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【4つの定義】僻地とは言うけれど【僻地勤務】

田舎を揶揄する表現としてしばしば目にする「僻地」という言葉。都心以外だと僻地と表現する大袈裟な人もいれば、だれが見ても僻地という地域が存在するのも事実です。

筆者は大手メーカーの僻地にある拠点での勤務経験があり、地方都市勤務、郊外在住・都市部勤務の経験もあります。いろんな地域での在住経験もある筆者の目線で、僻地という言葉の定義について4つの切り口で考えてみます。

1. 僻地の定義①:都会から遠い

そもそも僻地の辞書的な定義を確認してみましょう。

都会から遠く離れた,へんぴな土地。かたいなか。辺地。(出典:大辞林)

ずいぶん曖昧な表現ですが、都会からの距離が遠いというのは確かに僻地の必要条件ではありますね。

一方で、ちょっと都会から離れただけの単なる地方都市を僻地と呼んでしまう非常に大袈裟で、本当に僻地に住んでいる人に対して大変失礼な人も少なくありません。そこで他の切り口での僻地の定義について考えてみました。


2. 僻地の定義②:過疎地域

僻地という言葉の類義語として、過疎地域、田舎などが挙げられます。この中で最も定義が明確なのは過疎地域で、過疎法によって定められています

過疎地域とは下記要件のいずれか1つをみたし、かつ1992~2017年での人口増加率10%以上の地方公共団体を除く地域と定められています。

・1972~2017年の40年間での人口減少率32%以上
・2017年時点での高齢者比率36%以上、若年者比率11%以下
・1992~2017年での人口減少率21%以上
参考:総務省HP・過疎関係市町村都道府県別分布図

※高齢者:65歳以上、若年者:15~29歳と定義

2019年4月時点で、日本国土面積で言えば約60%、在住人口で約9%が過疎地域ということになります。具体的な市町村は過疎市町村マップでも確認できます。

お住まいの地域を確認してみていただければお分かりかと思いますが、実は案外ハードルが高いです。こんな田舎でも過疎地域に該当しないの?と感じます。地方都市で生まれ育った筆者にとってはちょっと厳しすぎるような印象です。それでも3,4の定義に比べれば過疎地域はまだまだ閾の低い定義ですね。

3. 僻地の定義③:無医地区

医療問題を背景に、厚生労働省では下記のような地域を僻地と定めています。

原則として近隣に医療機関がない地域(無医地区等)を指します(出典:厚生労働省

厚労省はここでの「近隣」を4km圏内と記しています。ただ健康な若者にとって医療機関の有無は体感しにくいですし、地方都市の山間部くらいでもこうした地域は意外と多数点在しています。一般的文脈で僻地を語るにはちょっと難しい定義のようにも感じます。

一方で市町村単位であれば、2018年時点で1人も医師がいない市町村は全国で30もあります。こうした無医市町村であれば、僻地と定義しても問題ないでしょう。

4. 僻地の定義④:特地勤務手当・へき地手当の支給対象地域

国家公務員・地方公務員を対象に、離島その他生活の著しく不便な地に所在する官署に勤務する職員に支給される手当を特地勤務手当と言います。その程度により程度の低い順に1級(増額手当4%)~6級(増額手当25%)の6段階に分かれています。

国家公務員に適用される代表的な地域を挙げてみます。該当地域全域ではなく、あくまで官署所在地区が対象という点は留意ください。

6級…父島(東京)、与那国島(沖縄)
5級…西表島(沖縄)、徳之島(鹿児島)等
4級…檜枝岐村只見町(福島)、奄美大島(鹿児島)、中川町(北海道)等
3級…南会津町(福島)、王滝村(長野)、対馬市(長崎)等
2級…むつ市(青森)、北秋田市(秋田)、隠岐の島(島根)、高山町白川村(岐阜)等
1級…五所川原町(青森)、常陸太田市(茨城)、片品村(群馬)、飯田市(長野)、豊田市(愛知)、田辺市(和歌山)、四万十町(高知)、高松市(香川)等

太字の市町村は筆者が訪問したことのある地域です。実体験をもとに不便さを定量化すると、4級は、人口10万人都市域内(≠市街地)まで渋滞のない道を通って、かつ制限速度無視して車で2時間以上かかります。3級はキー閉じ込めで夕方にJAFを呼ぶと3時間待ちます。体感的にも2級以上なら僻地と胸を張ってもよいと感じます

1級くらいになると僻地というには大袈裟な地域もあります。豊田市は全域指定ではなく、豊田市市街まで車で1時間くらいかかる矢作という地域です。ほんの一例ですが、個人的にはさすがに大袈裟と感じる地域もあるのは確かですね。

一方で1級、2級の地域では、2項で言及した過疎地域に該当しないが、そこそこ辺鄙な地域もあります。多少大袈裟かもしれませんが、客観的指標としては悪くない気もします。上記は国の指定ですが、各都道府県においても同様の特地を指定しています。

また似た手当にへき地手当がありますが、これは市町村管轄の小中学校が対象の手当てとなっています。基本的概念は特地勤務手当と同様ですが、公立の小学校及び中学校(へき地学校) 並びに共同調理場に勤務する職員に支給される手当をいいます。特地勤務手当と同様、「僻地」を定義するうえで客観的な指標と考えます。本定義に基づいた僻地の市町村が一目でわかるマップはこちらの記事をどうぞ

5. 僻地の実質的定義

以上を踏まえると、定義③、④の少なくとも一方に該当する地域とするのが、一般的文脈で納得感が高いように感じました。大まかな地域単位での僻地と言うのが分かりやすく、客観的に説得力のある定義として以下を提案します。

国家公務員・地方公務員の特地勤務手当支給対象地域、小中学校にかかわる職員のへき地手当支給対象地域、または無医市町村のいずれかに該当する地域。

異論は認めますが、データや客観的根拠に基づいた数少ない定義です。ご参考まで。

6. 1級地くらいなら僻地勤務の恩恵あり?

個人的体験を踏まえても、1級地くらいの僻地なら少々の不便さを我慢して住んでもいいと思っています。実際に1級地くらいの地域に6年ほど住んでました。若い間にお金を貯めたい方は僻地に出稼ぎするのもよい経験です。

実際に最初は嫌がっていた僻地に魅了されて永住する人もたくさんいます。僻地を一方的に悪く言う風潮がなくなることを願ってやみません。


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