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アプリ内動画広告で収益化まとめ

アプリに動画広告機能を実装し、マネタイズする例が増えてきたように感じる。本業で、諸々調べる機会があり、まとまったものが中々世の中になかったので、一度体系的にまとめてみようと思う。

アプリ内広告に興味がある方、ハイパーカジュアルゲームやメディア系アプリなどで動画広告で収益化を検討している方、すでに収益化しているもののもっと改善していきたい方などに参考にしてもらえればと思う。

アプリ内広告市場の高まり

Appsflyer社の調査レポートでは、アプリゲーム市場のグローバルな傾向として、ユーザーからの直接課金が低下傾向にあり、動画広告による収益が増加傾向にあると報告されている。

実感値としても、ユーザーによる課金疲れや課金煽りに対する耐性が高まってきているように感じるし、色々なゲームで動画広告を閲覧する機会が増えてきたように思う。

ゲームだけでなく、漫画アプリやメディアアプリでもよく動画広告を閲覧すると思う。実際にマンガBANGを運営するAmazia社のIRを見ても、動画広告による収益のインパクトは大きそうである。

アプリ内動画広告の高まりの背景

アプリ自体は歴史が十年ほどあるし、動画広告も新しいイメージはないが、なぜここに来て注目されているのかを簡単に考察する。

①通信インフラの発展
4Gや最新端末の普及により、どこでも誰でも(グローバルではまだまだ伸びそう…!)動画を再生できるようになった。

②アドテクノロジーの発展
アドネットワークやSSPツールなどが技術的に成熟し(詳しいことはわかりません…w)、ターゲティング精度の向上と大規模広告の自動最適化などにより、動画単価(収益単価)が向上した。

③LTV > CPI が動画広告だけで成立するようになった
①と②に支えられ、ユーザー獲得&動画での収益化が最適化されたことによって、LTV(1ユーザーあたりの動画視聴による収益)がCPI(1ユーザーを獲得するための広告費用)を上回ることが可能になった。

つまり、ユーザーから何かしらお金を払ってもらう方法を考えなくても、コンテンツさえ面白ければ、そこでのトラフィックを動画収益に変えられて、広告費用を上回ることが可能になったのだ。

これをグローバルを対象に超大規模で回すのがハイパーカジュアルゲームのビジネスモデルである。ちなみにハイパーカジュアルゲームはLTV50円~70円、CPIが30円~50円くらいでこれを月10億くらいの単位で広告費をぶん回すモデルである。

これらの成功例がどんどん出てきたことにより、データも大量に蓄積され、②もさらに発展する、ということが2017年くらいから起きている印象である。

アプリ内動画広告の主要KPI

前提知識として、主要KPIについて認知しておくことは必須なので、簡単にまとめておく。

動画広告収益 = imp数/1000 × eCPM

imp(impression)数は動画広告の総視聴回数であると把握いただければオッケーである。
さらに因数分解すると、imp数 = ER(視聴率) × UR(視聴回数/視聴者)となる。
そのままだが、ER(engagement rate)は全ユーザーの中で動画を視聴した人の割合で、UR(usage rate)は動画を視聴した人の中での平均視聴回数である。

eCPMは、動画広告単価であり、ここでは1000回視聴当たりの収益と把握いただければオッケーである。

アプリ内動画広告の種類

アプリ内動画広告には大きく4種類存在するので、簡単に解説する。
各広告のeCPMを参考数字に乗せていますが、地域は日本・アメリカの平均程度です。(世界で見ても最も高い水準)

①バナー広告

これは従来からある、画面の一部に広告が張り付いてあるモデルである。
大体、画面のヘッダーやフッダーに表示されている。
ニュース系メディアやライトゲームに多い。動画よりも画像が多いかも。

メリットは全員に表示させられるのでimp数を稼ぎやすいこと。デメリットは無視されやすいので、単価が低くeCPMが50円くらいなこと。あとは単純に画面の一部を占領するので、世界観を阻害したり、ユーザーの操作を妨げることは免れない。

②オファーウォール広告

これは、漫画アプリなどに多い、他社アプリにダウンロードや他社サービスのユーザー登録によってアプリ内仮想通貨が付与されるモデルである。

U-NEXTや楽天カードの会員登録によって、1000pt付与!とかのやつである。海外製のゲームも多く、LV10まで遊べば500pt付与、LV20まで遊べば1000pt付与など段階をつけてリワードを設定されていることも多い。

