
とにかく心を抉られる作品でした。
SNS全盛の時代の赤裸々な人間模様にハラハラしつつ、しかし、恐らくそこは本質ではなくて。誰しもが渇望する承認欲求と、反面、ままならない現実とのバランスをどう取るか(あるいは、取らないか/取れないか)を、バックグラウンドの異なる登場人物それぞれから描きます。えげつないくらいのリアリティで。
2012年の作品です。私には学生の子供がいます。SNSの描写など時代と共に受け止め方が変わることもあるのでしょうが、子供が就職活動期になれば、あるいは将来を意識する時期が来たら本作を読ませてみたいと思いました。というか、学校が学生全員に配って読ませたらいいんじゃないか、と。
社会に対して斜に構える時期を迎えるのは人間として心の成長の現れではあると思いますが、その時期の乗り越え方というのは当人のその後の人生に大きな影響を及ぼしそうです。おかしな表現になりますが自分の自我とは生きてる限り、一生付き合いますからね。
ただ、それは、決して後ろ向きな意味だけではありません。歳を重ねたとき、本作のような作品を読んで、何も感じなくなるよりも、心を抉られる――とまではいかなくても、自分は胸がざわつく側の人間でいつまでもいたいと思いました。
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