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こちら世界制作委員会 #シェアードワールド

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#掌編小説

甘い

 安さだけが自慢の軽で、峠を登る。
 風の無い月夜の晩に、無粋なエンジン音が響き渡る。街中だって迷惑だろうが、森の中だって迷惑がられそうだ。
 ここにだって、眠ってる奴はいる。

 ぐねぐねと何度も道を左右に曲がり、細かった道が少し、開けた後のカーブ。
 他より新しいガードレールが白く反射するその場所。
 何度も車が来ていないか確認して端ギリギリに駐車した。

 エンジンはつけたまま。開けてある窓

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ブラックコーヒー

 コーヒーを飲むと腹を下す。体質なのか身体がカフェインを受け付けないようだ。それでも私は、毎朝ブラックコーヒーを飲む。

 格好つけているとか、思われるのだろうか。
 豆の良し悪しや、パッケージの裏に書かれている味見本の“コク”とやらも良くわからない。飲むのは専らアメリカンという名の薄めたコーヒーだ。それでもインスタントではなくドリップコーヒーを毎朝入れるのは、彼女に会うため。

 ガラスのコーヒ

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