見出し画像

大丈夫かな?(モノローグ) - 修正稿

※ 「大丈夫だよ」って言わせたい人の話。

ーー 小高い丘。リュックサックを背負って歩いてくる。
ーー あたりを見渡す。

 わー、すごい綺麗。こんなにお花が咲いてるんだー。リクくん、ありがとう!

ーー 花を一つ摘み、香りを嗅ぐ。

 えっ、そうなの?香りのない花なんだ。ハハハ、もう、私ったらやだなー。もー、ドジ。なんか今日の私、はしゃいでるなー。デートとかするのすっごく久しぶりだし。

 ほんとだよ!だから、すっごく恥ずかしいな。(リクに花を渡して、)はい。あ、そうだ。運転疲れたでしょう。

 いや、絶対腰痛くなってるって。ほんとありがとう。あ、お腹空いたよね?あのねー。

ーー リュックサックを下ろす。ファスナーを開けて、弁当箱を出す。

 ジャーン!作って来たんだー。ほら見て、タコさんウィンナー。それとリンゴのうさぎ。

 えー、見たことない?へー。私、料理は得意なんだー。

ーー 間。

 あれっ?今、少し重いって思ったでしょう。

 思ったよ、絶対!お礼言う時の顔がひきつってたもん。

 そう?大丈夫?

 そっか。そう言ってくれるのありがたいけど、確かにイマドキ初デートで手作りのお弁当ってどうかな、とは思ったんだよね。

 うん、ありがとうね。でもほんとに大丈夫かな?

 ハハハ、そうだよね!あ、食べてみて。

ーー 卵焼きを取って、リクに食べさせる。

 どう?……美味しい?よかった。味、薄くない?濃くもない?

 あ、今のは言わせちゃったかな。ハハハ。

ーー 間。

 少し引いてる?

 なんでって、ほら。私さあ、頑張っちゃうんだよね。こうしたいって思うと、それで突っ走っちゃうんだ。

 そんなこと、なくないの!子供の時からだよ。掃除の時間とかも、ピカピカにしたくて……うーんとね、黒板にチョークの跡が一切ないくらい。それで気がつくと一人で掃除してるんだ。

 考えすぎじゃないよ!いっつもこうなるんだ。だから、この先も変わらないよ、多分、私。

ーー 間。

 うわー、なんか暗い感じになっちゃったね。

 うん、ありがとう。そう言うしかないもんね。きっついなー私、いい大人なのに。さっきまですごくはしゃいでたのに、リクくんとのちょっとしたズレが気になっちゃってさ。リクくんのこと見てるようで、自分自分!自分のこと守るので精一杯だよ。

 ハハハ、また言わせちゃった。困ってるでしょ?

 困ってるよ、顔に書いてるもん!もうやだー。自信無くなっちゃった、帰ろっか?

ーー 弁当箱を片付ける。リュックサックに仕舞う。

 いや、それは嘘だよ。このタイミングで『好きだよ』って、それは同情からでしょう?

ーー リクを見る。花束を受け取る。

 くれるの?花束にしてくれたんだ。ありがとう。こんなにたくさん摘んじゃって大丈夫かな?

ーー 笑い出す。

 すぐ心配になって、大丈夫かな、って聞いちゃうんだよね。

 うん、ありがとう、優しいね。でもさ、大丈夫じゃないのは分かってるんだよね。ズレてるの分かってるの。ずっとそうだったから。大丈夫って言ってもらったところで、大丈夫にはならないんだよね。だから、大丈夫だよって言われると、余計に不安になるんだ。気を遣わせたなって……。リクくん、だから大丈夫じゃない時に大丈夫って言わないで。

 ありがとう。私も、多分リクくんのこと好きだけど、まだちょっと怖いんだ。いつか大丈夫じゃない感覚に耐えられなくなって、全部壊しちゃう気がするから。

ーー 花を強く握る。

 でも、もしできたら、『大丈夫じゃなくったって大丈夫なんだよ』って言って。

ーー 終 ーー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?