メリットは非常に単価が高い。これは特殊でeCPMというKPIを用いないが、1人当たりのDLやユーザー登録の成果報酬が発生し、数千円~1万円を超えるものもある。(有料サブスク登録させたりするから当たり前かも)

デメリットは、コンバージョンレートが低く、結局収益性はどこまでインパクトはない。また競合アプリにユーザーを流すことにもなるので、単純にユーザーが減るリスクもある。あと妙な怪しさを発することになる。

③インタースティシャル広告

これは、特定のタイミングで全画面に強制的に15秒~30秒の動画が流れるモデルである。

ハイパーカジュアルゲームにとても多い、というか全てのハイパーカジュアルゲームに入っている。だいたい2~3ステージに1度くらいの頻度で強制的に見せることが多い。

強制的に出すのでERは100%となり、impは稼ぎやすい、eCPMもバナーよりは高く300~500円くらいとなる。

デメリットはユーザーのヘイトを買いやすい。これも比較的ユーザー流出のリスクが高い。

④リワード広告

これは、何かしらの報酬を提示して、それを得る為に動画広告を視聴させるモデルである。

ミドルゲームや漫画アプリに多く、動画を視聴すれば仮想通貨がもらえたり、漫画を1話読むことができる。

最もバランスが取れた手法であり、ERは20%~50%くらい、URは4回~8回/日くらい、eCPMは1000円~3000円くらいとなる。

ユーザーが能動的に報酬を得る為に動画を視聴するので、ヘイトも少ない。

アドネットワーク(ADNW)の種類

アドネットワークとは、広告主と広告枠をつなぐ中間媒体である。広告代理店的な役割を持つ。

代表的なのはAdmob(Googleのやつ)、FAN(Facebookのやつ)、UnityAds、AppLovin、ironSource、Vungleなどである。

在庫量や広告単価などADNWによって特性が結構ある。

基本的に、広告枠(アプリでの広告提示)の評価は、これらの各ADNWが行うので、誰にどんな広告をいくらで出すかは彼ら次第である。
もちろん、ジャンル指定やブラックリストの提示は可能だが、出せる広告を絞れば絞るほどeCPMは下がっていく。

基本的には、複数のADNWを実装し、広告枠をより高く買ってくれるADNWから動画を出す、という仕組みになる。

最も肝心なADNW制御ツール

最も肝心なのが、上記のADNWを複数実装したとして、それらをどのように制御するかである。これによって収益性が大きく異なってくる。

1つ1つの広告提示機会をいかに高くADNWに対し売るか、がここにかかってくる。RTBやウォータフォールの設定と言われるものである。

これらの制御ツールにも大きく分けて2種類存在する。

①SSPツール
国産のものでは、アドフリくんやAdGenerationが有名である。

これらは、ADNWの制御を彼らが開発者の代わりに担ってくれる。日々ADNWの動向をチェックしながら、チューニングを行ってくれるのである。またバグやエラーが発生した際の各ADNWとの連携とかも間に入ってよしなにやってくれる。

デメリットとしては、仲介手数料を動画広告収益の中から一部取られる。明言されていないが20%前後なのではないかと予想する。
ADNWの制御が少々ややこしいからこそ成り立っているビジネスである。

②大手ADNW社提供のメディエーションツール
大手にしかできないこともあり、Admob、Applovin(MAX)、ironSourceくらいしか存在しない。

こちらで、ADNWを制御する場合、開発者がチューニングをする必要がある。その代わり、仲介手数料は取られない。(ADNW各社は広告主側からマージンをもらっている)また、開発者がチューニングを行うことを前提としているため、ツールが使いやすく、データも豊富にそろっている。

僕は絶対にSSPよりこちらを導入すべきだと思っている。ADNWのチューニングが難しいといっても、かなり自動最適化できるようになってきているし、各社無料でオンボーディングを丁寧にやってくれる。

また、データが豊富かつ透明性が高いので、アプリサイドからのチューニング(リワードや導線の見直しなど)も的確に行えるため、本当の意味での全体最適化が行える。


本当に概要レベルでざっと全体感がわかるように書きました。それぞれのパートでの詳しい内容(RTBやウォーターフォールの設定、各ADNWの特性、ジャンル別でのベンチマークの数時間など)は需要がありそうなら書こうと思います。よろしければいいねしてください。


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