【技術者向け】マネジメント素養を学べる書籍6選【厳選】
組織人にとって避けて通れない「マネジメント」。技術追求は得意だけどマネジメントに苦手意識のある技術者も多いことでしょう。そもそもマネジメントと言われて、何を思い浮かべるでしょうか?
マネジメントは多層的スキルから構成されますが、「人を動かす」ことも大きなウェイトを占めます。素材開発エンジニアである筆者ですが、製造業の現場に近い職種では比較的若くしてマネジメントする環境になるケースも多いです。筆者もマネジメントに携わり始めたころはかなり苦労しました。
筆者属性についてはブログのプロフィールも参照頂ければ幸いです。
https://snow-yuhzoh.com/profile.html
そこで本記事では、筆者が実際に読んだ、「人を動かす」マネジメントに必要な素養を学べる書籍6冊を紹介します。
1. マネジメントのバイブル『人を動かす』は技術者にはおすすめしない
マネジメントの王道、カーネギーの名著です。特に文系で体育会系出身の方にはウケの良い書籍ですね。情緒的で動かされる感じがします。
といってみたのですが、技術系の僕にはあんまりしっくりきませんでした。なぜなら感情に訴えるばかりで、ロジックと再現性に乏しいと感じてしまったから。ザ・文系書籍って感じがします。
技術者目線で言えば、理屈が通っていて再現性が高くてナンボ。確かに共感するところの多い『人を動かす』ですが、精神論も多いです。他の書籍で基本を固めた後で読むと違った角度での気づきも得られる良書ですが、マネジメントの実務に携わっていない方にはあまりお勧めできません。
2. 工場勤務向け入門書『ヒューマンエラーの心理学』
ヒューマンエラー、工場勤務の方なら一度は痛い目を見たことがあるでしょう。ヒューマンエラーで起こったミスについて、いくら系統図や「魚の骨」を書いて分析してもチェックシートが1枚増えるだけ。心当たりある人も多いのではないでしょうか。
『ヒューマンエラーの心理学』は何故ミスをするのかという点に主眼を置いた、工場勤務者向けマネジメント心理学入門書としてお勧めの一冊です。
ミスを誘発する心理を科学的に理解して仕組みへ落とし込む。これが初級マネジメントの登竜門。業務指示や作業標準化などを見ると、初級マネジメントがクリアできているか一発で分かります。
因みに筆者は素材開発エンジニア。職種柄扱うサンプル数が多く、たくさんの実験データを扱うことが特徴です。多くの人が関わるためサンプル取り違いで貴重な試験が水の泡になることも日常茶飯事。
本書からの学びでミスを誘発する理由を体感的に理解し、サンプル取り違いをなくす業務指示を習慣化することが出来ました。結果サンプル取り違いによる時間ロスが大幅低減。素材開発エンジニアに限らず、多くの作業者に依頼し膨大な実験データを扱う技術者こそ、無意識レベルでミスの心理を体得しておきたいものです。
3. 数字で心理学を体感できる良書『「意思決定」の科学』
マネジメントと心理学は密接な関係にありますが、特に技術畑の方は人文科学に抵抗のある方も多いことでしょう。心理・行動科学系学問に限らず、人文科学系学問は定性的な記述にとどまることが多いもの。理系畑の人にとっては納得感に乏しく、人文科学から遠ざかる原因にもなっていたりします。
そんな心理・行動科学を、数字を交えた実験で定量的な感覚からアプローチした貴重な一冊です。自らの感覚を数字に変え、理論を腹落ちさせることが出来ます。理系学問は得意だけど人文科学系は胡散臭い、と思っている方にはピッタリの一冊となるでしょう。
本書で定量的に体感したのち、他の言語的アプローチの書籍を読めば心理・行動科学も理解しやすくなります。技術畑でマネジメント入門書は定量性に欠けてしっくりこない、という方の導入書としては最適です。
4. 行動心理学のバイブル『ファスト&スロー』
マネジメントというよりは投資目線で手を出したのですが、思いのほかマネジメントに通じるものがあった一冊。『ファスト&スロー』はノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンの名著。自分の意思決定の不合理さを様々な角度から要素別にアプローチされています。翻訳書ならではのロジカルな構成で、分かりやすい実例を挙げながら何度も刷り込ませてくれる本でした。
株式投資における不合理な意思決定の象徴である狼狽売りや底値と勘違いしたリスキーな一括投資への戒めにもなりえる書物です。また部下のやる気を引き出したり、部下の失敗を最小化する方法、またボスマネージメントも含めて組織人としてマネージメント業務を行う上でのマインドもしっかり学ぶことが出来ます。
情報量が多く内容を自分の知恵にするには繰り返し読む必要があります。本書は何度も繰り返し読む価値のある数少ない一冊です。
筆者の書籍チョイスは相当なセレクションを経て自ら読んだものを紹介しています。読みたい本が見つからずに困っている方は一読してみてはいかがでしょうか。読んでは実践を繰り返しながら5回くらい読みました。最後に読んでから1年くらい経つので、もう一度読みたくなってきました。それくらい良書です。次項で紹介する『認知バイアス』も合わせて読むと理解が深まるでしょう。
5. 簡潔に纏まるブルーバックス『認知バイアス』
上下巻構成の『ファスト&スロー』はちょっと尻込みするけど、行動科学は知っておきたいという方にはブルーバックス『認知バイアス』がオススメ。
網羅性は『ファスト&スロー』にも匹敵します。実例はやや少なめですがマネジメントに必要なヒトの認知特性が簡潔に網羅されています。じっくり本を読む時間は取れないけど人の心理について簡潔に一通り知っておきたい、そんな忙しいビジネスパーソンにお勧めできる良質な導入書です。
本書で面白いと感じられた方は4章で紹介した『ファスト&スロー』も合わせて読まれることをお勧めします。基礎知識がある状態なのでスムースに内容が頭に入ってきます。
6. もっとお手軽、カジュアルな入門書
堅苦しい本、複雑な論理構成が苦手という方は『アリエリー教授の「行動経済学」入門』がよいでしょう。カジュアルな分内容は厳選されていますが、損したくない人間の心理がしっかり描かれています。
直接的にマネジメントと関わる内容ではありませんが、人文科学に苦手意識をもつ方の基礎固めには手頃な一冊です。
7. まとめ:最も重要なのは本を読んで実践すること
本記事ではマネジメントの基礎科目である心理・行動科学の良書について紹介しました。どれも筆者が本屋でじっくり厳選した良書ですが1つ注意点があります。ただ読むだけではマネジメントができるようになりません。
どの本の内容でも構いませんし、とりあえず印象に残った1つで構いません。身近な関係者との調整業務やマネジメント業務で、書かれていた内容を意識的に使ってみましょう。心理・行動科学の破壊力の一面を垣間見れると思います。
マネジメントの大事な業務は「人を動かす」こと。円滑な関係構築ができる一助になれば幸いです。
円滑な関係構築は一種の「企業経営」です。マネジメントと経営を考えるきっかけとなった書籍を紹介しています。よろしければどうぞ。