見出し画像

思いを言葉にすること

入社したばかりの会社で頼まれた文字起こしの仕事。単純作業として文字に起こしていた会話に、いつの間にか耳を傾け、感動していた。
自分自身のルーツとなる伝統文化、仕事について語るインタビュー。話しているのは顔も年齢もわからない他人だったけど、それでもその人がどれだけ仕事に真摯に向き合っているか、どんな熱い思いを抱いているかを話す言葉一つ一つから、思い描くことができた。

人の言葉には、その人らしさが強く滲み出ると思う。思いが強ければ強いほど、瞬間選び取る言葉に魂が宿っていく。どんな言葉が一番適しているのか、誤解なく伝わるのか。推敲された丁寧な言葉じゃなくても、瞬間的に選んだ言葉はきっといつも心の底にあるのに、表に出てきていない本心だったりするんだと思う。

それからそのインタビューを聞いていてもう一つ感心したのは、聞き手の態度。インタビュアーとしては拙い言葉選びだったけど、話し手の言葉をしっかり咀嚼して、相手の話に対して自分の考えを伝えていた。拙くてもしっかりと相手の言葉を受け止めるその姿勢自体が、聞き手の本音を引き出していたんだと思う。

こなれてくると、きれいな言葉や小手先の技術で相手の言葉を引き出す術も覚えるけど、表面だけ整えた当たり障りのない相槌は、きっと相手の言葉も平坦にしてしまう。
角が取れて丸くなった言葉はきっと面白くもなんともない。でこぼこした言葉こそが、人の心にひっかかる本当の言葉なんだと思った。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?